仮面舞踏会
「今夜、ガーネット王妃主催の仮面舞踏会が開かれるそうで、花嫁候補は全員参加となっています。アラン様からドレスが届いていますし、今から準備しなければなりませんので使用人をお呼びしますね」
平民のローラには、王宮から与えられたフィーミアしか侍女はいないが、その事が却ってローラには好都合だった。周りに人が多いほど、警戒しなければならないから。
長く豊かなローラの茶髪が真珠の髪飾りで結い上げられ、絹のようになめらかな肌を淡い桃色のドレスが包む。
田舎育ちの垢ぬけない少女は、洗練されたレディへと変身を遂げようとしていた。
「お綺麗ですよ。ローラン様」
「そうかな」
頬を人差し指でかいたローラに、フィーミアは大きく頷く。
ローラはふと窓の外を見た。
山際がオレンジに染まり、オレンジがだんだん薄まってくると今度は淡い水色、水色から青へ、最後には濃紺の空へと変化している。その濃紺の空に、白く小さな三日月が浮かんでいた
「綺麗」
ローラは思わず呟き、ガラス天井に広がる空のアートを眺めた。
「綺麗過ぎますね」
そう呟いたフィーミアを見たローラの心が、ざわめき立つ。
今にも泣き出しそうな、悲痛な面持ちで空を見つめる。その表情はほんの一瞬で消えたが、ローラの頭から消えることはなかった。
フィーミアの悲しみを理解していたが、ローラは何も言うことは出来なかった。
パレスのパーティーホールはすでに人で溢れ、話し声や音楽で賑やかだ。
さまざまな色のドレスが音楽に合わせて花開き、規則正しいステップが刻まれる。ホールには香が焚かれ、気持ちを高める良い香りが会場を満たしている。
ローラはアランの姿を探すが、みんなが仮面をつけているので誰が誰だか分からず諦めた。
「今日の仮面舞踏会は急遽、ガーネット王妃が開いたと聞いたけど、どんな意図があるのかしら?」
後ろに控えていたフィーミアに聞いたつもりだったが、返答がない。振り返ると姿がなかった。
はぐれた?
溜息をつき、きょろきょろと辺りを見回す。
「踊りませんか」
男がローラの手首を掴み、声をかけてきた。目と顔半分を、三日月を象った白いマスクで隠している。
面食らって一時停止していたローラの思考はすぐに動き出した。美しくサラリとした艶のある銀髪は、一度見たら忘れない。
「いま人を探してるので」
冷たく突っぱねられたことすら、愉しんでいるようなゲッカの態度にローラは苛立ちを覚える。
「フィーミアならしばらく戻りませんよ」
ローラのアドレナリンが血液中に増加し、みるみる顔を紅潮させた。
「どういうことです?」
「彼女は意中の男性とダンスの最中ですよ」
本当に?ローラが考えようとした時にはもう手を引かれ、ダンスの輪へ入っていた。
やられた。
「何故フィーミアの好きな人を知っているのです?」
「何故って。よくその男と話しているところを見かけるのでね」
「誰です?」
「アラン王子ですよ」
怪訝そうなローラを、ステップを踏みながら一回転させたゲッカは、白い歯を覗かせ、最高の笑顔を見せた。今の笑顔で落ちない女性はまずいないだろうと思うような表情だ。
「そんな営業スマイルを見せたところで、一文の得になりませんよ」
「ばれましたか」
おちょくられてばかりのローラは、イライラが最高潮だ。
「なぜ私に構うのですか?」
怪しむローラは、じとっとした目を向ける。
「あなたに興味があるからですよ。ローラ。随分お綺麗になられましたね。アラン王子のためですか」
ローラを引きよせ、耳元で囁くゲッカの声は低くて艶っぽい。
ローラは思わず赤面し、ゲッカから離れようとするが、びくともしなかった。
「そんな顔をされると、もっと苛めたくなりますね」
少し涙目になったローラの手を取った黒いマスクをつけた男が、自分の方に引き寄せた。
「私と踊っていただけますか」
アランだ!ローラは笑顔を見せる。
「喜んで」
ローラを取られたゲッカは不敵な笑みを浮かべた。
