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第2話 ど、どこから取り出しとるんじゃー!!

数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!


 


 結論から言おう。


 オレが妄想していたことは全くされていなかった。

 聞けばリューナさんの得意とするクリーン魔法で身の汚れなどを取り払ったのだそうだ。


 一人で盛り上がって一人でがっかりしていたようだ。

 やだ、すごく恥ずかしい。


 良かった、声に出していなくて。



「……それで、この馬車はどこに向っているの?」


 オレは気恥ずかしさを悟られないように努めて冷静を装った。


 馬車の奥には先ほどまで膝枕をされていたソファが置かれており、今はそこに二人で座っている。


「はい、ヴォン様の目指している地、サフランです。私どもはこの地にも根を張っている途中ですの。それで他の国と行き来しているときにヴォン様を拾ったのです」


「それは本当にありがとう」


 心の中でもお礼を言った。


「ん? リューナさんが出てきたってことはサフランには何かあるの?」


 いつもであればリューナさんの部下たちが動くはずであるのに、ギルドの長であるリューナさん自身がきている。


 オレには純粋に疑問だった。



 リューナさんは優しく微笑みながら口を開いた。


「『サフラン』は『オリヴィエ』にほど近く、流通の栄えている街です。流通が栄えているということは様々な国の噂や情報が入ってきますので。それに……」

「それに?」


 リューナさんは少し間をおいてから声をひそめて話し出す。


「……表向きは健全なあきないばかりですが、裏では奴隷の密売やオークション、それから非合法的なあれそれが行われているようなのです」


「奴隷?」


 ゲームの中では聞き馴染みのない単語だ。

 奴隷制などあっただろうか。


「先行した手の者からの情報ですので、まず確かかと。そういうアングラな輩はいろんな情報を知っているはず。ですから吸収できそうなら吸収して組織化してしまおうと思いまして」


 なるほど。着実にリューナさんの情報ギルドは勢力を増しているというところか。

 組織の為にいろいろな国に飛び回れるとはすごいな。


「そうして手に入れたすべての知を我が主、ヴォン様のために!!」


 違った。オレの為だったようだ。


 リューナさんの眼は燃えていた。

 いきなり着火したが大丈夫だろうか。


「おおう。いやありがたいけど、ほどほどにね?」


 オレは苦笑いを零した。



「あ、そういえばヴォン様」


 突然着火した彼女は突然鎮火した。

 理性を取り戻した黄緑色の眼がこちらを振り返る。


「もしかしてシャーリー村でお力をお使いになりました?」

「え、なんでそれを?」


 オレはドキリとする。

 唐突に切り出された話題は、アレクの両親を蘇生そせいした村の話だった。


「やはりそうなのですね。……三日ほど前からシャーリー村付近に『死期が近くなると【死神】がやってくる』という噂が立っておりまして」

「死神……」


 確かに力を使った時、人目に付いたのは間違いない。

 だがあの後きちんと能力を解除したので実際にアレクの両親が蘇ったところを見た者は少ないはずだ。


 それでも噂になってしまったのか。


 ある程度は仕方がないと思っていたが、随分と尾ひれがついて出回ってしまったようだ。


 それにしても、本来やったことからだいぶ離れているな。

 なにより不本意なあだ名をつけられてしまった。


 オレは不服だった。

 誠に遺憾いかんの意である。



「はい。ヴォン様本来のお力とは異なるものですが、一応ご報告をと思いまして。どこからヴォン様のお力のことがばれるか分かりませんので、そちらの噂はすぐに収束させる手配はしてあります」


「ええ? そんなことできるの?」

「お忘れですか? 我らはアレーンの末裔ですのよ」



 そういえばそんなことも言っていたな。

 確かアレーンとは洗脳や催眠を得意とする精霊だったか。


 ……何をどうするつもりなのか、怖いから聞かないでおこう。



「ところで、もうそろそろサフランに着きますわ」

「え、本当?」


 オレは荷馬車の窓から外を見る。

 遠くにレンガ建ての建物が見えた。


 あれが、サフランの町――。


「結構大きいね」

「ええ。オリヴィエからの旅人などが大勢来るため宿もたくさんあるのですよ。……そうだヴォン様。宿泊はぜひこちらをお使い下さい」


 そういい彼女は一枚のチケットを胸元から取り出した。


 ど、どこから取り出しとるんじゃー!!


 オレはなんとなく見てはいけないような気がして目を反らした。


「それは?」

「私どもの運営する宿の特別な券です。ヴォン様には特別な部屋をご用意してありますのよ。もちろんお代などいりませんわ!」


 それは嬉しいが、手に乗せてくるチケットがほんのりと生暖かい。

 そっちに意識が言ってしまってほとんどの内容を聞き流してしまった。


「そのまま向かいましょうか?」

「うん……」

「本当ですか!」


 その勢いのまま頷いてしまった。

 まあリューナさんが嬉しそうだから良しとするか。


 オレ達は馬車に乗ったまま門を潜り抜けるとサフランの町に入っていった。




ここまでお読みいただきありがとうございました!


「面白そう・面白かった」

「今後が気になる」

「キャラが好き」


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皆様から頂いた時間や手間が作者にはとても励みになりますので是非とも!宜しくお願い致します!!

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