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第3話 永遠のロマンだろ。魔王は。

数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!


 




 十分も飛んでいるとキナコは高度を落とし始めた。

 後数分も飛んでいれば大きな城に着くだろう。


 もしかして向かっているのはあの城なのだろうか。

 そうだとしたら絶世の美女は魔王軍の幹部か何かだろうか。


 分からないことばかりだ。


「うぅ……む。着いたかのぉ」


 そこで絶世の美女が目を覚ます。


「うむ。ちゃんと妾の指示した場所まで飛んでおるな。いい子じゃ」


 そう言ってキナコの頭をなでる彼女。


 そういえば名前も聞かないまま連れられてきてしまった。


 一瞬で追手たちをほうむり去ってしまえるほどの戦闘力の彼女がただのモブな訳がない。

 オレは忘れていた警戒心を強めた。



「んっ?……あ、あれぇ? 僕いつの間に寝ちゃったのぉ?」


 ちょうどその時アレクたちが目を覚ました。

 寝ぼけ眼で辺りを見回している。


「うむ、目が覚めたようじゃな」


 絶世の美女が満足そうに頷いている。


 オレはみんなが起き上がったのを確認して口を開いた。


「貴女は何者なんです?」


 相手を刺激しないように丁寧な口調で聞けば、美女はにやりと口角を上げる。


「そう警戒せずともとって食ったりはせぬわ。……ああでも、そなたは少しうまそうじゃのぉ」


 ちろりと覗いた下は赤赤としておりなまめかしい。

 ぞわっと肌が粟だった。


「だ、ダメですわよ!」

「お兄ちゃんを食べちゃやだですよ!」

「ヴォンはあげないよぉ!」


 後ろにいたはずの女性陣がオレを庇うように立ちはだかる。

 護衛の二人はすぐにでも武器を放てるように構えていた。


「んっふふ。安心せい。今は食べぬわ」


 美女は機嫌よく笑う。

 今はという言葉が気になるがとりあえずしばらくは害を為そうとは思っていないようだ。



「それで……妾が何者か、だったか? そうさなぁ。呼ぶものによって呼ばれ方が変わるが、そなたたち風に言えば“魔王”かの?」


「「「「はあ!?」」」」


「んっふふ! 良い反応じゃ!」



 仲間全員が見事にハモった。


 魔王っつたか彼女!?


 オレも大混乱だった。


 だって、『ストモン』の中の魔王と目の前の彼女は似ても似つかない。

 それどころか性別も違う。


「魔王って男じゃないの!?」


 記憶と違う展開になっているとか……?


 オレは混乱しながら声を上げた。


「うむ。男でもあるぞ?」

「え? 何? どういうこと?」


 ついつい警戒も忘れて砕けた口調になる。


「まあまて。まずは自己紹介じゃな。妾はティア。そして……」


 ティアと名乗った女性は持っていた扇子で顔を覆うと、次の瞬間には変身していた。



 黒のごつめの衣に覆われた体は筋肉質で胸元が大きくはだけ、背には大きな黒い翼がある。

 頭には二本の大きな角があり、額には第三の眼が開いていた。

 眼光は鋭く、けれども女性ウケしそうな甘い顔をしている。



 その姿はまさに、オレが知っている魔王そのもの。


 オレは叫んだ(興奮で)。


 何を隠そう、オレは『ストモン』の魔王の大ファンである。




「うわあああああ!!!! 魔王だああああ!!!」


 間違いない! 『ストモン』の魔王だ!


 これは興奮のあまり顔を輝かせ魔王を見る。


 右から左から、前から後ろから。


 余すことなく見たい。


 だって、男にとって魔王ってあこがれだろう?

 だから仕方がない。


「すげぇ! 本当に魔王だ!! 第三の眼もある!!」


 オレは興奮しながらずいっと身を乗り出す。

 魔王はそれを面白そうに見ていた。



「何じゃそなた。女子おなごの姿よりもこちらの方がお好みのようじゃなぁ」

「そりゃあ魔王に憧れないわけないでしょう! いいな~。角格好いいな~。あ、角触っちゃだめですか?」


 どんな質感なのだろうか。


 見た所つるつるとしていそうだ。

 ゲームではここまで間近に見ることなどできなかったからできることなら触ってみたい。


 オレは角にくぎ付けになった。


「……っ! んっふふふふ」



 魔王が突然笑い出す。


「これはこちらが驚かされてしまったのぅ! そなた、遠慮なしにまじまじと見おってからに。魔王が怖くないと見える」


「ああ、ごめんなさい! 格好良かったからつい!!」


 永遠のロマンだろ。魔王は。


 魔王はひとしきり笑うと元の女性の姿に戻る。

 服まで元通りだ。


 残念。もっと見ていたかった。


「さて、今見せたのが妾のもう一つの姿。魔王、ティアマドール。どちらも妾の本当の姿じゃ」


 そう言って魔王は蠱惑こわく的に笑った。


「さあ、ひれ伏すが良いぞ!」


 腕を振る姿も様になっている。

 良いな。オレもやってみたい。



「魔王やっぱり格好いいです~~~!!! 女性の姿も可愛いです!!」

「か、可愛い??」


 オレは素直な気持ちを口に出した。

 あわよくばもう一度見せてほしい。


 そんな期待を込めてじっと見つめると、魔王は何故だか照れたように頬を掻いた。


「そなた変わっておるのぉ。妾を見て賛辞の言葉をいうものや魅せられるものは多いがそのような誉め言葉を述べたのはそなたが初めてじゃ。なんぞ、むずかゆいぞ?」


「えっ? 嘘でしょう? 可愛いって言われません?」


 オレ的にはすごくかわいいと思う。


「可愛い……というよりも美しいとか綺麗とかそっちの誉め言葉しかないのぉ」

「ああ、確かに。でも可愛いっすよ?」


 いつだったか“女性は皆可愛いと言われたいのだ”と誰かに言われたことがあったなぁ。

 どうやらそれは本当のことらしい。


 それに美人な人程可愛いと言われ慣れていないというのも本当なのだろう。


 魔王でさえ照れているのだから。


 前世でもちゃんと言葉にしてみれば、オレにも彼女ができていたのだろうか。

 うん、きっとそうだろう。



「っ! もうよい。そなたの賛辞は十分に受け取ったわ」


 ぷいっと顔を背けられた。

 しまった。調子に乗りすぎたか。


「ヴォン様はそうやって何人たらしこむおつもりなのか……」

「本当にぃ」

「罪深いなのですよ」


 そんなささやきが後ろから聞こえた気がした。


 オレは口を噤んだ。





「さて、そろそろ城につくのぅ」


 魔王は前を見るとそう言った。


 そう言われてみればうっすらといかにもという感じの城が見える。


 よく漫画やアニメで背景に雷が鳴っている演出が似合いそうな城だ。


 うおおおおお!!

 魔王城だぁあああ!!!



 オレは再び内心でフィーバーした。





ここまでお読みいただきありがとうございました!


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「今後が気になる」

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