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閑話2 第二級キョンシー

数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!

間話2話目です!

お楽しみいただけると嬉しいです♪


 


 オレは「イプケア」の町を出て野宿をしていた。

 何故かというと、山賊の一件でオレのランクがBランクにまで上がってしまったからだ。


 冒険者登録をしてから最速レベルでランクが上がっていくオレはあの町ではもはや注目の的になってしまった。

 何をしていても周囲の目が集まるのである。



 オレ的にはたくさんいるモブの中の一人っていう位置に居たかったのだが、どうにもこうにも目立ってしまってそんな位置にはいられなくなってしまったのだ。


 目立つのは困る。

 オレの目標は風呂付の家で健康で文化的な最低限度の生活を両親と共に送ること。


 つまるところ目立たないところで穏やかに暮らしたいのだ。



 ……まあ、全部オレが招いた結果なので誰にも文句は言えないのだが。


 もちろんオレの通り名とか本当にあったことは伏せている。


 そんなもんが伝わってしまえばオレ自身が異常者として討伐対象になってしまうのだからな。


 あっはっは。冗談じゃない。




 というか、本当にオレ自身にBランクの実力があるのか、少し心配だ。


 オレは「召鬼道士しょうきどうし」の術者だからこそ死体を蘇らせて山賊を打ち取れたが、オレ個人であったのならば山賊は倒せたかどうかは微妙なところだ。



 うーん、クロスボウと神通力で何とか、なるかなぁ?



 まあ過ぎてしまったことは仕方がない。

 今後はオレ自身の力ももっと鍛えるとしよう。




 オレはシートの上に座り、町で買っておいたパンと干し肉をかじる。


「うーん。やっぱり日本食食べたいなぁ。毎日パンだと飽きるというか」


 道中の食事は基本的に保存の利く固いパンや干し肉が主流だ。

 この世界に和食があると言っても、旅の食事には向かない。


 早いところ良い場所を見つけて住めるようしなければなと思う。


 やはり元日本人にとって和食は魅力的すぎるのだ。


 オレは決意を新たにした。




 火の始末を終えたオレは辺りを警戒しながら影に潜む死者たちを呼んだ。


「父さん、母さん、アグニル」


 月明かりに照らされたオレの影はそれに呼応するかのように形を変えた。

 這い出てくる三つの影。


 それはやがて二人の人影と一体の獣の姿に変わった。


「うーん、やっぱり」


 オレはしげしげとその三体を見る。


 山賊の一件で変わったことが二つあった。

 一つはオレの冒険者ランクの変化。


 そしてもう一つが死体たちに現れた。



 なんと!! 両親やホーンラビットの体が再生したのだ!!


 最初は見間違いかと思ったが、今見てみても父さんたちに腐っているところは見当たらない。

 酷い臭いもしないし、見た目も全体的に青白いことを覗けば普通の人間に見えなくもない。


 ホーンラビットにしても欠損部が修復されて元の大きなうさぎさんになっているではないか。


「わーい! もふもふだぁ!!」


 オレはアグニルに埋もれた。


 人一人くらいの大きさのうさぎさんだぞ? やるしかあるまい。


 あ、アグニルとはビリーベアに食われていたホーンラビットの名前だ。

 せっかくなので変な名前で登録される前にオレが名付けた。



 オレは気がすむまでアグニルをモフる。

 顔をうめて抱きしめた。


 うーーん、冷たい!!


 其処はまだ死体のままなのか。

 まあ確かに死んでいるのだから体温などないだろうが、獣の温かさがないと少し寂しい。


 前世の実家で飼っていた柴犬のコロのことを思い出してしまい、少し泣いた。



 というかこんなことをしている場合ではないのだ。

 誰だモフるとか言った奴。


 オレだよ。

 すみませんねぇ。ストッパーがいないとすぐに脱線してしまうんで。



「ステータスオープン」


 オレはオレにツッコミを入れながら両親とアグニルのステータス画面を表示する。


 《名前:父さん(アグナー)》

 主人:ヴォン

 種族:キョンシー(第二級)

 レベル:19

 称号:固い死体

 固有スキル:なし


 HP:128

 MP:11

 攻撃:47

 防御:51

 俊敏:5



 《名前:母さん(エルダー)》

 主人:ヴォン

 種族:キョンシー(第二級)

 レベル:18

 称号:固い死体

 固有スキル:なし


 HP:117

 MP:73

 攻撃:38

 防御:32

 俊敏:9


 《名前:アグニル》

 主人:ヴォン

 種族:キョンシーラビット(第二級)

 レベル10

 称号:なし

 固有スキル:脱兎


 HP:63

 MP:31

 攻撃:20

 防御:15

 俊敏:42



 ツッコミたいところはいろいろあるが、とりあえず山賊たちのおかげで皆のレベルがのき並み上がった。


 どうやらオレが使役する死者たちは仲間認定されているようで、一体で倒しても複数で倒しても経験値は山分けされるシステムらしい。



 父さんやアグニルはともかく、母さんには生存者を守ってもらっていたから母さん自身が倒した山賊はいないはずだ。


 それなのにレベルが父さんと同じくらい上がっている。

 つまりはそういうことである。



 村人がほうむった山賊の経験値が全て山分けされたのか、人間の経験値が美味しいのか、それは分からない。


 分かりたくもないが。



 そして最も注目すべきは皆の種族がキョンシー(第一級)からキョンシー(第二級)へと変わっていることだ。


 恐らくこれの影響で体の腐敗や欠損が治ったのだろう。

 詳しいことは分からないが。


 腐敗と欠損が治るのならば細かいことなどどうでもいい。

 ようやく、ようやくR18Gとおさらばだ!!


「いよっし!!」


 オレは嬉しすぎて小おどりした。

 両手を上に突き出しけつをうねらすという、奇妙な踊りになった。



 だがそんなこと今のオレにはそんなこと気にならない。

 グロ耐性のないオレにとっては何よりもうれしいのだ。


 今までは蘇らせたはいいが、心から喜べなかったから余計に。

 ようやく生前の父さんと母さんに会えた。


「父さん!! 母さん!!」


 オレはこうして三年と数か月ぶりに両親を抱きしめることができた。


 まだ父さんたちに意志があるのか確認できていないが、今だけはこの時間をかみしめよう。


 周囲に人の気配はない。


 オレはこみ上げてくる涙もそのままに二人に抱き着いて嗚咽おえつをこぼした。




ここまでお読みいただきありがとうございました!


「面白そう・面白かった」

「今後が気になる」

「キャラが好き」


などと思っていただけた方はぜひともブックマークや下の評価機能(★★★★★が並んでいるところ)から評価をお願いいたします!


皆様から頂いた時間や手間が作者にはとても励みになりますので是非とも!宜しくお願い致します!!

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