第12話 沈黙の暗殺者(サイレントキラー)
数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!
一人で百面相しているオレをよそに、リューナさんは話を続ける。
「この度はどれほど感謝してもしきれません。つきましては私どもに何かお手伝いできることがないかと思いまして」
お礼、ということだろうか。
村も仲間も失った彼女たちに何かを要求するつもりは少しもない。
それに心に負った傷は計り知れないだろう。
オレは慌てて手を振った。
「いや、いいんですよそんなこと。それよりあなたたちを無事に助け出すことができて良かったです。お礼なんて気にしなくていいんですよ」
まずは彼女たち自身の回復に努めてほしい。
そのためにオレ達大人がいるのだから。
……いや、子供か。
え、どっち?
オレの場合、どっちの立場で見ればいいのか分からない。
世の中の転生者諸君、教えてほしい。
どっちで見てますか?
一人で混乱しているとリューナと名乗った女性が口を開いた。
「っありがとうございます……」
リューナさんたちは涙目になりながらお礼を言ってくる。
いたたまれない。
若い子にこんな表情をさせやがって。
あの山賊(ド畜生)ども。許せん。
オレは元気を出してもらいたくて努めて明るい声を出した。
「そ、そうだ。できればでいいんですが、オレの力のことは秘密にしてもらえますか」
涙をぬぐっていたリューナさんたちが真面目な顔をしてこちらを見る。
「力……というのは、死者を蘇らせる力のことでしょうか」
「う、うん。あの力は人に知られてはいけないって言われていて」
リューナさんたちがいっている能力とオレの持っている力は少しずれているような気がしたが突っ込まないでおく。
「もちろんです。大恩人の秘密をばらすものなどおりませんわ!」
他の四人も大きく頷いている。
オレは少しほっとした。
「ありがとう」
「ヴォン様は《沈黙の暗殺者》でいらっしゃいますものね!」
「ゑ??」
い、今なんといった?
《沈黙の暗殺者》?
なんだそれは。
「え、ちょっと待ってください。その《沈黙の暗殺者》とは??」
「先ほどリンダルさんが言ってらっしゃったんです。確かに、その通りだなぁって。ああ、もちろんヴォン様がそうだってことは絶対に他言しませんから、安心してくださいね!!」
「oh……」
微笑みながらそう口にする彼女に、オレは白目をむいた。
沈黙の暗殺者。
確かにそれだけ聞けば格好良く聞こえるが、生憎とオレは前世の知識がある。
それは前世日本では別名「生活習慣病」。
「高血圧」とか「糖尿病」とか。
そういうやつの総称だったはずだ。
ち、違うもん!
オレ生活習慣病なんてなかったもん!!
ほんとだもん!!
嘘じゃないもん!!
というかそれが通り名とか嫌すぎる。
何してくれてんねんリンダルさん。
オレは心の中でリンダルさんを恨んだ。
名付けるのならもっと格好の良いものにしてほしかった。
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