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第16話 本当にいいんだね?

数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!

3章完結です!

是非楽しんでいってください(*´ω`*)

 


 雨の中をオレ達はアグニルに乗って移動していた。

 外套がいとうを深くかぶってアレクの両親が待つ村へ。


 一刻も早くつかなくては。



「もうつくよ!」

「ああ、ここからは足で行こう」


 アグニルのおかげで人の足で行くよりもはるかに早く村に着いた。

 時刻は夕方。


 まだ埋められていないはずだ。


 アレクの案内の下、村の中を駆け抜ける。


 ――バンッ


 突き当りにあった家のドアを勢いよく開く。



 その中には数人の男達がベッドを囲んで何かを準備していた。


「アレク! お主今までどこに行っていた!?」


 オレたちに気が付いた一人の男がアレクに近づき声を上げる。

 怒りと悲しみの織り交ざったような声だ。


「ちょっとどいて! 通して!!」


 アレクが珍しく声を荒げて叫んだ。


「待て。お主も悲しいのは分かるが、もう」

「違う! いいからどいて!」


 アレクを止めていた男はアレクを悲し気に見つめてから他の男達を率いて家の外へと出ていった。


 その際、外套を深くかぶったオレのことをぎろりと睨んでいた。

 どこからどう見ても怪しい風体のオレを警戒しているのだろう。


 それも仕方がないことだ。


 オレはそう割り切ってアレクの両親のもとに進む。


「アレク、本当にいいんだね? 起こしたところで両親に意識がある可能性は低い」

「うん。分かってる」


 今までの経験上、キョンシーになった死者たちには彼らの意識というものが残っていない。

 生前の記憶もないのだろう。

 それに、言葉を発さない場合もある。


 オレの両親だって、今でこそ多少の受け答えは出来ても生前の記憶など持っていない。

 レベルが上がればどうなるのかは分からないが。


 だから起こしたばかりで話せないかもしれない。

 いや、その可能性の方が高い。



 それでもアレクは真っ直ぐにオレを見て頷いた。

 覚悟は決まっているようだ。


「……わかった」



 オレはそう頷くと懐から二枚の札を取り出すとアレクを下がらせる。


「お主!! 何をしている!」


 窓の外から様子を伺っていたのだろう。

 先ほどの男性が焦ったように入ってくるがオレは手を止めない。


『――死せるもの達よ、目覚めの時だ』


 瞬時に紫色の稲妻いなづまが走った。


 家の中はにわかに騒がしくなる。

 バチバチと激しい音と光を出しながら二体の死体を包んでいくモヤ。


 家の中に入ってきた男は遂に剣を抜いた。


「おのれ! そのお方から離れぬかっ!!」

「やめてエドヴィン!!」


 斬りかかって来るエドヴィンと呼ばれた男とオレの間にアレクが立ちはだかる。


「なぜですかっ! ご両親の亡骸なきがらを弄ばれてもよいとおっしゃるのですか!!」

「違うよ!! これは僕が望んだことなの!!」

「何をっ!?」


 そんなやり取りが聞こえた気がするが、気のせいだろう。

 今は集中だ。


 印を結び念を込めると、出ていたモヤを札が吸っていく。

 風が吹く。




 やがてその風が収まったころ、残った札がはらりと落ちた。


 次いで向くりと起き上がる二つの影。

 その影の眼が開いた。


「――アレク。アレクシア」

「ああ、アレクシア」


 優し気な目元がアレクと似ている女性が口を開く。

 次いでガタイの良い男性も声を上げた。


「っな!?」


 家の入口から驚きの声が上がった。


 オレも驚いた。


 ここまではっきりとしゃべるキョンシーは初めてだからだ。

 意識もしっかりしているようだし、きっと死んでからさほど時間が経っておらず、外傷などもないからだろう。


 それにしても、起こすところをばっちりしっかり見られてしまった。



 だが後悔はない。


「お父さん! お母さん!!」


 アレクが両親に飛び込んだ。


 その顔は涙にぬれていた。




 見なかったことにしよう。

 それが彼にとっても一番良いだろうから。


 オレは深く外套がいとうを被り直し、家を出て村の外へ向かう。



 村は紫色の光で騒然そうぜんとしていた。

 ばっちりと見られてしまった以上、ここにはいられない。

 


 オレは急ぎ足で村を後にした。





ここまでお読みいただきありがとうございました!


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