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第8話 もはやここで暮らしてもいいんじゃない

数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!


 


 ――ヴォン達が奴隷商を潰したその一週間後、とある国王の部屋――



「なに、サフランの奴隷商がつぶれただと?」


 男は怒りをあらわにし、手に持ったグラスを床に叩きつけた。


 ――パリン


 子気味良い音が暗い室内に響く。


「どこのどいつだ! そのようなことをするのは!!」


 男は部屋の影に話しかける。

 そこにはいつからいたのか、数人の影があった。


「以前報告した『死神』が絡んでいるかもしれません」

「なに? 死神だと?」


 その言葉に興味を示した男は豪華なイスに座り直す。

 続けろという合図だった。


「調査の結果、奴隷商を潰したのは謎の組織『方舟はこぶね』と判明しました。『方舟』は今勢力を広げてきている組織です」


 無機質な感情のこもっていない声が告げたのは『方舟』という組織の存在。


 ――方舟。


 この世界を作った神が使ったとされる舟だったか。

 男はそう考え鼻を鳴らした。


「ふん。忌々しい。自分たちが正義とでも言いたいのか」


 男は傍にあったテーブルを蹴飛ばす。

 そんな男の様子にも影は反応しない無機質な声で続けた。


「潜ませていた部下からの連絡では、『方舟』を名乗る者達の襲撃の前に一人の子供が入ってきたとのことです」


「それが死神であると?」

「確証はありませんが時期的に可能性は高いかと」


 無機質な声に男は白けた目を向ける。


「ふん。まあいい。もちろん追手はつけているのだろうな?」

「ご安心を」

「そうか。ならばその子供を捕えよ。逆らうようなら死なぬ程度にこらしめよ。手配書を作っても良い」

「っは」


 男は立ち上がり窓の外を見る。

 空に高々とのぼっている月を眺めて歪んだ笑みを零した。


「早くわが手に召鬼道士しょうきどうしの力を……。あれさえ手に入ればこの世界などカノン王国の……我が物も同然だ」


 湿った風が吹く。

 カビの匂いがした。




 ◇


 オレ達三人が組織が運営する温泉宿に戻ってきてから二週間がたった。



 この二週間、オレはほぼ理想のスローライフをエンジョイしていた。



 何もしないでも三食美味しいご飯が食べられて温かい風呂につかり、気持ちの良い布団で眠りに付く。


 なんて最高なんだ。

 もう一生こういう生活がしていたい。


 というか、もはやここで暮らしてもいいんじゃない?


 オレは風呂に浸かりながらそんなことを考える。


「お兄ちゃん! 背中洗ってですよ!!」

「ずるいわ! ヴォン様、私がお背中をお流ししますわ。どうぞこちらへ」


 オレのぼんやりタイムが終了した。



 なぜかオレの風呂タイムには二人とも入ってくるのだ。

 そしていつもこういう言い合いをしている。


 じっくりとぼんやりすることができない。


 いや、嬉しいんだよ?

 二人ともすごく美人だし、タイプの違う女性たちがオレを取り合ってくれるのはすごくうれしい。


 だけどオレはゆっくりとしたいのだ。



 贅沢言うなって? はは、悪いね諸君。

 ついにモテ期が来てしまったようだ。


「お兄ちゃん/ヴォン様、はやく~!!」

「ああ、もう。はいはい」


 おおっと、そろそろ行かないと本格的にバトルが始まってしまう。


 オレは慌てて湯船から出て二人の元に向った。



 ◇



「わあーい!! ご飯なのですよ~!!」


 風呂から上がると用意されていたごはんにクローネちゃんが飛びついていく。


 彼女は奴隷として捕まっていた為、初めの一週間は回復に努めていた。

 といってもそこまでひどい状態でもなく、すぐに元気になったのだが。


 獣人族は人間族や精霊族よりも体力があるらしい。


「ああ、こらクローネ。そうがっついてはいけないといつも言っているでしょう?」

「だって美味しいんですよ~!」


 がっつくクローネちゃんの頬についた米つぶを手でとってやるリューナさん。


 こういうところを見るととてもほのぼのするな。

 なんだかんだ言って二人は仲が良いようだ。



「そういえばヴォン様。最近、貴族たちの間で不穏な動きがありますわ」

「不穏な動き?」


 ご飯を食べながらリューナさんが言った。


 貴族たちというと、クローネちゃんを助けた時に貴族御用達の奴隷商を潰したことが頭に浮かぶ。


 あの時オレ達は商品にされていた者達を全て逃がした。


 オークションに来ていた貴族たちに恨まれるかなと思っていたが、どうやら相当怒っているようだ。


 ちなみになんと、クローネちゃんが目玉商品だったらしい。

 

 獣人族でも希少種だというホワイトウルフの能力を手に入れたい貴族は多く、かなりの人数が集まっていたらしい。

 

 オレはそのすべての者から恨みを買ってしまったのだ。


 着々と敵が増えてきている。

 早いところ静かなところでひっそりと生きる様にしなければ。


「はい。生き残った奴隷商の者達は我が組織の配下に取り込みましたが、貴族たちはあの事件を徹底的に調べているようです」


 奴隷商だった者達はリューナさんの洗脳を受けて組織に組み込まれたらしい。


 スラっと言ってのけるリューナさんだが、それってさらっと流していい情報だろうか。


 いや、怖いわ。


 改めて思う。

 リューナさんと敵対しなくてよかったと。


 オレは真顔で頷いた。



 だが、そうか。

 この近辺で不穏な動きがあるのならば早いところここを発った方がよさそうだ。


 ずっといたら、巻き込まれ体質が発揮されそうな気もするし。



 オレはそう考えると味噌汁をすすった。




ここまでお読みいただきありがとうございました!


「面白そう・面白かった」

「今後が気になる」

「キャラが好き」


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