第1話 ズザアアアア
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イプケアを出てから一週間がたった。
その間ずっと歩き続けて旅をしてきたがまだ次の街は見えてこない。
進む道は乾燥がさらに進み砂漠のようになっている。
ずっと同じような景色で、気を抜くと進んでいる方向が分からなくなってくるのでなるべく早く抜けてしまいたいところだ。
「あれ?」
砂漠の中に人影を見つけた。
しゃがみ込んで何かをやっているようだ。
近づいてみる。
オレと同い年くらいの少年だった。
剣を背にかついでいるところを見ると剣士だろう。
彼もオレに気が付いたようで手を振ってくれる。
「こんにちは~!!」
「こ、こんにちは」
「旅の子かな? どの街に行くの?」
少年は顔をぱあっと輝かせるとオレのもとまで走りだし、転んだ。
砂のズザアアアアっという派手な音が聞こえる。
「ええ!? ちょ、大丈夫??」
「あはははは、また転んじゃったぁ」
少年はむくりと起き上がると大笑いしている。
随分と変わった子だ。
オレは少年に手を貸し立たせる。
少年は素直に立ち上がりついてしまった砂を払っている。
「あはは、恰好悪いところ見せちゃったね。僕はアレク。よろしく~。君は?」
「ええ、と。オレはヴォン。イプケアの先の小さな村から旅をしてきたよ」
アレクと名乗った少年は砂汚れは目立つし線が細かったが、金髪に碧眼というイケメンにだけ許されるような風体をしていた。
アレクはまだ成長しきっていないあどけない顔で不思議そうにこちらを見ている。
「イプケア? 聞いたことのない町だね。まあ僕が知っていることなんてほとんどないんだけど~。あはは。それよりさ、どこに行くつもりなの~? 案内できるかもしれないよ~!」
「えーっと、一応『キリカ』って街を目指しているんだけど知っているかな?」
オレの今の目的地は砂漠を抜けて何個か街を通り過ぎ、国を越えた先にある四季の街「キリカ」だ。
何故そこを目指すかって言われたら、そりゃあ日本人だから四季がある場所の方が住みやすいに決まっている。
まだまだ目指す場所は遠いだろうが、生前とほぼ変わらない暮らしができるのならば向かわない手はない。
そのためにもまずはこの先にあるはずの「サフラン」という街を目指す。
そこで旅に必要なものを買い足し、次の街また次の街へと向かう、という算段だ。
「ええと、『キリカ』を目指すんだったらもっと南に向かわないといけないよ~。進行方向的には真逆かな」
「何だって!?」
おおふ、どうやら道を間違えてしまっていたようだ。
迷子といっても差し支えないだろう。
道理で進めど進めど街が見えてこないわけだ。
辺り一面砂ばかりの景色では進むべき方角が分からなくなってしまうというのは本当のようだ。
おかしいな。ずっと真っ直ぐでつく予定だったのに。
不味い、不味いぞ。
サフランには一週間程度で着く予定だったから食料の備蓄がない。
あわわわわ。はわわわわ。
「……もしかして迷子かな?」
プチパニックを起こすオレをアレクはニコニコと見ていた。
「う~んそうだな。僕もちょうど依頼品を採り終わったところだし、一番近くの街までなら送ることができるけど、どうする?」
「依頼品ってことはアレクって冒険者なの?」
「うん、一応ね~。と言っても採取とかしかやっていないんだけど」
アレクは転んだ拍子に投げ出されたかごを拾い上げると、あっちと指を指す。
その方角を見ると、蜃気楼の中にうっすらと建物が見えた。
向っていた方角とは違う方向にあったので気が付かなかった。
なんだかオレ一人だったら永遠に目的地にたどり着けないような気がする。
もしかしてオレって方向音痴だったりするのかな?
いや、そんなことないはずだ。
……けれどここは素直に案内を受けたほうがいいだろう。
「ありがとう。 じゃあお願いしようかな」
「はぁーい。了解だよ! じゃあ時間もそんなにないことだし、早く行こうか~!」
アレクはくるりと向きを変えて一歩目を踏み出して、転んだ。
ズザアアアア。
「ええ!?」
なんでだ。
転ぶ要素などなかっただろう。
困惑するオレをよそにアレクはむくりと起き上がって笑う。
「あっははははは。また転んじゃった~」
何というか、どうにも心配だ。
このまま彼に道案内を頼んでも良いのだろうか?
そんなオレの不安をよそにアレクは意気揚々と歩き出した。
オレは仕方なしに後に続いた。
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