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白竜の姫  作者: 銀ゆり
3/10

カナンへ

「────────ハッ!」


  馬の腹を蹴り早駆ける。


  早朝にリズミカルに少し湿った草地を二頭の馬が駆けて行った。


「カイル!」


「ユリウス!どうした?!疲れたか!」


  街中と違い蹄の音は低く重い音をたてながら草を蹴り駆けていく。


「そうだ!休憩しよう!!」


  ユリウスの声に手綱を引き馬を停止させた。


「よーしよしよし」


  馬の首を叩いて馬を労りゆっくりと岩から水が滲み出てて出来た泉のような水溜りのに近くに馬を誘導した。


  この辺りの水はカナンの北の峰から万年雪の水がゆっくりと溶け落ちて湧き水となり溜まることが多い。

  携帯用の簡易コップで水を汲み一口飲んでみる。

  雑味のない綺麗でスッキリとした水だ。


  馬は水溜り近くの木に手綱を結び休ませる。

 すると馬は耳をピクピクとし周囲を警戒していたがやがて安心したように水を飲み水溜りの周囲に生えている草を食み始めた。


  周囲に人の声は無く時折、上空を猛禽類が鳴きながら飛ぶ声が聞こえるくらいだ。


「綺麗だな」


  空を見上げてカイルは思わず呟く。


「ああ、でも久しぶりに山を駆けると疲れる…」


「ユリウス、鈍ったんじゃないか?」


「この二年は街暮らしだからな」


「もう昼か…早朝からずっと走っていたら疲れるはずだ」


「そうだ。馬が潰れるだろ?ほら飯だ」


  そう話しユリウスが携帯食を俺に渡した。

 薄い無発酵パンを半分の半円状に切りポケットのように開いた隙間に好きな具材を放り込み食べる簡単な軽食だ。


「街で買った。肉も野菜もたっぷりだ、味もとりあえず普通の甘辛いとスパイシー味、デザートタイプも買った!これ以降は干し肉とドライフルーツと現地調達だ。味わって食おうぜ」


「いいじゃねぇか?現地調達、久しぶりに鳥を食べたい...夕飯は鳥を串焼きにして食べよう。弓もまだ衰えちゃいないさ」


「肉ばかりはなぁ…せめて果物があれば」


「ユリウスお前、甘党だからな?」


「カイルは何があっても大丈夫だろ?お前が不味いって言うの聞いたことない」


「まぁな?毒以外は美味しくいただける安上がりな身体してんだよ」


  笑いながらひき肉と野菜を煮込んだスパイシ-味を口に運んだ。

  肉汁と辛いスパイスが効いていて美味い。

 カナンまであと一日も駆ければ着くだろう。

 クラウディアがアリストリア王国の北側にあったからアリは俺に親書の配達を頼んだのだから。


  再び上空に大きな鳥が飛んでいるのを遠目に見ながら俺達は食事を終え駆け出した。



  リーシャは誰よりも高く早く飛べる。

  その日も祖母の言いつけ通りに上空を…弓の届かない上空を飛んでいた。


  馬が二頭、カナンに向かって走っているのを見つけた。

  人だ、人がカナンに来るのは悪い兆ししか感じない。

  でも若い二人は旅人に見え暗殺やカナンに調べに来た密偵には見えなかった。

  兄弟のような親友のような二人は楽しげに食事をしていた。

  今まで見てきた暗殺者や密偵は言葉も少なく食事をとる姿など見たことはない。


  上空をくるりくるりと旋回した後にリーシャは少し考え、城に戻ることにした。


「リーシャーおかえりー」


「おかえりー」


「お土産はー?」


  城にに戻ると小さい子供達がリーシャにまとわりついた。


「こらこら私は偵察に出てたんだ、お土産なんか無理だろ?」


  困ったように笑う彼女の顔の左側には薄くひきつれた様な傷が眉の上から真っ直ぐ下に降りていた。

  目は潰れなかったのだろう薄いラベンダー色の目はなんの支障もなく見えているようだ。


  髪は白に近い銀色。

  長く緩い巻き毛に細身の身体に長い手足。

  遠目から見ると誰もが振り返る美しい存在。

  だが近くに寄ると顔面左側の眉から真っ直ぐ鎖骨まで降りた細長い傷が痛々しい。

  髪は緩く結んで翼の邪魔にならぬようにし、服装は偵察に相応しく軽い素材の胸当てと長袖シャ ツに乗馬用ズボンのような姿にブーツ。

  手には細い槍を持っている。


  リーシャは槍をしまってから祖母の所に向かった。

  祖母は高齢で最近は眠っている時間が増えた。

  祖母は始祖の血を色濃く受け継いだブルードラゴン。

  今は王の間で竜の姿で尻尾を枕にして眠っている。

  その姿はリスが冬眠で丸まっている姿と似ていて少し可愛らしくも見えた。

  実際の大きさは小さい小屋ほどのサイズで可愛いとは言えない姿形だ。

  カナンの竜の一族は今はほぼ人の姿で生涯を終えるものが多い。

  一族は皆、翼を持っていて空を飛ぶ時は背中から翼を広げ魔力を揚力として飛ぶ。

  今、一族で完全な竜体になれるのはブルードラゴンの祖母だけだ。

  それ故に一族の中でもっとも尊敬される祖母をリーシャは自慢に思っていた。

  リーシャの母は身体が弱くリーシャが物心がつく前に病気で亡くなった。

  リーシャの父は海を超えた西の大陸からやってきた火竜でリーシャが産まれる前に西の大陸に戻ったきり帰っては来なかったらしい。

  リーシャは祖母に育てられた。


「おばあ様、リーシャ戻りました」


  うつらうつらしながら祖母が心話で語りかける。


『お帰り、危ない事はなかったかい?』


「お眠りのところ申し訳ありません。少し報告したい事がありまして…」


  リーシャはカナンに向かってる二人の旅人について話し始めた。




やっとお姫様の登場です。薄幸ですか精一杯生きている頑張り屋さんです。

カイルの方がヤル気ないです。

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