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過去と未来を紡ぐ始まりの物語 ~カイル王国建国史~  作者: take4


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第五十四話 カイル歴2年 通商派遣

年も改まり、カイル歴2年となった。

ひょんなことから、大量の魔石を手に入れた私たちは、新たなる一歩を踏み出すことに決めた。

急速に増えた人口と、カイラールを本格的な街にするには、足りに物が沢山あった。

だが今は、それを調達できる原資を手に入れていた。



「みんな、急遽集まってもらって申し訳ない。今日はぜひ相談したい内容があって集まってもらった」



そう言って私は、招集した仲間たちを見渡した。

アルス、ゴウラス男爵、ファルケ、アース、ファル、ヘスティアは当然だが、カイラールに住まう氏族の代表として、グレイブ大使、グラビス大使、ネオ大使が、そして元長老とアベル殿やソラを加えた総勢12名を招集していた。



「各氏族の方々より預かった大量の魔石で、先ずは候補者たち全員が晴れて魔法士となった。

そして、更に全ての属性で大量の予備まで蓄えられることになった」



そこまで言って、私はファルケと男爵に目線を送った。



「そうですな。我らも狩りによって、独自に大量の魔石を集めることができましたしね。以前の里と比べたら、強い魔物が多い分、魔石の集まりも比べ物にならないぐらいですからね」



「ファルケ殿の仰る通り、魔境で狩りに出れる技量の者も大幅に増えました。我々でも魔法士の方々と連携すれば、十分に戦力となります。このごろは狩りに、やっと自信が持てるようになりましたよ。

狩りで集めた魔石の数だけでも……、ローランド王国の下級貴族の財産より価値があると思いますよ」



男爵の言葉に、一番目を輝かせていたのは、お約束通りグレイブ殿だった。

彼自身、大量の魔石をかき集め、投資という形で預けてくれている。



「陛下はその魔石を、どのように活用されるお考えなのですかな?」



「先ずはこの国、そして同胞と各氏族の未来のため、有効に使いたいと考えている。

アベル殿にお願いしたい。先ずは我らの交易隊に先行してゴートに入り、仲買人と渡りを付けてほしい。

いきなり訪れても、先方の準備があるだろうからね。

その後、ケンプファー男爵領に赴き、男爵と渡りを付けてほしい」



「ジークにも何か依頼をされると?」



「ええ、順序が逆になってしまったが、男爵にはアベル殿に手紙を託していただきたいと考えている。

一つ目の目的は、ケンプファー男爵領は、人界で唯一、我らの同胞が安らかに暮らせる土地だ。

そのため、今後も継続して我らの同胞を保護できる、力を付けてもらいたいと考えている」



「その対価としての魔石だと?」



「それもある。もう一つの理由は、調達の範囲を広げることだな。

仲買人だけでは、集めれる資材にも限りがあるだろう。だが、貴族の男爵家が主導すれば、それなりの物資を集めることも可能だろう。ゴートだけで大量の物資が動けば、訝しがる者も出てくるかもしれない。

それが、ローランド王国の各所であれば、猜疑の目も誤魔化せるのではないか?」



「そのためにアベル殿の先触れ、という訳ですね。資材には貨幣も含まれている、ということですね?」



「その通りだ。この国にはまだ通貨とその制度がない。商業地区も『場』は用意しても、『商品』そして流通に欠かせない『貨幣』がないのが悩みの種でね。いずれは独自の通貨を用意するにしろ、当面の商品や通貨、このあたりは調達しておきたい。今の配給制は、いずれ頭打ちになるだろうから」



「そうですな。国という体裁をとる以上、各種制度の整備や税制、これは必ず必要になるでしょう。

商業発展にも欠かせない要素だと思われます。私もそれらを踏まえ、ジークに手紙を書くとしましょう」



この辺りは、既に今後の課題として男爵と協議している内容だったので、このやり取りは既定のラインの話に過ぎない。



「で、アベル殿、そして陛下のご出発はいつ頃を予定されていますか?

今回は私もお供できれば幸いですが……」



「アルス、いつも留守番を任せて申し訳ない。だが今回は、可能な限り時空魔法士たちを連れていくつもりだ。もちろん、アルスを含めてね。

先ずはアベル殿と数人の時空魔法士、ファルケが指揮する護衛部隊30名に先行してもらいたい。

我らはその間、カイラールの守りと開発を徹底的に強化する。そして春になればゴートにて合流する。

幹部で同行する者は、責任を持って留守を預けるに足る者を選出すること、それが条件だ。

なお、私の代わりは長老、お願いしますね」



「やれやれ、陛下はいつもこの老人を……、これでは楽隠居もままならないですな。

謹んで、留守をお預かりさせていただきます」



そして会議がまとまりかけたころ、遠慮がちに手を挙げる者が二人いた。



「あの……、我々の重力魔法は馬車の重量も魔法で変化させることができます。そうすれば、難所の通過も楽になりますし、平地では物資を満載した馬車でも、裸馬と同様の速さで疾走させることが可能です。我らからも同行者を出させてください」