「私の知っている方とは別人のようですね。驚きを隠せません」
アランは片眉を吊り上げ、不審を露わにした。
「私のことを昔から知っているような口ぶりだが、誰かと勘違いしているのでは?」
ゲッカは物憂げな眼差しを向けたが、それとは裏腹に口調は妙におどけている。
「いいえ。勘違いではございませんよ」
ゲッカは一礼して立ち去った。
アランはローラに向き直る。
「大丈夫だった?」
ローラは小さく頷く。
「フィーミアがいないようだけど、彼女は?」
「ゲッカはあなたと踊ってるって、さっき言ってたけど?」
アランは首を振る。
「こんなパーティー面倒くさくて、休んでたところだよ。ローラにプレゼントしたドレスを見つけて踊ろうと近づいたら、あいつが横取りしたんだ。ローラだと知って誘ったのか?」
訝しげに考え込むアランに、ローラは聞いた。
「ゲッカと以前、どこかで会ったことがあるの?」
ピリピリした空気をアランから感じ取る。
「冷やかして愉しんでるんだろ」
「そうかな?」
ゲッカの憂いのある表情。それを隠すようにわざとからかうような口ぶりだった?
でも、やっぱりなんの意味もないのかな、とローラは独りごちる。
「絶対そうだ。あんな奴、一度見たら忘れないよ」
それもそうか。あんな美男、そうそういないもんね。
「それはそうと、ローラ。ゲッカに言い寄られて、真赤になってたね」
えっ?
「言い寄られてなんかいないよ。ゲッカが私を相手にするわけないじゃない」
ふくれっ面のアランに思わず吹いてしまう。
「そんなことないよ。最近、ローラを見る皆の目も変わってきてるし。フランシスとのお茶会も何もなかったよな?」
オレンジがかった茶髪がサラっと流れ、黒いマスクの下のゴールドに近いオレンジの瞳がローラを捕らえた。
「え?何もないよ?」
ローラの目が泳いだのを見逃さなかったアランはローラの腰に添えた左手に力を込める。
「フランシスがローズに近づいたのは何か意図があるんじゃないかと思ったんだが、何があったのかな」
凄みのある笑顔に、ローラは顔が引きつる。
「えーと、ア、アランは誰かに見られているって感じたことある?」
唐突な質問だったがアランはすぐに答えた。
「僕は常に誰かに見られていると考えて行動してるからね。たぶん見られているし」
狙われている身、それに王子としては当然のことにローラは少し恥ずかしくなり俯いた。
「そうだよね。ごめん、変なこと聞いて」
「ローズもそんな風に感じるの?」
ローラはぱっと顔を上げてアランを見た。
「他に誰かそんな風に感じている人がいるの?」
「え?」
「えーと『ローズも』って言ってたから、なんとなく他にもいるってニュアンスに聞こえて」
アランは斜め上を見た。
「それに似たようなことを最近、聞いた気がして。確か「誰かにいつも監視されている気がする」って言ってたかな」
ローラは踊りながらも血の気が引いていくのを感じた。
「誰が言ってたか覚えてる?」
「えーと、そうだ、ジュリアだ」
アランの口からジュリアの名前を聞くのはとても嫌だ。そんな会話いつしたんだろう?ローラの心が騒つく。
「あっ」
気持ちが揺れたせいか、ダンス中に足がもつれ、よろけた。アランがローラの腰を引き寄せ支える。
「少し休もうか」
アランがそう言った時だ。
突然、音楽が止んだ。
ローラがステージに目を向けると、マーメイドドレスに身を包んだガーネット王妃が現れ、優美に会釈する。ワインレッドのドレスが白い肌をより際立たせ、美しさを惹きたてた。歓声が沸き上がる。
「皆様、本日は急に開催が決まったにも関わらず、仮面舞踏会へお集まりいただき感謝致します。そのお礼というわけではありませんが今から特別な催しを行います!」
ガーネット王妃が言い終わってすぐにホールのすべての照明が消え、辺りが真暗になる。突然の事に叫んだり、悲鳴を上げたり、どんな面白い事が始まるのかと参加者の興奮が伝染する。
何が始まるの?
