第8話 ヒュウーーーーー!!
数ある物語の中から選んでくださりありがとうございます!
たくさんのご反応いただいてニマニマしながら見ております(笑)
まあそれはともかくとして、オレはリーダーを追い詰めていく。
「自分たちが殺した村人たちに復讐される気分はどうだい?」
「く、くるなあああ!!」
リーダーは腰に差していた短剣をオレに向け叫ぶ。
それに反応したのはお姉さんだった。
彼女は死体とは思えないほど素早い動き(当社比)で棟梁へと突進していき、短剣を弾き飛ばしリーダーさえぶっ飛ばして木の幹に叩きつけた。
ヒュウーーーーー!!
お姉さん最高!!!
オレは一気に沸いた。
お姉さんの動きは生者と何ら変わらないのだ。
生前のお姉さんは訓練を積んだ強者だったのだろう。
そんな動きだった。
死体の唯一の弱点である鈍足が、彼女には当てはまらない。
それに見た目も多少青白いものの腐っている部分がない。
これならきっとパーティーに入ってもらっても普通の人間に見えるだろう。
オレにとっては何よりの朗報だった。
これなら近い未来、ボッチパーティー卒業もあり得る!
思考のそれかけるオレをよそに、お姉さんはごほごほと咳き込むリーダーの頭をわし掴みにして引きずりながらオレの下へとやってくる。
周囲を見ればパーティーはもう終わったようで、死体たちはオレを囲んで跪いていた。
オレはドンドコと踊る内心を押しとどめて真面目な顔でごまかした。
「お姉さん、ありがとう。……さて君には聞きたいことがたくさんあってね」
「ヴウウウ」
リーダーは血走った眼でこちらを睨む。
まだ睨む元気はあるらしい。
「そんな怖い顔しないでくださいよ。オレだってやりたくてやってるわけじゃないんですから」
そう。オレだってやりたくてやっていることではない。
オレの目的は新鮮なモンスターの死体だったのだから。
人間の新鮮な死体など求めていなかった。
それを作ったのは山賊たちだし、村人たちを起こしたのは不可抗力なのだ。
「ば、化け物!! お前は化け物だっ!!」
「ええ? いきなり人を化け物呼ばわりとか傷つくんですけど」
「こんなっ、こんなことしてただで済むと思うな!!」
「こんなことって……責任転嫁はよくないですよ? この人たちを殺したのは君達でしょ」
オレはすっと目を細める。
それが合図だったかのようにお姉さんがリーダーの頭を地面に叩きつけた。
がつん、という鈍い音が静かな周囲に響く。
うわぁ、痛そう。
え? 軽いって?
いやだって。同情の余地とかなくない?
村中の人間を殺してすべてを奪った奴らに慈悲とか必要だろうか。
お姉さんはもう一度地面に叩きつけると、リーダーは静かになった。
オレはタイミングを見計らって口を開く。
「……『因果応報』って言葉を知っているかな? 自分の行いは自分に還ってくるって意味だけど、君達にはよくわかったんじゃないかな」
持ち上げられたリーダーはぶるぶると震え涙と血を流していた。
オレは続ける。
「まあそれよりも、オレは君たちに聞きたいことがあってきたんだよ」
「き、きき、ききたい、こと、って……?」
リーダーが蚊の鳴く様な声で尋ねる。
「うん。あのね? 君達がおそった村では病が流行っていたようなんだ。生存者が教えてくれたよ。それで君達はそれを知っていたのかが知りたいんだ」
リーダーは目を何度かまたたかせ、やがて首を横にふった。
「し、知らない。そんなこと知らない!!」
リーダーは油汗をにじませながら必死の形相で首を振る。
「そう? 君達の仲間はここにいたので全部?」
「あ、ああ全員だ」
「それじゃあ村をおそってから他の場所に行ったことは?」
「な……ない! ずっと宴をしていた」
オレはふむ、と顎に手を置く。
事前に見ていた感じからすると山賊の中にも風邪のような症状が出ている者がいた。
要するに全員感染している可能性があるということ。
だが、聞いている限りでは他の村に伝染病が広がってしまった印象はない。
ここで食い止められていればよいのだが。
「そっか、分かった」
オレは目線を合わせてニコリと微笑む。
リーダーは泣き笑いのような表情だ。
「へ、へい。なら俺様……いや、俺を助けてくださるんで?」
「え? 誰がそんなこと言ったの?」
オレはきょとんとしてしまう。
殺戮を楽しんでおいて、自分だけ助かるだなんて何故思えるのだろうか。
残念ながら、オレに慈悲はない。
「なっ!! 話が違うじゃねーか!!」
「だからオレがいつ助けてやるなんて言ったんだよ。君が自分の都合の良いように受け取っただけだろう?」
おっ!!
今のは悪役キャラっぽかったんじゃないか?
オレは自分の言ったことに酔いしれた。
ああ、厨二病って感じ……!!
やっぱり楽しいぜこういうキャラは!!
リーダーは未だわめき散らしているが、オレはもう興味を失った。
その場を離れていく。
「ああ、そうだ。もうそいつ好きにしていいよ」
オレは屈託のない笑顔でお姉さんたちに命令を出した。
いくら大罪を犯した者でも、人一人の生死に関わる命令をこれだけ冷酷に告げられる。
オレもどうやら感覚が麻痺してきているようだ。
この世界に染まってきている、もっと言えば「召鬼道士」の能力に染まり始めているのだろう。
だが飲み込まれさえしなければ、大丈夫だろう。
オレはそう自己完結して歩いていく。
跪いていた女性たちが一斉にリーダーへと向かっていった。
「う、うわああああああああ!!!!!」
夜の山に野太い悲鳴がこだました。
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