閑話 昔話をしよう
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昔話をしよう。
遥か昔、三つの種族がこの世界で幸せに暮らしていた。
自然を司る精霊族、力を司る獣人族、そして知恵を司る人属。
三種族は力を合わせ大陸や国をいくつも築きあげたが、ある日突如として「魔族」と呼ばれるものが現れた。
魔族は人々の暮らしを一変させ、世界は戦火に包まれた。
魔族は様々な力を使い、三種族にはそれに対して抵抗する力を持っていなかったのだ。
次々と住んでいた土地を追われ逃げていく人々。
いくつかの国と地域はなすすべもなく魔族に呑まれ、このまますべてが魔族のものとなってしまうのかという時、一人の男が立ち上がった。
それが「勇者」と呼ばれる人間である。
勇者は仲間を引き連れ魔族たちを押し返していった。
そして魔族の長、「魔王」と激突する。
拮抗する力。
その戦いは三日三晩続き、やがて世界は二つに割れた。
勇者が守った大陸は三種族が住まう「三族領」に、対して奪われた土地は「魔族領」となった。
多大な犠牲を払ったが、勇者が魔王を深い眠りに付かせたことで戦いは終わった。
世界に平和が戻ったのである。
勇者は魔族領に一番近い場所に国を建て、生涯魔族領を見張ったという。
その国の名は「オリヴィエ」。
そして勇者はその生を終えるとき、予言を残した。
『魔王が目覚めるとき、我が力を受け継ぐものが現れる』
その予言通り約二百年周期で魔王は目覚めた。
世界は幾度となく危機におちいったが、そのたびに新たなる勇者が生まれ危機を救った。
かくして今もなお魔族との闘いは続いている。
◇
その広い会議場では今まさに議論が交わされていた。
「どうするというのだね!!」
「そんなことわかっておるわ!」
「復活の兆しがあるというだけであろう」
「誰が責を負うとお思いか!!」
議論は白熱し、もはやだれがしゃべっているか分からないほどだ。
今この場には世界各国の王や首相が集まっていた。
もちろん全員がこの場にいる訳ではない。
用意された席には大きな水晶が置かれ、そこから王たちの顔が浮かんでいる。
その数十二。
小国も、大国も。この世界中の国が参加していた。
その論争の焦点は先日、各国の占い師たちが一斉に叫んだ「魔王の復活」というものについてだ。
この世界には三族の住む地域と、魔族の住まう地域がある。
魔族の住まう地域の総称は「魔族領」。
その魔族領を納めている王が魔王だ。
言い伝えによると魔王は二百年周期で覚醒し、魔族領から人の住まうこの世界へと進軍してくるという。
その魔王が目覚めたとなれば世界存亡の危機だ。
各国の歴史書にもその記述がみられ、先人たちが魔王の存在をいかに危険視していたのかがうかがえる。
その魔王に唯一対抗できる者、それは「勇者」のみ。
伝承によれば、魔王が目覚めれば勇者の力を受け継いだ人間が現れるとされている。
つまりその力を受け継いだ人間を探すことが最優先事項であるはずだ。
ところが現在開かれている会議では、魔王が完全に覚醒する前に打って出るのを前提として進んでいた。
「魔王が目覚めたというのならこちらから攻め入ればよいだけのこと」
そう口にしたのは三族領の中でも一番影響力を持つ大国「カノン王国」の国王。
「オリヴィエに腕利きを集めよ。まだ目覚めて間もないならば打ち取れようぞ」
やたらと好戦的なその発言に異議を唱える者はいない。
いや、意見を申し出ることができないようだ。
結局その案に意を示すものはおらず、世界会議は幕を閉じる。
かくして腕に自慢がある者たちが始まりの国「オリヴィエ」へと集い始めた。
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