ローラは無意識のうちにアランを掴む手に力を込める。アランもローラの手を強く握りしめた。
銅鑼の音が鳴り響いたかと思うと、それが合図だったかのように、ローラは体の力が抜け、その場にしゃがみ込む。
「ローラ、大丈夫か?」
そう言ったアランの声も弱々しく、膝をついて上体を支えるのがやっとだ。
目が暗闇に慣れたローラは周りの参加者たちが次々にその場に倒れこんでいくのを見た。
ローラの心臓は早鐘のように鳴り響く。背後に人の気配を感じたが、もう振り向くこともできない。
「ローラ?」
異変を感じたアランの声を耳にしたが、ローラの体がふわりと浮いて何者かに抱きかかえられた。恐怖で声が出ない。ローラを軽々と抱えた男は敏捷な動きでステージへと近づく。ガーネット王妃の視線を感じた。
叫ばなきゃと思うのだが、恐怖と薬のせいで声が出ない。アランが標的ではないことだけがローラの救いだ。
ステージの裏にある壁の前まで来ると、男は薔薇を象った大理石を押す。
すると突然ドアが現れ、ドアが魔法のように勝手に開き、地下へ続く階段が見えた。男は暗闇のなか躊躇なく階段を下りて行く。
何度もこの隠し扉を使っているのね。一体、どこへ……。
ローラは頭がくらくらした。どこをどう進んでいるのかも分からず、不安だけが募るが、薬のせいか心拍数はあまり上がらない。
男はようやく立ち止まると、先ほどと同じ薔薇の形をした大理石のボタンを押した。扉が音もなく開く。
夢でも見ているの?
急に明るくなり、ローラはきつく目を閉じる。光に少し慣れ、恐る恐る目を開けた。
赤いビロードの絨毯が敷き詰められた室内は豪華絢爛という言葉が相応しく、高い天井からはクリスタルのシャンデリアが輝いている。天蓋付のベッドにはシルクのクッションがいくつか置かれ、こちらもワインのような赤で構成されていた。
この趣味はガーネット王妃のものだとローラは直感した。
「ご察しの通り、ここはガーネット王妃の部屋だよ。お姫様」
ここでようやく自分を連れて来たのがゲッカだと気づく。
「私を殺すの?」
ローラは前を見据えたまま、隣のゲッカに聞く。
「さあ。ただ、あなたは王妃様に相当嫌われてるのでどうなるか私にも分かりません」
ゲッカも知らないってどういうこと?
暑くもないのに額から汗が流れ、喉が渇く。
「体に力が入らないのは……会場で焚かれていたお香のせい?」
「私が特別に調合したハーブです。一、二時間で効果は切れるのでご安心を」
その一、二時間で何かあったら困るのよ!
