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仮面舞踏会 フィーミアサイド

 あの仮面舞踏会を開くように命じたのはヨハネ法王に違いない。そう確信したフィーミアは、自分が本当は会場内にいた事をローラに言うか悩んだ。

 でも、話すとしたら、睡眠ハーブが何故効かないかも話さないといけない。かと言っていつまでも秘密にしておけない。 

 ローラ様は色々な事を知っているみたいだし、私の事を話しても……。

 手を握りしめたフィーミアは意を決して口を開く。 

「ローラ様、実は私は」

 そう言ってローラを見たフィーミアは、ふっと笑う。ローラはソファに座ったまま寝息を立てていた。

 フィーミアは軽々とローラを抱き上げ、ベッドまで運びながら、仮面舞踏会の出来事を思い返す。


 暗闇の後に現れたヨハネ法王は光を放つロザリオを参加者の前に掲げていた。

「ローズの娘はこの中にはいないか」

 と溜息混じりのヨハネの声がする。

「アラン、何か感じないか?」

 意識が朦朧としている参加者をかき分けアラン王子の前にヨハネが立ったのが、少し離れた場所から見えた。

 もちろん、王子からの返事はないと私は思った。

「ふざけるな!」

 ぞっとするような凄みのある声に思わず息を潜める。

「ふざけてなどいない。そんな噂があるから、調べているだけだ」

 身体に力が入らないはずのアラン王子は、素早く立ち上がりヨハネの首を掴むと身体ごと持ち上げた。 

 ヨハネの長身が宙に浮き、首が絞まって苦しそうに足を揺らす。

「ローズに対する侮辱だ。帝国の男と、しかも出来るはずのない子供だと?俺が大人しいからって舐めるのもいい加減にしろよ!」

 もがくヨハネがロザリオの真ん中にあるルビーを押した。アランはヨハネから手を離し、苦痛に顔を歪め蹲まる。

 尻もちを付いたヨハネも首元を押さえ、咳き込んでいる。

「調子に乗るなよ、アラン。スカーレットがどうなってもいいのか」

 苦しげに息をしながら、アランは奥歯をギリっと噛み締めたようだが、嘲るような笑みを浮かべた。

「足をすくわれないよう、せいぜい気をつける事だ」

 ヨハネは立ち上がり、蹲っていたアラン王子を蹴り倒し、頭を踏みつける。

「誰が誰の足をすくうって?この国にいるのは哀れな操り人形だけだ」

 口の端を吊り上げたヨハネが吐き捨てるように言い、アランの腹を蹴り上げた。

 アランは身体をくの字にして呻いていた。



 ヨハネを殺さなければならない。

  

 ローラを着替えさせたフィーミアは部屋の灯りを消しながら強く思う。

 

 ローラ様をお守りしなければ。


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