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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

女神の使徒

善にも悪にもなりきれなかったピンクブロンドの妹の顛末

作者: 山田 勝

「天におわします女神様の地上の代理人にして使徒様に懺悔いたします・・」


 私の名は、マリア・スメルです。男爵家です。

 お姉様の名はクラウディア、笑っちゃうでしょう。私はマリア、良くある名です。


 私の父、母は愚かでした。


 私の姉は

 大変美しくて可愛く聡明な姉でした。

 ピンクブロンドが特徴です。


 両親は姉に期待し可愛がり。貧乏な男爵家なのに不相応な教育、ドレス、装飾品を姉に与えました。


 姉に予算を集中しました。


 これで上位貴族と縁組し、商売につなげようと考えていました。


 馬鹿でしょう?


 男爵家です。高位の貴族とは地力が違います。

 縁組をしても、父と母には力がありません。

 良くて下働きです。とても対等にはなれません。


 力があってこその政略結婚なのです。

 逆なのです。


 生きたドラゴンの目を抜く貴族社会、子供だった私でも姉が可哀想と思ったのです。


 でも、姉は文句を言いません。


 ヒラヒラの可愛い服を着せられても文句一つ言わずに教育を晩まで受けました。


『マリア、宝石をあげるわ』

『お姉様、お父様にバレるわ』

『いいのよ。同じグレードの宝石を何個も買って・・お母様は宝石の事を知らないわ。マリア持っていなさい。何かあったら売ってね』


 お姉様は両親の目を盗んで私に宝石やドレスを渡しました。

 まるで、これから起きる事を予感しているかのようです。


 お姉様も年頃になり。婚約者になりたい貴公子が沢山いました。


 園遊会を開きましたが・・・



『クラウディアを見たい者は金貨一枚の参加料をお願いします』

『ええ、そうですわ。王族の耳にも入っていますわ』


『はあ、何だって、どこまで増長しているのだ!』

『そうよ。クラウディアちゃんが可哀想だわ』

『この馬鹿親が!』



 こうやって、男爵家、子爵家、商会の人達を追い払い。


 上位貴族の貴公子がやってきました。


『まあ、可愛いちゃ、可愛いけどな』

『王宮には美人が多いから』

『う~ん。上の下だな。愛人ならありだ』


 最低な貴公子達です。

 しかたありません。お金で釣られてくる人達ですから。

 それに、私の目から見ても高位貴族の令嬢に引けを取りません。


 貴公子達はワザと値を下げるためにああ言っているのです。



 やがて、お姉様は分相応の婚約者を作られずに貴族学園淑女科に入学しました。


 ある日の晩にこっそりお姉様に提案しました。


『お姉様、ハンスさんと逃げちゃえば?』

『・・・フフフ、ハンス、何とか王宮に仕官出来たのよ。私が逃げたら職を失うわ』

『ハンスさんが?』

『ええ、王太子殿下にお願いしましたの』


 ハンスさんは、親戚のお兄様で二人は好き合っていました。





 そこで・・・


「グスン、グスン、ウワワワーーーン」


「・・・・・・・・・・・・・」


 1時間くらい泣いた。しかし、女神の使徒様は待ってくれた。


 覚悟を決めて話した。心が壊れるかもしれなからだ。



「お姉様はある日、帰って来ました・・・遺体となってです」


 ドレスはボロボロ、体中に火傷の跡がありました。


 姉の遺体を持って来た官吏は言います。



『聞け、畏れ多くも王太子殿下を誘惑し虚偽の発言をし。王太子殿下の婚約者を貶めた。故に、処罰をした。遺体を返すのは温情である』



『ヒィ、クラウディア!』

『どうして、こんなことに!』

『お姉様!』



 お姉様は、王太子殿下と取り巻き達に婚前交渉を迫られ乱暴をされました。

 それを聞いた婚約者が、イジメを行い。熱湯を掛けたり。階段から突き落として怪我をさせました。


 これは、お姉様の日記から分かりました。

 王太子、側近に迫られるお姉様、それに嫉妬する侯爵令嬢。




 それから、両親は低位貴族や商会との縁を復活しようとガーデンパーティーを行いましたが、誰も来ません。


 我家は破産し。父と母は自裁をしました。



 王族に取っては、男爵も使い捨てのコマなのです。

 お姉様は一時の余興のために殺されました。


 グスン、グスン、グスン。



「どうか、女神の使徒様、鉄槌をお願いします!お金ならお姉様から頂いた宝石、ドレスを売り。金貨50枚を用立てました!

 不足なら、我身を娼館に売って用立てますから、お姉様の仇を討って下さいませ!」



 沈黙が続いた。


「・・・ついて来い」


 やっと口を開いた。女の声だ。私と同じくらいの年齢かしら。

 女神教会の懺悔室から出てドアに向かう。


 今は深夜だ。

 女神の使徒様の噂はハンスさんから聞いた・・・本当にいた。



「ヒィ」

「・・・・・」


 わずかな月明りで分かった。顔を奇妙な面で覆っている。

 ドワーフの工房眼鏡とも違う。

 唖然として立ち尽くしていると説明してくれた。


「暗視眼鏡という。夜目が利く魔道具と思って良い・・・」

「はい」



 まるで、伝説のようだわ。女神様はフクロウを部下として、地上の様子を伺っていた。

 しかし、一羽のフクロウが女神様も元に返らず。地上で悪を狩っていると。

 だから、悪い事はしてはいけませんという童話にもなっていた。




 大きな眼鏡と眼鏡の間に、赤い光が点灯している。


「三メートル離れてついてこい」


「でも、私、夜目が・・・・」


 すぐに分かった。背中に白い発光する小さなシールみたいな物がついている。そう言えば、夜は白が目立つと聞いた事があるわ。


 王都の寂れた野原まで来た。




「・・・今から、手榴弾を教える・・・」

「はい・・」



「このレバーを握りながら、ピンを抜く。そして、投げる。それだけだ。それはしっかり守れ」



 使徒様はシュリュウダンという楕円形の物を穴に掘り投げた。


 ドカーーーーン!