言い返そうとした時、音もなく扉があき、ガーネット王妃が現れた。
「ローラン。よく来てくれたわね」
蹲っているローラの横を悠々と通り過ぎ、目の前のソファに優雅に腰掛ける。
「私に……何のご用でしょうか」
ローラは強い口調で王妃に聞く。
「単刀直入に言うわ。花嫁候補を辞退しなさい」
「私が平民だからですか」
「場違いなあなたが目ざわりなのよ」
「始めから候補にしない事もできたのでは?私は聞いた話では、ゲッカ男爵に説得されたとか」
ガーネットは気不味そうにゲッカをチラッと見た。ゲッカは整った口元に笑みを浮かべる。
「私もそれは、お聞きしたいですね。ガーネット様?」
ガーネットが怯えたように見えたのは気のせいじゃない。空気が凍ったかのような、緊迫した雰囲気をローラは感じ取り、息を飲む。
「ゲッカ、これには訳があるのよ。アランの事も大事だけど……」
ガーネットの目線がローラに向けられ、ゲッカも同じようにローラを見る。
ローラは居心地が悪い。
「ローランが何か?私に隠し事ですか」
ガーネットは青ざめていた。
「その話は、後にしましょう」
王妃の威厳など消え失せたガーネットに、ローラは少しだけ同情した。重々しい空気を変えるように、敢えて大きな声を出す。
「私は候補から外れる気はありません。絶対に」
ガーネットは眉間に皺を寄せ、頭が痛いというように額に手を添えた。
「王妃様。いえ、ガーネット様。二人きりでお話出来ませんか?」
ローラの申し出にガーネットは虚をつかれた。
「私が平民と二人きりで?」
ゲッカをチラッと見たローラは「誰にも聞かれたくないのです」と訴えた。
「私は構いませんよ」
そう言ったゲッカは部屋を出て行った。予想外の展開に内心、戸惑っていたガーネットは居住まいを正す。
「それで話とは?」
ローラは首からさげていたロザリオをドレスの下から出すと、真ん中のルビーを押し込んだ。ロザリオに埋め込まれたルビーが淡く光る。
「これでお話が出来ますね」
不意打ちを食らったガーネットは、瞬きもせず、時が止まったかのように見えた。
「私を候補にしたくない本当の理由を教えてください」
口を開けたまま固まっていたガーネットは、はっとして叫ぶ。
「ニール様が教えたのですか?」
ガーネットの勢いに目を見張りながらも、ローラは首を振る。
「お姉様……スカーレット様の書いた『ローズ王国物語』が実話だと気づいたのですね?そうだとしてもロザリオの使い方を知っているのは何故です?」
「その話はまたにしましょう。今は時間がありません。質問の答えを教えていただけますか?」
ガーネットは狼狽した。形の良い小さな顎に右手を添え、少しした後に言う。
「王宮のような危険な場所に、貴女には来て欲しくなかった。私は最初から反対でした」
ローラは頭の中で欠けたピースを埋め、頷く。
「貴女の母は私にとって姉も同然。貴女は私の家族ですから」
ローラの胸が熱くなり、目が潤む。
「そう言って頂けて、私も嬉しいです」
ガーネットの目頭もまた熱くなる。
「辛く当たってしまいごめんなさい。貴女を王宮から追い出す為には、どんな事でもやるつもりでした。私にとって不本意だとしても『帝国』に貴女を知られる訳にはいかなかった。どんな悪女でも演じるつもりでいたの」
ガーネットは沈痛な面持ちで瞼を固く閉じる。
「私が謝る事はあっても、ガーネット様が謝る事はありません。私達を助けてくれたのですから」
「ローラ。抱きしめてもいい?」
「もちろんです」
ガーネットは立ち上がるとローラの隣のソファに腰掛け、ローラを抱きしめる。
「一人で秘密を抱えながら長い間、演じるのは辛かったでしょう。私達は貴女を守っているつもりで、貴女を孤独にさせていたのね。本当にごめんなさい」
ローラの目から留めどなく涙が流れ落ち、啜り泣く。今まで押し留めていた様々な感情が決壊した。ガーネットが優しくローラの頭を撫でる。
「貴女が産まれ、この手に抱いてから今日までずっと見守ってきたわ。フランシスと共に」
「フランシスは一体?」
「ヨハネ・イスカリアの犠牲者の一人であり……彼は」
扉をノックする音が部屋に響く。
