第2話 オレが弱いとかそういうあれじゃないよ
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「はぁーい! とうちゃーっく!!」
オレはアレクに道案内をされながら大きな街にやってきた。
砂漠の中のオアシスのような場所だ。
それに冒険者の姿が非常に多く、それを狙った商人なども集まっているようで随分と活気がある。
「へえ~! 随分と賑やかだね」
「そうだね~。ここはずっとこんな感じだよ~。あ、でも最近は特に活気があるかなぁ~」
「ん? なんで?」
「なんかねぇ、魔王が目覚めたとかで各国から腕利きの冒険者が集まってるみたいなの~」
「ま、魔王!?」
大ニュースではないか。
少なくともそんなポヤポヤしながら話すようなことではない。
オレは思わずアレクをまじまじと見てしてしまう。
彼は相変わらずぽやんとしながら話を続けた。
「そうなんだよねぇ。まあ、僕みたいな冒険者にはあんまり関係のないことだよ~。僕みたいなのが魔王相手にどうこうできることがあるとは思えないし。あっはは」
それは……まあ。
アレクが魔王と対峙している場面を思い浮かべて首を振る。
どう考えても一瞬で終わりだろう。
そもそも魔王にすらたどり着けないと思う。
ごめん。
失礼なことを考えた。
「そ、それよりさ! 道案内してもらったお礼にご飯でも奢らせてよ!!」
オレはなんとなくいたたまれなくなって話題を変えた。
ずっと歩き続けて腹も減っているし、ちょうどよい。
オレの提案にアレクは目を輝かせた。
「え! いいの!?」
「もちろん! あのままだと永遠に砂漠をさまよってたと思うし。……あ。ただオレこの街は初めてだからいいご飯屋さんとか知らないんだけど、どこかいい場所ないかな?」
手持ちのお金はまだ十分にある。
アレク一人分の食費が増えた所で問題はないだろう。
「じゃあ僕がいつも行ってるお店があるからそこにしよう」
そう言うが早いか、アレクはオレの手を引いてウキウキと歩き出した。
今度は転ばなかった。
「ここだよぉ!」
アレクに連れられてやってきたのはそこそこの大きさの食堂だった。
中は大勢の冒険者であふれていて大変繁盛している様子だ。
「おや、アレク! 今日も来たのかい!」
入口で止まっていると中から女将さんと思われる女性がやってきた。
アレクとは顔見知りのようだ。
「って、なんだい? 今日は友達と一緒かい」
「うん! さっき知り合ったんだぁ」
「そうかい! 友達ができて良かったね!!」
「うん!」
女将さんはオレとアレクを交互に見ると声を上げて笑った。
というか友達認定されていたのか。
まあ、悪い気はしないからいいが。
「さ、そこの席が空いてるから座っておくれ」
「うん!」
俺たちは壁際の二人掛けの席に座った。
女将さんが水とメニューを持ってきてくれる。
さて、腹ペコだ。
何を食べようか。
暴れ牛鳥の腸詰も美味しそうだし、ステーキも捨てがたい。
スープには野菜たっぷりのポトフでも頼もうか。
オレはメニューにくぎ付けになった。
って、いけない。
つい夢中になってしまったが、今はアレクへのお礼が先だ。
「アレクは何食べるか決まってるの?」
さっきからオレばかりがメニューを見ていてアレクはそれをニコニコと見ているだけだ。
「僕は決めてあるよ~」
「そうなのか? じゃあ店員さんを呼ぼうか。……すみませーん!」
先ほどの女将さんが出てくる。
オレはせっかくなのでステーキも腸詰も両方頼んだ。
一方のアレクは一番安いパンとスープだけ頼んでいた。
「え? そんなのでいいの?」
「うん。僕いつもこれなんだぁ」
育ち盛りの子供だろうに。
もっとしっかりしたものを食べないと大きくなれないぞ。
「別に遠慮なんてしなくていいんだよ? 今日はお礼なんだし」
「そうさね! いつもそればかりじゃ体に悪いっていうのに」
女将さんも心配そうにアレクを見ている。
「う、うーん。でも悪いし」
アレクは気まずそうに眼を逸らす。
子供が遠慮をすることなどないというのに。
前世では近所のガキどもにはよく駄菓子をせびられて買ってあげていた。
それどころか、公園のハトとかカラスにも食い物を取られたりしていた。
……あいつら、なんであんなに強かなのか。
違うよ? オレが弱いとかそういうあれじゃないよ?
それはそうと、アレクはあいつらくらいのがめつさを持ってもいいと思う。
「アレク。オレは本当に助かったと思っているんだ。だから遠慮せずに好きなものを食べてほしい」
「本当にいいの?」
「もちろん!」
「じゃ、じゃあ……」
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