 爆裂が響く。

 これは爆裂魔道具?そう言えば、女神の使徒様は不思議な魔道具を使うと聞いた・・・


「練習をする。まず、模擬弾だ」


「は、はい!」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・



 それから、一週間後、王太子たちを公園で待ち伏せる。



 王太子と婚約者、側近が公園で孤児院の子供達と戯れている恒例行事だ。



「ワーイ、お兄ちゃん。いつも、有難う」

「うむ。しっかり、勉学に励むのだぞ」


「御姫様、ドレス素敵!」

「フフ、触っていいわよ」



 お姉様の日記に書かれていた。王太子と婚約者は孤児院に視察に良く行く。

 皆に見せびらかすために、公園まで子供達を連れていくと。

 このときは、パフォーマンスで子供達を可愛がる。


 今が1番無防備だ。



 私は、シスターになりすまして潜入した。



「そこのシスター殿、申し訳ないが、子供達にプレゼントを配りたい。小さい子も連れて来てくれないか?」


「はい」


 私に声を掛けた。


「シスター殿?」


「フフフフフ、私は、マリア・スメル、姉、クラウディアの仇!」


 シュリュウダンを懐から出した。


 しかし、子供達が、王太子と婚約者の前に出る。


「王子様を守れ!」

「イヤー!御姫様を守るのよ!」



 子供達が盾になった。手がまるで紅葉のよう・・・

 パフォーマンスとはいえ。確かに子供達に取ってはヒーロー、ヒロインだったわね。


 私は・・・・


 シュリュウダンを投げられなかった。


 ポトン。


 シュリュウダンを落とした。


「くせ者を取り押さえろ!」


 側近達に取り押さえられた。



「何だ。これは?」

「このピンは・・・ほお、こうやると引けるのか?」


「ダメです!それは・・・」



 数秒経過しても爆裂しない?

 不良品?


「これは、模擬弾だわ。何故、女神の使徒様は模擬を渡したのかしら」

「はあ、お前、後で拷問だわ」



 その時、王太子から100メートル先で喧噪が響いて来た。



「オラ、オラ、酒―――――!酒!ちょーだい!」


「おい、この親父、裸だ!」

「うわ、昼間っから飲んで!」



 その後方100メートル先の荷車の下に一人の黒髪の少女が寝撃ちの姿勢で銃を構えていた。


(標的ヨシ、見いだしヨシ、吸う。吐く、止める・・・ゆっくり引き金を引く)


 銃、自衛隊の64式7.62ミリ小銃である。


 銃声は、裸の親父の騒ぎで聞こえなかった。




 スパン!


 王太子の近くで何か空気を切り裂く音が聞こえた。

 7.62ミリ弾が側近の胸を貫通したのだ。


 側近の一人が震え。その瞬間、胸から血が噴き出してきた。


「ウ・・グ、グハ・・・」


 バタン!


 あっという間に倒れた。いや、死んだのだろうと分かった。



「殿下!鉄ツブテです!魔女の呪いです!」


「な、何だと、おい、子供達、盾になれ!」

「そうよ!平民!私は侯爵令嬢よ!私の代わりはいないのよ!」



 スパン!スパン!スパン!


 王太子と婚約者、側近達は次々に倒れていく。

 およそ、数十秒で6人が倒れた。



「嬢ちゃん、こっちだぜ」

「貴方は・・」


 私、マリアは全く知らない男に腕をつかまれ。

 そのまま、王都の端まで連れて行かれた。


「捜索が始まる。西行きの馬車に乗りな」



「貴方は?」

「さあな。匿名で頼まれた。シュリュウダンと言うのを投げなかったらあんたを助けるのが仕事だ。

 俺は冒険者だ。あの裸の男も多分そうだ。これ以上は詮索をするな。俺らも全く面識がない。何か巨大な力がうごめいている」

「はい・・」



 私は旅商人の馬車に乗せられ王都を離れた。

 どこかで仕事を探そう・・・





 ☆☆☆王宮



 王宮では第二王子が新たに王太子に指定された。


 初めにした仕事は、兄の死因の公式発表だ。



「何だと!兄上と、義姉上、側近達の死因は病死だ!何故、『公園で襲撃された。死因は鉄礫により死去』と書く!」



 一人の下級官吏が口を開いた。


「殿下、事実を事実として書くのが官吏の仕事です。隠蔽しても無駄です。大勢の者が目撃し、吟遊詩人、イエローペーパーも売り出されています。

 子供でも知っている状態です。

 もし、王家が嘘を書くと王家不審の原因になります」


「貴様、名は?」

「ハンスでございます。家門はスメル男爵の親戚です」


「ウッ」


 新たな王太子は全てを察した。

 この男がそそのかして、依頼を受けさせたのだろう。


 殺すか?

 まるで、王太子の心を読んでいるかのようにハンスは発言を続けた。


「私の他にも女神の使徒様への依頼ルートはございます。どうか、亡きクラウディアのために、愚王にならないで頂きたい!」



 長い沈黙の後、王太子は。


「分かった。好きにするが良い」


 とだけ言った。


 その後、捜索は続けられたが。

 この事件、裸の男が逮捕されたのみになった。

 罰金を払い釈放された。

 女神の使徒は、異世界から来た者の末裔説が有力である。


 善人には女神の使徒、悪人からは魔女と呼ばれるのが特徴の一つである。









最後までお読み頂き有難うございました。

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