第13話 そうさ、100%善意
数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!
エンディングまで書けたので投稿再開です!!
「―――っは!! ここは?」
目を覚ますと見慣れぬ天井があった。
いや、よく見れば何度か見たことのある天井だ。
そこはオレのとっている宿だった。
「あ、目が覚めたぁ~?」
辺りを見回しているとぎいっとドアが開きアレクが入ってきた。
「調子はどう~?」
「調子……。うん、大丈夫」
オレは何が起きたのか記憶を呼び起こす。
確かアレクとダンジョンを攻略して宝箱をとって、それで……。
ああ、そうか。
オレは要するにグロ注意を久々にみて気絶したのか。
やだああああ。恥ずかしいぃぃぃ。
自分の能力を使って気絶って!!
やだよ~。格好悪いよ~。
格好悪いどころじゃないよ~。
オレは顔を覆った。
どうかそっとしておいてほしい。
「もう~びっくりしたんだよぉ」
アレクはベッドの横にあった椅子に腰を掛ける。
ダンジョンの外にいるということは、アレクが運んでくれたのだろう。
申し訳ない気持ちといたたまれない気持ち重なって、まともにアレクの方を向けない。
「ヴォン、突然気絶しちゃうんだもん~」
「スミマセン」
オレは顔を覆ったままで蚊の鳴く様な声を出した。
ああ、恥ずかしい。
「ううん。気にしないで。それに寝てたのも二時間程度だし」
「本当に申し訳ない」
「いいってぇ。そうだ。ヴォンの分のお金、そっちに置いておいたから確認しておいてねぇ」
「ありがとう」
見れば机の上にふっくらとした袋が置かれている。
あの中に二十五万セレナが入っていると思うと沈んでいたテンションがもとに戻って来るな。
「あ、そういえば。あのウィンドサーバルってどうなった?」
ああ、という声を出してアレクはオレの体を指す。
「ヴォンが気絶したら影に取り込まれていたよぉ」
「oh……」
知らず知らずのうちにちゃんと吸収していたようだ。
それはそれで嫌だが。
「よかったねぇ。戦力が増えたみたいで」
アレクは恐らく善意100%で言ってくれているのだろう。
そうさ、100%善意。
だが、オレは正直複雑だった。
だってオレの中であのグロい再生が行われているということだろう?
嫌すぎるだろ。
オレはチキンなんだ。
痛そうなのも、グロいのも、気持ち悪いのも見たくない。
想像するだけで嫌なのだ。
「はあ~」
「どうしたの?」
「いや。オレこの能力やっぱり向いてないなと思って」
どう考えてもミスマッチすぎるだろう。
こういうのは向いている人間でなければただの苦痛でしかない。
オレはもう一度溜息をついた。
「えー? そうかなぁ。僕はその力を持っているのがヴォンでよかったと思うよぉ」
「なんで?」
純粋に疑問だった。
アレクはそう言ってくれるが、オレは今のところ向いていると思ったことが一度たりともない。
出来れば使いたくないし、早くこんな血なまぐさい生活とはおさらばしてスローライフを送りたいのだ。
「だって、その力を使ってもどうも思わない人だったら酷いことが起こりそうだし、だから僕は力を持っているのがヴォンでよかったと思う」
「……それは、まあ」
「あはは。大丈夫。僕は絶対に他言しないから!」
アレクは両手を胸の前で握ってむんっという顔をしている。
彼なりの励ましなのだろう。
ここは素直に受け取っておくべきだ。
「……ありがとう。おかげでちょっと落ち着いたよ」
「それは何よりぃ!」
アレクは元気いっぱいだった。
「それよりアレク。もうお金はたまったんだし、早く両親のところへ行ってあげな」
「それは、そうなんだけど。ヴォン本当に大丈夫?」
「オレはもう大丈夫だから」
「そう? ……じゃあそろそろ行こうかな」
アレクは名残惜しそうにしていたがやがて腰を上げて扉へと向かっていった。
「ねえヴォン」
「ん?」
アレクはふいにその動きを止めて振り返る。
「僕の両親が治ったらさ、その時はまた会えるかな」
期待と不安が入り混じったような瞳でオレを見つめるアレク。
それが前世の近所の子供に重なって、オレはふっと笑った。
「ああ、アレクが望むなら」
「本当!?」
途端に嬉しそうな顔をするアレクにまた笑みがこぼれる。
「ああ。だから早く親御さんのところにいってやりな」
「うん! 絶対だからね!!」
アレクはそう言い残し手を振りながら出ていった。
「ふうううう」
オレはベッドに寝転んで長い息を吐きだした。
もう恥ずかしさと気疲れで精神面がゴリゴリと削られた。
三十代の精神力があるから耐えられたが、ゲームの中のヴォンだったら耐えられなかっただろう。
いや、オレも堪え切れてはいないが。
窓から見える外の景色は暗くなっていた。
もう夜が来る。
空には分厚い雲が広がっているようで余計に薄暗い。
今日はもうこのまま寝てしまおうか。
うん、そうしよう。
……アレクは雨が降り出す前に村にたどり着けるといいのだが。
オレはそんなことを思いながらベッドに深く潜りこんだ。
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