第7話 日本人だもの
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「ああ、酷い目に遭った」
オレはぐったりと机に突っ伏していた。
オレとアレクは一緒に食事をした食堂にやってきている。
あのオッサン事件の後、オレは用心棒にこってりとしかりつけられた。
あわや冒険者カード取り上げというところまで行ったが、途中でやってきたアレクが証言してくれたおかげで何とか取り上げにはならずに済んだ。
「ほんと、助かったよアレク」
「あはは~気にしないでぇ」
オレは改めて目の前に座るアレクを見る。
ストレートの金髪に青い瞳、そして行動までイケメンとは恐れ入る。
これがこのまま大きくなったらとんでもないイケメンが爆誕してしまうだろう。
ちょっとばかし抜けた所があるが、そこはご愛嬌というやつだ。
「それにしても、本当に僕とパーティー組んでもよかったの? ヴォンくらい強いんだったらもっといいパーティー組めたと思うけど」
「ん? ああ。いいんだよ別に。オレはソロでやってきたし。それに到着早々騒ぎを起こしたオレみたいなやつと組みたがる奴なんてそうそういないって」
「そうかなぁ?」
そうなのだ。
オレは助けられた礼としてアレクと数日パーティーを組むことになった。
パーティーといっても二人だけだからコンビと言った方がいいかもしれないが。
オレはアレクに助けてもらったお礼をしたい。
対するアレクはより多くの報酬が貰えるモンスター討伐に行きたいと思っていたらしく、二人の意見がそこで合致したのだ。
「ところで、なんでアレクはモンスターの討伐に出たがっていたんだ?」
モンスターの討伐は報酬も上がるが採取の依頼よりも危険度がぐんと上がる。
冒険者が自分の力を過信して死ぬことだって珍しくない。
ハイリスクハイリターンな職業である。
正直に言ってアレクの様にぽわんとした人には向かない職業だ。
「うーんとね、どうしてもお金がいるから」
「金が?」
「そう。僕の両親がね、病気に掛かっちゃって、それを治療するのに普通の仕事じゃあ間に合わないって」
「あ……」
そう言って微笑むアレクはどこか寂しげだった。
この世界には、やはり衛生面で問題がある。
前世ではただの風邪だったものでもこの世界では命を落としかねない脅威なのだ。
それに今は謎の呪いのようなものも流行っているようだし、アレクの両親もそうなのかもしれない。
貴族や豪商などの人間なら神殿に行き治療することで事なきをえるのだが、それがまた莫大な費用を必要とする。
平民には払えない者が多く、神殿の治療を受けられずに闘病する者が大半だ。
アレクもそうなのであろう。
だから普通の平民よりも稼げる可能性のある冒険者となって頑張っている、と。
「……変なこと聞いてごめん」
無神経な質問をしたことを謝罪した。
「全然平気だよぉ! むしろそんなことが気になるなんて、ヴォンは面白いね!」
「そう、そうかな?」
「うん! でも僕は好きだな!」
「あ、ありがとう」
アレクは随分と素直だ。
素直に褒めてくるから、なんだか照れくさい。
それに前世でもこんなふうに褒められることなどほとんどなかったからくすぐったく思う。
そこっ!!
憐れんだ目をしない!!
しょうがないじゃんか。
日本人だもの! 海外の様に素直に褒めてくれる人ってほとんどいないだろうがよ!!
「でも本当に良かったの? 僕の目標金額に達するまで付き合ってくれるって……」
それかけた思考の中、アレクが心配そうに声を上げた。
「確かヴォンの目的は『キリカ』の街なんだよね?」
「ん? ああ。そうだけど急いでいる訳じゃないし、オレも旅立つ前にお金を溜めておかないといけないし」
アレクの目標金額は思ったよりも多くはなかった。
たぶん今まで地道に採取をこなしていたのだろう。
目標はおよそ十五万セレナ。
一回神殿で治療を受けるには五十万セレナかかるらしい。
ちなみにこの世界の通貨は“セレナ”。
前世の日本円=セレナという感じだ。1円=1セレナ。
つまり一回治療するのに五十万円ということだ。
高い。あまりにも高すぎる。
この世界の平民の一か月の給料が平均で二十万セレナなので二ヶ月半の給料が飛んでいく。
それも一人につき。
病に倒れたのが二人なら合計百万セレナ必要だ。
えらいこっちゃである。
そんな大金をこんな子供が一人で冒険者になってまで稼ごうとしている。
もう涙を禁じえなかった。
オレができることはしてあげたい。
そんな思いを込めてアレクを見ると、彼は安心したような笑みを見せた。
「そっかぁ。じゃあお言葉に甘えてつきあってもらおうかな」
「うん、改めてよろしく」
握手の為に伸ばした手をしっかりと握られる。
「うん、こちらこそ!」
「さーて、それじゃあ明日から頑張るためにしっかりとご飯を食べてよく寝る様に!」
「わーい! 僕ももう腹ペコだよ!」
こうして期間限定のコンビが出来上がった。
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