二人は扉の方を一斉に見た。ローラのロザリオの光が消えかけているのを見たガーネットは、小さな声でごめんなさいと呟いた。
「入りますよ」
ゲッカの声かけと同時に、バチンと音が響く。
部屋に戻ってきたゲッカは溜息を吐く。ローラは赤く腫れた頬を押さえていた。
「ガーネットはフンっと立ち上がり、ローラを睨みつける。
「不愉快だわ。下がらせなさい」
涙目のローラを見たゲッカは、畏まりましたと頭を下げる。
ローラの手を引き部屋を出たゲッカは「どうやったらガーネット様をあそこまで怒らせられるんだ?」と呟く。ローラは余計な事を言わないよう無言を貫いた。
「部屋まで送ろう」
「いいえ。一人で戻れます」
ゲッカは眉根を上げる。
「薬がまだ効いているだろう?」
「ローラン様!」
慌てた様子で近寄って来るフィーミアにローラは安堵した。
「申し訳ありません。会場ではぐれてしまって」
「侍女が来ましたのでお気遣いなく」
ゲッカが目を見張る。
「君は会場にいただろう。何故、ここにいる?」
「ローラン様を探しにテラスに出たところ、法王が現れ何か儀式のような事を始めたので、そのまま待機していました。恐れ入りますが、ローラン様がお疲れのようですので失礼致します」
訝しげなゲッカを他所にフィーミアはローラの手を取ってそそくさと帰ろうとする。
「男爵、失礼致します」
ローラも一刻も早く立ち去ろうと会釈した。
「待て」
ゲッカの命令に二人は足を止める。
「テラスへ行く扉には鍵がかかっていた筈だ。そもそもハーブは始めから焚いていたし、会場に入って数分で効く仕様だ。もう一度聞く。何故お前はここに居る?」
どういう事?ローラは息を飲むが、フィーミアは満面の笑みを浮かべた。
「鍵は開いていましたよ?私には何ともなかったので体質かもしれませんね。
他に何か?」
ゲッカは不敵な笑みを浮かべる。
「まあ、いい。いずれ分かる」
そう言い捨てたゲッカがガーネットの部屋へ入ったのを見るなり、二人は足早に自室へ向かう。
「フィーミア、私の無事をアランに伝えてきてくれる?たぶん心配してると思うの。アランも無事か知りたいし。私はもう大丈夫だから」
フィーミアはローラを見つめ、微笑む。
「アラン様は気を失っていらしたので、僭越ながら私がお部屋の近くまでお連れしました」
「良かった」
ローラは瞳を潤ませて感謝した。
「本当にありがとう。フィーミア」
そしてはっとした。アランはフィーミアより頭一つ分、背が高い。
「一人で運んだの?あなたって見かけによらず力持ちなのね」
フィーミアは顔を赤らめる。
「力仕事は得意なんです」
ローラは吹き出したが、薬で頭がぼんやりしていたのだろう。自分より背の高い、しかも異性を運ぶ事など普通は出来ない。
部屋へ戻り一息吐いたローラはソファへ身を預けた。まだ身体にあまり力が入らない。満月とはまだ言えない月が雲一つない空に浮かんでいるのを天井のガラス越しにぼんやり眺める。ローラは思い出したように呟いた。
「ジュリア様が危ないかもしれない」
言ってしまってローラは首を振る。
「ジュリア様がどうかしましたか?」
「監視されていると感じているみたいなの。でも、貴族で花嫁候補だし、危険は無いわよね?」
同意をフィーミアに求めたが、深刻そうな表情に逆に不安が強くなる。
「制裁の対象は今まで平民でしたが、貴族に向かうことがあってもおかしくないと思います」
「そう言えばさっき、仮面舞踏会にヨハネが来たとかそんな事言ってなかった?」
「はい。急に暗くなり、皆が倒れた後にロザリオを持った法王がどこからともなく現れ、何やら話している様でした」
フィーミアの何かを畏れるような姿に、ローラの顔は恐怖で引きつる。
「法王は何をしていたのかしら?」
ローラは自分を奮い立たせ聞く。
「声が聞こえなかったので分かりませんが、ロザリオを翳して、何かを探しているようでした」
「探す?」
「それより……」
言いかけて黙り込むフィーミアに頭がぼんやりしているローラは気付かない。
「ジュリア様は幼い頃から教育……洗脳を受けてきたはずよ。やっぱり会って話を聞いてみなくては。フィーミア、ジュリア様をティータイムに誘いましょう」
「かしこまりました。準備致します」




