第11話 うそでしょ。この子純粋すぎ……?
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「はあ、はあ」
「や、やった……? やったっ!! やったよおヴォン!!」
「わっっとと」
アレクがオレの下へと走ってきて飛びついてきた。
オレよりも大きなアレクを支えきれずよたよたとよろけたが、アグニルがいつの間にかオレの後ろに来ていてちょうどクッションの様になってくれた。
ポスンとモフモフに埋もれる。
気持ちがいいが、やはり温かみが欲しいところだ。
「あっ! この子ホーンラビットだよね? 触っていい?」
「ちょ、その前にどいて。苦しいよ」
「あ、ごめん」
今のオレはアグニルとアレクに挟まれた状態で埋もれている。
そんな状態では説明どころではない。
解放されぷはあと息をつきアレクを見れば、アグニルに埋もれたままになっていた。
気持ちはわかる。
もふもふのウサギさんに埋もれたいという気持ちはものすごくよくわかる。
だが今やることか、それ。
「ねえ、ヴォン。大変だ、この子冷たいよ」
ふいに顔を上げたアレクは至極真面目腐った顔でそう口にした。
そりゃあ、死んでいるから。
そう口をついて出てきそうになったがぐっとこらえる。
さて、なんと説明したものか。
「……えーっとね、そういう種類なんだよ」
間違ったことは言っていない。
アグニルは「ホーンラビット」ではなく「キョンシーラビット」だ。
キョンシーもとい死体だから温かくはない。
当然だ。
果たしてこれで納得してくれるだろうか。
……無理すぎるよな。
心なしかアレクも白い目を向けているような気がする。
自分で考えておきながら無理がありすぎた。
仕方がない。本当のことを話すとするか。
「……いや、実はな」
「そうなんだぁ~!」
「いや、納得するんかい!!」
オレは目をぎゅっと瞑って叫ぶ。
しまった。声に出ちゃった。
アレクもぽかんとしている。
だが仕方がないだろう。
オレの中のツッコミ属性がうずいて仕方がなかったのだから。
「ヴォンがそういうのなら僕は信じるよぉ」
アレクは首を傾げながら頭にはてなを浮かべている。
うそでしょ。この子純粋すぎ……?
オレはトゥンクした。
不覚にもキュンとしてしまったのだ。
だって前世から合わせてもオレのことを手放しで信じてくれるなんて言われたことないんだもの。
なんて嬉しいの?
この子はオレが絶対に守る。
オレの中の庇護欲が爆発した瞬間だった。
「オレ、アレクが心配だよ」
「ええ? なんでぇ?」
「……いや、オレが守ってやるからな」
「? 変なヴォン~。でもありがとう~」
アレクは満面の笑みでこちらを見る。
ぐううぅ。
何だ。この可愛い少年。
やめてくれ。三十代(今世も合わせれば四十代)のオッサンにそのピュアさを見せつけるのは。
庇護欲が刺激されて仕方がないから。
オレは心臓を押さえて吹き飛んだ。
アレクは驚き駆け寄ってきてオレを抱える。
「ヴォ、ヴォン~~~!!」
「っく。わが生涯に一片の悔いなし……」
ガクッと腕の力を抜き満足げな表情で目を閉じる。
茶番終了。
「さて、冗談はさておき」
オレはむくりと起き上がると父さんたちにお礼を言って影に収納する。
シュルンと影に入っていく父さんたち。
アレクはそれを黙って見ていた。
「アレク、説明を聞いてくれるか?」
彼は黙って首を縦に振ってくれた。
ならばオレも彼の誠意に応えるべきだろう。
オレは今まであったことを説明する。
両親が死んだこと、「召鬼道士」の力のこと、旅の目的……。
アレクになら話してもいいと思ったのだ。
彼はただ黙って話を聞いてくれた。
時折何度か頷くことは合ってもオレが話し終わるまで決して口を開かない。
「――でオレは両親と静かに暮らしたいから『キリカ』を目指しているんだ」
「……」
話し終わるとアレクの方を改めて向く。
「だからオレの力については口外しないでほしいんだ」
「……」
アレクは無言のままだ。
「……アレク?」
「……」
ずっと無言なのを不思議がって彼の顔を見れば、頭から煙が上がっていた。
「ええ!? あ、アレク!?」
「……」
あ、ダメだ。
これ何も分かっていない顔だ。
オレは直感的にそう感じた。
「アレク? アレクー!? し、死んでる……」
「生きてるよ!! 勝手に殺さないでぇ!!」
「あ、生きてた」
彼は生きていた。
何だ、焦ったじゃないか。
「ええと、何から聞けばいいのか分からないけど……」
数分後再起動したアレクは頭を押さえつつ何とか話をかみ砕こうとしている。
「つまり、ヴォンは死者を蘇らせる力を持っていてそれが「召鬼道士」っていうジョブで……?」
「うん」
「両親をそれで蘇らせたらグロッキーだったからリカバリーを目指していて?」
「うんうん」
「そのために冒険者として稼ぎながら住みやすい場所を探している、と?」
「その通り」
オレの目的は大体それです。
アレクは頭から煙を出してはうんうんと唸っているが大体合っている。
ボンっという音と共にアレクが白目をむいた。
どうやらキャパシティーをオーバーしたようだ。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないよぉ。どこをどう見たら大丈夫だと思うのぉ?」
「ははは」
「はははじゃない~」
オレとしては笑うしかない。
ははは、こやつめ、ははは。
「まあでも、ヴォンがその力を悪用しようとしている訳じゃないっていうのはよぉーく分かったよぉ」
じゃなかったら僕に話す必要なんてなかっただろうし、と続けるアレクは既にいつもの笑顔に戻っていた。
「じゃあヴォンのご両親に挨拶しないとね!」
「え?」
「え、じゃないよ。パーティー組ませてもらっている以上、挨拶するのは当然でしょ~?」
「そ、そうかな?」
「そうだよぉ」
そうなのかな? そうかも。
オレはなんとなくアレクに押し負けて再び両親を呼び出す。
「じゃあ紹介するよ。こっちが父さんでこっちが母さん。それにホーンラビットのアグニル」
「アレクです! よろしくお願いします!」
当然それに対する返答はない。
まだ会話するほどの能力が備わっていないからだ。
ところがアレクは気にするそぶりもなく両親の手を握って振り回している。
いくら体の損壊とか腐りが治ったとはいえ死体に平然と触れることができるところを見る限り、アレクは大物なのだなぁ(小並感)。
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