第6話 一回転、二回転、三回転!! そして華麗にゴールイン!!
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あ。ギルド内で抜きやがった。
オレは他人事の様にそう思った。
ギルドでの私闘は基本禁止されている。
血気盛んな奴らが多いからだ。
当然そんな奴らが集まれば小競り合いが生じる為、よっぽどのことがない限り取り締まれることはない。
だが、武器の使用はご法度。
抜いた瞬間に厳罰に処される。
オッサンが剣を抜いたことで、ギルド内は騒がしくなる。
奥の方ではギルド員がバタバタと慌てた様子で外へと出ていった。
恐らく用心棒でも呼びに行っているのだろう。
だが残念なことにそれでは間に合わない。
今まさにオレへと振り下ろされる剣。
他の冒険者たちは棒立ちになっており、誰も助けに向おうというものはいない。
いや。オレの視界の端、アレクだけは顔を青く染めてこちらへ向かおうとしてくれている。
ああ、やっぱりいい子だな。
オレは変なところに感心して笑ってしまった。
オレは笑顔のままで振り下ろされる剣を避けるとそのままの勢いで突っ込んでくるオッサンを遠心力で投げ飛ばした。
――ガアアアン!!
オッサンは宙を舞った。
言葉の綾じゃなくリアルに宙を舞った。
一回転、二回転、三回転!!
そして華麗にゴールイン!!
オッサンの華麗な舞いはギルドの入口まで続き壁に叩きつけられ、さらに運のないことに雨もれを受けていた桶に顔を突っ込んで止まった。
オレの下には避けた拍子に床に刺さった剣がそのまま突き刺さっており、ものすごい勢いで飛んで行ったオッサンは桶に顔を突っ込んだままピクリともしない。
ブクブクという音がギルド内に響く。
おい、誰か引き上げてやれよ。死ぬど。
……というか、あれ?
そんなに強く投げたつもりはなかったんだけど。
ちょっと待って。
あれ、あれれ?
ギルドはシンと静まり返る。
オレは冷や汗が背中を伝ったのが分かった。
……もしかしてまたやっちまった……?
今の力は明らかにオレの地の力じゃない。
ヴォンはそんなに力持ちではないのだ。たぶん。
それじゃあなんでオッサンがあんなにも飛んだのか。
考えられることと言えば、オレの「召鬼道士」の力が強まったこと。
もしかしたら影にいる父さんたちの力がオレに還元されているのかもしれない。
要するに父さんたちの力強さとかがオレの体に集約されているとか、そういう感じのあれか?
いろいろ考えたいところではあるが、今はそれどころじゃない。
どうにか言い訳を考えなければ。
「えええーっと……。今のはほら! 正当防衛だからセーフ、だよね? 先に手を出してきたのはあっちだもんね?」
オレは周りを見回すが、困ったことに誰も目を合わせてくれない。
なんだよ寂しいじゃないか。
こういう時こそ助け合いだろ!?
全力でオレは関係ありませんよって態度はどうかと思うんだよね。オレは。
だって君達、子供のオレが襲われてるってのに誰も助けようとしなかったじゃないか。
え? 何?
都合のいい時だけ子供になるな?
うるせ~~~~~!!!
オレは子供なんだ!
だから誰か助けてください! お願いします!!
オレは次々と流れ出す汗で柔らかい髪の毛を湿らせる。
「す」
「す?」
近くまで来ていたアレクが声を上げた。
心なしか、目が輝いている。
「すごぉーい!! ねえ! ねえねえ!! どうやったの今の!!?」
アレクは両腕を振り回して興奮している。
どうやってやったのかはオレも知りたい。
というか、いい加減にオッサンを引きあげてやらないと、本当に死ぬど。
「どけどけ。どこだ乱闘した奴は!」
俄かに入口付近が騒がしくなる。
どうやら用心棒が到着したようだ。
あ、オッサン引き上げられた。
良かった。むせているし、息はあるみたいだ。
と安心したのもつかの間。
用心棒がオレの下へと真っ直ぐにやってきた。
見ればギルド内の皆がオレのことを指さしている。
誰が乱闘したのかに関しての答えだろう。
こいつらオレのこと売りやがった!!
許さないからなぁ!!
お前ら絶対に許さないからなぁーーーー!!!
その叫びを残してオレはギルドの奥に連れていかれたのだった。
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