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13_地下③

 

「――そこまでだ」



「……えっ?」

「くっ……!」


 セレスティアを何者かが魔法で攻撃し、彼女は体勢を崩した。


 そこに現われたのは、ルーファスだった。



 そのままセレスティアはルーファスに拘束され、抵抗が出来ない状態になる。



「セレスティア。君は聖魔術師として技量が高く、その心も皆に慕われるにふさわしいと評判だったが……内心はそうでなかったようだな。まあ、俺にとってはそこまで意外でも無いが」


「ルーファス様……あなたは、私を評価してくれていたのでは無かったのですか……」


「少し思うところがあって探っていただけだよ。……ああ、今の音で城の者が騒ぎに気付いたようだな。セレスティア、君には然るべき措置を受けて貰おう」



 ++++


 ルーファスの言う通り、城の警備の人間が地下室に現われた。

 彼らはルーファスの指示を受け、セレスティアを地上へと連れて行った。

 これから何が起きたか取り調べが始まるのだろう。




 私は、ルーファスと二人で地下室にいる。

 ルーファスは、私と少しの時間二人にするように城の人間に交渉したらしい。



「あの……」


「ん?」


「これ、外してくれませんか?」



 私の手首には魔道具のリングが填まっている。ルーファスがセレスティアを引き渡した後、彼がぬるりと私のもとに近付いてきて、気がついたらこれを装着させられていたのだ。


 先程から身体の中の何らかのスイッチが切れたように、私は脱力している。


 具体的に言えば、魔法が使えなくなっている気がする……。



 ルーファスは私の質問に首を振る。


「それは魔力を抑制する道具だ。それが無いと、メルナは転移魔法で逃げるかもしれないだろう?」


「…………」


「君はこの事件の参考人でもあるから、公的な立場としても君を逃がす訳にはいかないんだ」


 ルーファスの話を聞いて、私は気持ちがずんと沈むのを感じた。



(ここまで来たのに、捕まってしまった。闇魔術を持ち帰ることが出来なかった……。ごめんなさい、師匠、まだ見ぬ闇魔術師のみんな……)



 ルーファスがセレスティアを止めている間、さっさと転移魔法を使えば逃げられたかもしれない。


 でも、不思議とそれは出来なかったのだ。

 やらないといけないことがあると思ったから。


「あの……」


「ん?」


「先程は、セレスティアさんから助けてくれてありがとうございました。あなたがいないとどうにもならなかった」


「うん。本当はメルナがセレスティアに危ない目に逢わされる前に、もっと早く来れたら良かったんだけど。対応が遅い自分が不甲斐ないよ」


「い、いや……。それ以前に、ルーファスは、どうしてこの場所に気付いたんですか……?」



 ルーファスへのお礼と、質問。それが私のやりたいことだった。


 セレスティアと私の会話が地上に聞こえて、たまたまルーファスが近い位置にいた、というのも考えづらい。何故ルーファスが地下室に来たのかが不思議だった。



「それはまあ、色々と理由があるんだけど。まずメルナは闇魔術師なのだろうと思っていたし」


「えっ?」


「闇魔術師が王家にいたときのことも調べたら、聖魔術師にも何かありそうだと思ったし、アレキサンダーの反応からセレスティアはメルナに会っている筈なのに、それとなく探ってもメルナのことを話さないから怪しいなって思って、セレスティアの動向もチェックするようにしていたから……」


「ま、待って下さい。ちょっと話についていけない……ルーファスは、どうして私が闇魔術師だとわかったんですか? いつ……?」




 ルーファスが説明するには、こうらしい。



 ルーファスが私に見せた本は、かつて闇魔術師が出した本だったらしい。

 が、王家での騒動があって、闇魔術師の手がけたものは発禁処分となった。

 故に、限られたものしか流通していない。

 なのに、私が「同じ作者の本を子供の頃に読んだことがある」と言ったので、ルーファスは怪しんだのだという。



 私が何故繰り返し王城に転移してくるのは、おそらく王城の中に目的地があるから。

 自らの素性を明かさないのは、王家の関係者に知られるとまずい立場だから……。



 様々な情報から、ルーファスは私のことを闇魔術師の関係者だと当たりを付けたらしい。





「メルナにもう一度会う機会があれば伝えようとしていたんだが、君は俺の部屋に来てくれなくなったからな……。メルナ、何故君は城に来る目的を教えてくれなかったんだ?」


「だって、言ったら捕まると思いましたから……今みたいに」


「俺が今しているのは、保護、だ」


「保護……?」


 私の疑問に、ルーファスは頷いた。


「城の中の事故は隠蔽出来ない。これからメルナには何があったか城の者に話して貰う必要がある。だが、それによって闇魔術師が迫害されるような事態にはさせない。


 メルナと俺との関係を証言して、俺たちには以前から交流があったがメルナは俺を害さなかったこと、誰も攻撃しようとしなかったこと……闇魔術師の復興のみが目的だったことを話す。


 事件について落ち着いたら、闇魔術師の名誉を回復させよう。もう正体を隠して住むような事態にはならないはずだ」



「……本当ですか」


「ああ。そしたら、メルナはまた俺の部屋に来てくれるよね」


「えっ?」


「メルナの転移魔法は俺の部屋に繋がっているんだろう? また前みたいに来ることは出来るよね?」


「…………」





 ルーファスの言葉を聞いた私は、今までのルーファスとの日々を思い返した。





 そして返事をした。




「いや……もう行きません……」


「メルナ。ここみたいな部屋の方がいいなら、インテリアをもっと黒っぽく新調するようにするよ。照明ももう少し暗いものにする」


「い、いや、地下室の雰囲気の方が好きとかではないですから。ルーファスの部屋のインテリアを変えて欲しいとかは思っていないです。今のままで充分素敵ですよ」


「気に入ってくれているなら良かった。いつでも俺の部屋に来てくれていい。むしろ、ずっといてくれていい」


「駄目です。私があなたの部屋にお邪魔していたのは、闇魔術師の地下室を探すためだったので、これからはもう行く必要は無くなります」


「会う場所は別に俺の部屋じゃなくてもいい。別の場所でも……。ああ、俺の方がメルナの家に行くのはどうだ」


「何故そうなるんですか……」




 ルーファスには世話になったし、彼のお陰で助かったことも事実だ。お礼を伝えられて良かったと思う。

 それはそれとして、彼に引き続き会いたいかというと、それは別の問題だった。



 城の人が呼びに来るまで、私たちの問答は続いた。


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