第4話 嫌な予感しかしませんが
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「んっ……」
オレが目を覚ますと外は暗くなっていた。
宿に着いたのは昼間だったはずだから、随分と寝てしまったようだ。
歩き続けて疲れていたのだろう。
オレの体は柔らかい布団に包まれていた。
横を見れば低いテーブルの上に書置きがあった。
“ゆっくりとお過ごしください。こちらの料理はお召し上がりくださいね。
私は調査に行ってまいります。夜には戻る予定です リューナ”
書置きの横にあるカバーを開けるとテーブルの上には数品の料理があった。
野菜の煮物に粥、そして蒸し鶏。
全て胃に優しいものだ。
旅をしてきたオレにとってはそれがありがたい。
手を合わせて口に含む。
ジュワリとしみ出す深い味わい。
オレはしばらく無心で食べ続けていた。
◇
「御馳走様。……さて」
オレは料理を全て平らげ、書置きにお礼を書いておく。
十二分に休めたし、腹もふくれた。
となれば後はスローライフのための資金を集めるとするか。
リューナさんは宿代は必要ないと言っていたが、何日か厄介になる以上そうもいっていられない。
風呂付の個室の宿など、一日一体いくらするのだろうか。
オレの手持ちでは少し心もとないと思う。
そのためにもこの町のギルドに行く必要があるだろう。
オレは軽く身支度をすると外へと出て行った。
「と出てきたはいいけど、この町のギルドってどこだ?」
右を見ても左を見ても似たようなレンガ造りの街並みが続き、どこに何があるのかなんてわからない。
さらに周囲は薄暗く、店なのか家なのかすら分からない。
看板とか出しておいてほしいところだ。
「まあいっか。適当に進めばなんかそれらしい店があるでしょ」
オレは勘を頼りに歩き出した。
それを激しく後悔したのは十数分後のこと。
「ま、迷った。これ完全に迷った」
オレは何やら雰囲気の悪い路地裏のような場所にいた。
絶対に普通に歩いていたら通らないような狭い道だ。
奥には蹲るようにして寄り集まっているような人影が何個か見て取れる。
関わると絶対にろくなことにならないやつだ。
こんなところ早いところおさらばしなければ。
くるりと方向転換をした時、横の細道の方がにわかに騒がしくなる。
「まてやこらぁ!!」や「どっちにいった!?」など、何かを追っているような複数の男たちの声が聞こえてきた。
うーん。これは……。
嫌な予感しかしない。
出来ればこちらに来てほしくない。
だってオレ巻き込まれ体質だし。
近くに寄れば高確率で面倒ごとに巻き込まれる。
そういう体質なのだ。
よおし、早く逃げよう!
オレは一目散に細道を駆け抜けていく。
大通りが見えた。
――どんっ!!
「!!?」
ふいに横からの衝撃に襲われた。
何かがぶつかってきたのだ。
オレとその影はもつれあうように転ぶ。
オレはとっさに受け身をとって着地する。
だがぶつかってきた影はピクリともしなかった。
当たり所が悪かったのだろうか。
「え、ええ~? ちょっと大丈夫?」
「うっ」
影はぼろを着た少女のようだが、栗色の髪の上には白い大きな耳が生えていた。
獣人、というやつだろう。
というか、いかにもな展開と人選と身なりだな。
絶対これリューナさんが言っていた奴隷商から逃げてきた獣人さんだよ。
オレは白目をむいた。
また巻き込まれた。
獣人さんは見た所十一,十二歳程度で真っ白でふさふさな耳と尻尾が付いている。
その首には首輪のようなものが付いておりちかちかと光っていた。
なんの装置だろうか。
嫌な予感しかしませんが。
じっと見ていると彼女は意識を取り戻してオレを見る。
目が合ったと気が付いた時には既に腕を握られた後であった。
「お願い! 助けて!!」
で、出た~~~~。
もう確定だ。
今後の展開が見て取れる。
「助けてって……」
「追われているの!」
少女は必死な形相でオレに懇願してくる。
「お願い! 匿ってくれたらなんでもするですよ!」
少女の金色の瞳が不安げに揺れた。
そんなことを突然言われても、オレにはどうしようもないのだが。
オレはまた白目をむいた。
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