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8 見習いを卒業した3人のスキルとこれから

 試験後に集った3人は笑顔で乾杯を交わした。

「全員合格おめでとー! かんぱ〜い!」

「「乾杯!」」「ピー」「キュ」

 浮かれたアイリスの声に雪月花とヒロの声が喜色で返す。

 そして3体の精霊で声を出せるひなたとアンドリューも二人に合わせて声を上げた。


「フルーツもクッキーも美味しいよ。なんで私はお祝いにお土産を買っていこうって発想が浮かばないんだ」

 アイリスと雪月花が用意したおやつをアンドリューとともに口にしたヒロがこぼしてしまう。

「ヒロちゃんは時間ギリギリまで試験やってたんでしょ、寄り道せずに急いで帰ってくるヒロちゃんは絶対正義!」

 アイリスがフォークをフルーツに刺してひなたがそれを啄ばみやすいようにしながら力説した。

「昨日一昨日とヒロちゃんは時間ギリギリまで修行してましたものね。軍では教導と呼ぶのでしたか、先生方から技能と経験値を目一杯稼がせようという気概を感じます」

 メモリー用のフルーツ1切れとクッキー1枚が食べられたのを見た雪月花は、買って来て庭の隅に積んだ腐葉土に向けてメモリーを放り投げてからヒロのフォローをした。


「それでヒロはどれだけ成長しましたの? ヒロの人生の師である雪月花にちょっと見せなさい」

「誰が人生の師だ!」

「雪月花だと言ったばかりでしょ」

「そして私はヒロちゃんの恋愛の師匠」

「成就する気がしねえ!」


 二人が自分の師を標榜するのは認められないが自分のステータスを見せるのは構わなかったので、ヒロは二人とパーティーを組んで見せた。

「せっかくなので私たちのステータスも並べてみてみましょう、アイリス」

「イエス・マム」

 こうして3人はステータスの項目ごとに比較することになった。




・キャラクタースキル


アイリス:ヒロちゃんすごい、それスキルがまとまってるんだ。

雪月花 :道路、水道、堤、塹壕等を含んで【一般土木5】ですか。

ヒロ  :試験前は別れてたんだけど合格してスキル見たらこうなってた。

アイリス:そしてたのもしき【近接戦闘1】。

雪月花 :一見では見抜けない実力者、ヒロちゃんそういうの好きよね。

ヒロ  :雪月花は【魔石加工3】【金属加工3】【魔法陣1】。

アイリス:魔石や宝石に魔法陣を込めて使うんだ、お嬢様だね。

雪月花 :宝石が消耗品でないことを祈りますわ。

ヒロ  :金に不自由するげっかの姿が想像できねえ。

アイリス:むしろ売って大儲けしそう。

ヒロ  :アイリスは【内科治療1】【外科治療1】【製薬3】。

雪月花 :レベルが低いですね。

アイリス:うん。試験で患者さんに接したんだけどそれって経験値的に少ないみたい。

ヒロ  :少ないんじゃなくて大損じゃね。

雪月花 :不思議ですね、理由はわかりますか?

アイリス:本当の患者さんを私に治療させるわけにはいかないから。

ヒロ  :医者じゃなければ治療させられないんだ!

雪月花 :患者でない人を治療して経験値を得るというのも納得できませんしね。

アイリス:でも試験に合格したから今は医者だよ、治療できるよ。




・エレメンタルスキル


ヒロ  :じゃあどんな治療ができるのか見せてもらいましょうか。

アイリス:タブ切り替えるね。

ヒロ  :……いきなりすごいのきた。

雪月花 :【毒無効】って始めたばかりのキャラが取れるスキルではないよね。

アイリス:毒消しポーション作ったらお魚さんになってひなたの中に溶け込んだの。

雪月花 :……もしかして歌いながら作った?

アイリス:すごい、その通りだよ、雪月花にはわかっちゃうんだ。

ヒロ  :【外傷治療】【生体機能活性】は全部レベル1って低いなあ。

雪月花 :でないとえこひいきに思えてしまいます、【毒無効】が凄すぎます。

ヒロ  :治療役が落ちる可能性が減って良しとしよう、次私ね。

アイリス:【測量】【掘削】【整地】【硬化】【水源感知】……。

雪月花 :土木魔術はさっぱりわかりませんが【身体強化】はいいですね。

ヒロ  :【近接戦闘】や【護身術】みたいな肉体戦闘スキル取れば付いてくるって。

雪月花 :それは後で考えましょう、最後は私です。

ヒロ  :【金属加工】と【魔石加工】はともかく【魔石生成】って……。

アイリス:魔石ってモンスターを倒すとドロップするアイテムじゃなかったっけ。

雪月花 :戦闘なしで得られるとはいえ、それがメモリーの食費に釣り合うとは思えません。

ヒロ  :食わせないと作ってくれないのか?

アイリス:そっか、魔物狩ったほうが安上がりかもしれないんだ。

ヒロ  :うまい話はないか。

雪月花 :生産職の間で収入に大きな差が出ることはないでしょうね。




 アイリスはお茶を入れなおした。

 先ほどのお茶はお茶請けがあったのでストレートだったが、食べるものがない今回はレモンティーでお好みの量の砂糖を用意する。

 3人はこの3日間を振り返って見つけた自分の中に生まれていた自信を紅茶とともに味わい、これからの3人にはさらに素晴らしいことが起きる予感に酔うのだった。


「そろそろ明日からのことを決めようか」

 アイリスは二人に笑って切り出した。

「私、治療院の人たちと一緒に歌を歌う約束をしたから二人にも参加して欲しいの」

 雪月花とヒロはゆっくりと顔を見合わせて、ゆっくりと頷いた。

「毒無効はここの人たちから見てもありえない出来事なのね」

「私もアイリスの歌から創意工夫が大事なんだと学んでいい結果が出せたわけだし、あやかりたくなる気持ちはわかるわ」

「私はもっともっとアイリスにあやかりたいから絶対に参加するわよ」

「でもお金も稼がないといけないから、治療院に私たちを推薦してくれよな」


 自分の提案が受け入れられて嬉しかったアイリスだが、ヒロからのお願いは想定外だった。

「治療院で働くの? 土木工事とか宝飾品の加工とかするんじゃないの?」

「毒無効のおこぼれの方がいいに決まってるよ」

「得られたとしても毒無効に比べたらだいぶ劣化したスキルでしょう、ですがそれでも是非とも手に入れたいスキルです」

 アイリスには二人がスキルを得られることを約束できないので、そこをどう話そうかと考えてるうちに二人ともそこは了解しているのだとその笑顔から伝わって来た。

 ヒロも雪月花も楽しみにしているのだ。

 すると明日の予定が3人一緒に治療院で働くことになるのだと気づいてアイリスも嬉しくなった。

「任せて! 毒無効はわからないけど治療魔術はしっかり覚えてもらうからね」

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