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第6話 美人怖い

数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!


 


 長い螺旋らせん階段の下にはいくつもの牢屋が連なり、商品となる人間や獣人、エルフなどたくさんの種族がつながれていた。


 その首元には皆一様に首輪が付けられている。


 だが、思っていたほど奴隷たちの状態は悪くない。

 もっと立つこともできないような人たちがいるかと思ったが、違ったようだ。


 やはり上級層向けの商品なのだろう。



 牢屋を抜けると少し開けた部屋へ出る。

 調度品や高価そうなものがこれでもかという程おいてあるその部屋には、これまたいかにも成金そうなでっぷりと肥えた男がいた。


 男は三下たちに気が付くと不機嫌そうな声を上げる。


「お前たち、何をしている? もうすぐオークションが始まる。やることはいくらでもあるはずだ」


「そうなんですが、お客様が来られまして」

「客?」


 オレは三下の横に出る。

 肥えた男はオレを見ると声を上げて笑い出した。


「だっはははははは! おい、何の冗談だ? そんなガキに商品をやれるわけねーだろうが」


 おい、三下が三下なら店主も店主だな。

 オレを見た目で決めつけてきやがった。


 オレの機嫌は急転直下だ。


「い、いやでも金はたんまり持ってるみてーなんですよ」


 オレの機嫌が急落していくのを感じ取ったのだろう。三下が焦ったように説明を始めた。


「親の金か? どこかしらのお貴族様のガキか? だとしたら身代金でも取れるだろうし、オークションに出せば家族が大金をはたいてくれるだろう。おい、そいつも檻に入れておけ」


 肥えた男は下卑た視線をよこす。


「それに、顔は結構いいじゃねーか。これならすぐに買い手がつく。何ならこの俺が少し味見してやろうか?」


 う、うへぇ。

 気持ち悪っる。


 男のなめるような目つきに思わず鳥肌が立つ。

 こんなオッサンに好き勝手されるなんて死んでもごめんだ。


 オレは吐き捨てる様に攻撃的な言葉を口にしようとした。



「主様に対して何たる不敬。今の言葉撤回なさい」


 だが、言葉を発する前に凛とした声が空気を震わせた。


 横を見ればいつの間にかやってきたのかリューナさんが立っている。

 ひどくご立腹な様子だ。


「な、なんだお前は! どこから入ってきた!?」


 リューナさんは音もなく気が付いたらそこにいた。

 オレですら気が付かなかったのだから、男達が驚くのも無理はない。


「貴様のような下卑げびた男に主様を触らせるわけがないだろう。身の程を知れ」


 彼女の言葉にははてしのない怒りがこもっており、部屋の温度が何度か下がったように感じる。

 肌にまとわりつく空気が電気を帯びたかのようにピリピリとしていた。


 うわぁ、美人の真顔の怒りってこんなに怖いものなんだなぁ(小並感)。


 オレは彼女を直視しないように少しだけ下がった。




 男は最初こそ面食らってはいたものの、リューナさんの美貌と抜群のスタイルに気が付くと笑みを濃くした。


「おいおい、なんだ。超絶美女じゃないか。お姉さん、この俺のめかけにならないか?」


 うわぁ。本当に空気読めないやつなんだな。

 まだオレの逆隣りにいる三下たちの方が話が分かりそうだ。


 見れば冷や汗をかいてうつむき黙りこくっている。


 うん。気持ちはわかる。

 美人怖い。



 そんな男の言葉を無視してリューナさんはオレの横にひざまずく。


「主様。奴隷たちの首輪解除、完了いたしました。後はお好きなように」

「え?」


 リューナさんの言った言葉の意味が分からずに瞬く。


 そもそも何故彼女は今ここにいるのか。

 彼女の怒気に気圧けおされて疑問に思っていなかったがそれも謎だ。



 けれども彼女はそんなオレの困惑をよそに会話を続ける。


「さすがは主様。私どもが今日仕掛けることを予測して先回りされるとは」

「え?」


「いいえ、何もおっしゃらなくても分かっております。私どもは主様のご意向に沿うだけです」

「ん?」


 なんだか壮絶な勘違いをされているような気がする。

 気のせいだろうか。


 そうだ、ここは合わせよう。そうしよう。


 なんだかわからないが奴隷たちを解放してやれるんだな。

 そういうことだな。


「……そうか。では彼らのもとに向おうか。ここは任せてよいのだな?」


 あくまで威厳いげんを感じられるような口調を意識して口を開けば、リューナさんは至極嬉しそうに微笑んだ。


「はい、お任せください」



 オレとリューナさんは頷き合う。



 キまった。

 なんだかわからんが、キまったことは間違いない。


 そんな妙な達成感を得た時、肥えた男が我慢ならないとばかりに声を上げた。


「この俺を無視してるんじゃねーぞ!! それに商品の首輪を解いたって!? ふざけんじゃねえ! 俺がどれだけ苦労して集めたと思っている! おいお前ら、やっちまえ!!」


 男は壁際にあったひもを引っ張りベルを鳴らした。

 どうやら奴隷の脱走などがあった際にそれを知らせるベルのようだ。


 カンカンカン、と甲高い音を鳴らすベルにつられたのか、いつの間にか部屋や牢屋の道は三下と似たような男達で埋め尽くされる。


 あっという間に囲まれた。


「みろ、この数を!! これが俺の実力だ!!」


 男が得意げに何か言っているが、正直言ってどれだけモブを集めた所で負ける気はしない。


 それに隣にいるリューナさんも不敵に笑っている。

 彼女は一歩前へ出ると何事かつぶやいた。


 隣にいるはずなのに聞こえない声だ。



 だがすぐに変化が現れた。

 部屋を囲んでいた男達が次々と気絶していったのである。


 恐らく彼女の持つアレーンの能力によるものだろう。

 確か歌うことで洗脳したり眠らせたりできると言っていた。


 ええ、ここまで強いのなら出会った時オレの助けなんて必要なかったんじゃ。


 そうは思うが口に出さない方がいいだろう。



「なっ!?」


 肥えた男からは驚きの声が漏れた。

 そうしている間にも一人また一人と倒れていく。


 気絶していない男達は何が起きたのか分からずに逃げ出すものも出始める。


 が、逃げ出そうとした男が次の瞬間には血を吐き散らして崩れ落ちた。


 見れば外套がいとうを深く被った人が二人、階段を下りてきた。

 その手には細い針のようなものが握られているのが見える。


 あの人たちもこっちの陣営なのだろう。


「無駄ですのよ。私たちからは逃げられない。私の声が届く範囲にいる者は皆私の言いなりなの。さあ、声魔法に酔いしれなさい」


 声がした。

 リューナさんの声だ。


 見れば彼女は恍惚こうこつとした表情で腕を広げ天を仰いでいる。


 ……。


 どうやら彼女には嗜虐的サディスティックな趣味がある様だ。


 ええ、怖。


 オレは身震いした。

 数の差をものともしないその能力もさることながら、その趣味は末恐ろしい。


 俺が前助けた時にはそんな素振り見せなかったんだけどなぁ。


 もしかしたらオレはとんでもない逸材を助けてしまったのかもしれない。


 そうだとしてももはや後の祭りなので、オレはただ黙ってその様を眺めていた。




ここまでお読みいただきありがとうございました!


「面白そう・面白かった」

「今後が気になる」

「キャラが好き」


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