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一日目-2

 昼休み。

 俺達は弁当片手に、先生の目を盗んで中学校舎に忍び込んだ。


 吉人君に件の友人を紹介してもらい、直接話を聞くことはできた。しかし語られたことは、以前に聞いた内容とほとんど変わらない。竜衛も特に変わった質問はするこもなく、すぐにお開きになった。他学年の校舎への行き来が校則で禁止されている以上、あまり長居をするわけにもいかない。

 吉人君だけを誘い、俺達は彼の教室から離れた。


 人気の無い場所を選んで、男子3人でのお昼ご飯。後で鱗音は「仲間外れにした!」と怒るだろうが、構うものか。女子が居るかいないかで、男子の会話は大きく変わるのだ。

「僕は一人っ子だから、りんちゃんたちが羨ましいです。」

 ふと、吉人君がそんな言葉をこぼす。アイツ『りんちゃん』って呼ばれてんのか、キャラに似合わず可愛い仇名だ。

「でも、お二人は“双子”ではない……でしたよね。」

「おっ。」

「鱗音に聞いた?」

 続けて出てきた話には、流石に驚いてしまう。家の事情まで話しているとは、鱗音はこちらの想像以上に彼を信用しているのか。目を見開く俺達に、吉人君は慌てて「いや、あの、」と言葉を詰まらせる。

「えっと、その……お兄さん達の誕生日プレゼント選びを、手伝ったことがあるんですけど…………同い年って言ってたのに、違う日だったから、つい、聞いちゃって。」

「おぉ、鋭いじゃん。」

「いや、鱗音の詰めが甘いだけだろ。」

 竜衛の褒め言葉に、思わずツッコむ。つまり前の誕生日に貰った手袋を鱗音が選ぶ時、吉人君もアドバイスしたのだろう。竜衛にはゴツいネックレスだったが、アレは流石に鱗音のセンスだと思いたい。

「本当は親戚の子供、なんでしたっけ?」

「まぁな。」

「すみません、立ち入ったことを…………」

「気にすんな。」

「今更だからな。」

 隠しているワケではないので、俺は素直に頷いた。特に付け加えることも無い。しばらく吉人君は気まずそうにしていたが、俺が何も気にしていないのを見て、ホッとしたように弁当を食べ勧めた。



 放課後。

「ヨッシーのクラスメイトに事情聴取しに行くぜ。」

「はぁ!?」

 授業後の掃除が終わるなり、竜衛は俺の肩を叩いて言った。それ以上は何の説明も無く、スタスタと教室を出ていく。訳が分からないまま、慌てて追いかけた。

「今から?全員、部活やら何やら行ってんだろ。」

「教室にいた奴の大体の顔は覚えたからイケるイケる。」

「相変わらずわけわかんねー記憶力してんな……。」

 件の友人に事情を聞いたあの数分足らずで、教室にいたクラスメイトの顔を覚えたのか。長年行動を共にする弟としては、今更驚くことではないが。しかし今朝に吉人君を疑うようなことを言っていたから、本人抜きで話したいのかもしれない。何を言ったところで竜衛が止まる筈も無い、俺は黙って後に続いた。


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