「私は、聖の氏族の一人として、彼らが何を欲しがるか、何であれば対価に糸目を付けないか熟知しております。そのため、より少ない物資で、彼らの投資の満足度を上げれると思います。ひいては、自由に売れる魔石に、余裕を持たせることができると思うのですが……

私が調達に立ち会うといえば、きっと強欲な彼らは投資を惜しまないでしょう」



周りの仲間たちからは、『お前が言うな!』そんな感じの、言葉にはならない表情が見て取れ、私たちは仲間同士でお互いが顔を見合わせて苦笑していた。


こうして、重力の氏族から数名、聖の氏族からは言い出した張本人、グレイブ殿が同行することが決まった。

そしてその数日後、先触れの任を受けた、アベル殿とファルケたちが出発した。




アベルやファルケたちは、魔境の往来に慣れ、全員が騎馬にて移動しているため、その移動は極めて迅速だった。カイラールを出た後、エストとテイグーンでは情報共有のため一時滞在したが、それ以外はただ休息のためだけに中継所に滞在し、出発から12日後にはゴートの街へと入っていった。



「なんか、ゴートも来るたびに寂れていく気がするが、気のせいか?」



「ファルケさん、僕もそう思います。仲買人たち、まだゴートに居てくれれば助かるんですけどね……」



そう言って、町の裏通りを抜け、仲買人が営む店舗に向かうアベルも、不安を抱えていた。

そして、目指す店舗がまだ存在しているのを確認すると、思わず走り出して中へと入っていった。



「おやっさん! 良かった、まだ店を開けていてくれて……」



「ん? 失礼な奴だな。どこのどいつ……、ア、アベルじゃないか! とんと顔を見せなくなったんで、他の地域の仲買人と商売を始めたかと、気を揉んでいたぞ。よく来てくれたな」



「ああ、今回は大きな商売を持ってきたよ。話を聞いてくれるかい?」



「勿論だとも! で、品はなんだい?」



「ここでは滅多に手に入らない、魔物素材と魔石だ。まぁ見てくれ」



アベルが笑ってそう言うと、ファルケたちによって重そうな、人の背丈はある程で、奥行きも十分にある大きな木箱がふたつ運び込まれた。


実はこの木箱の中には何も入っていない。ただのハリボデだ。

アベルは木箱の中に入り、さも中から取り出しているかのようにして、自身の空間収納から取り出しているだけだ。


果たして、仲買人の店には見たこともない魔物素材や、超高級品とされる素材が、うず高く積まれだした。



「ちょ、ちょっと待ってくれ! 何だこれは? 王国中探しても滅多に手に入らないものや、見たことのない素材……、でも、一目見ただけで分かるぞ。これらもどえらい代物じゃねぇか?

王都の最高級店でないと、捌けないような品物ばかりだぞ」



「流石だな。仲買人としてゴート一番の目利きは伊達じゃないな」



「いやいや、流石の俺でもそうそう簡単に捌ける物じゃないぞ。こんな代物、直接王都の高級店で売ったほうが、よっぽど早いし、金額も上だぞ?」



「いや、苦労して入手したものだからこそ、長年付き合いのあるアンタに買い取ってもらいたいんだ。

もちろん、すぐとは言わないよ。代金や対価は春までに揃えてくれればいいよ」



「ふむ……、訳ありか? まぁ良いさ。俺は俺で、いい商売させてもらうとするよ。

俺自身、春には店じまいをして、ドーリー子爵領の開拓地で、新しい商売を始めようと思っていたからな。その資金集めや、新しい伝手を探るちょうどいい機会だ。

で、対価は何を望んでいるんだ」



「そうだな……、銀貨や銅貨を中心にして、後は作物の種と引馬を付けた馬車、そんなところかな?」



「おいおい、そんなことをしたら、銀貨や銅貨だけで馬車二台分になっちまうぞ? いいのか?

金額を確認するだけでも、どえらい手間だぞ?」



「ああ、開拓地でも働き手が増えてな。彼らに払う賃金も足りないんだ。金貨はあっても、それで払える訳でもないからね。取り合えず、馬車一台分ぐらいの銀貨と銅貨、それを目標に集めてくれないか?

中身はあんたを信用するよ」



「もちろんだ! 手間賃こそ貰うが、商売はきっちりさせて貰う。それが俺たちの誇りだからな」



「あ、そうだ! 忘れてた。これもあるんだ」



そう言ってアベルは、重そうな木箱を取り出すと、蓋を開けて中身を見せた。



「!!!」



仲買人は言葉を失って、茫然としていた。



「こっちは、売り先の当てがある分だけ持っていってくれるか? 12属性、全ての魔石が入っているよ」



「じゅ……、12属性って……、光や闇、重力なんかもあるのか? こんなもん、希少過ぎてとんでもない価値だぞ?」



「あ、ああ。もしこの三分の一でも捌けるなら、手間賃としてこの三つはあんたの取り分だ。

どうだい?」



そう言って、アベルは木箱から3個の魔石を取り出した。

希少過ぎてほぼ流通しないと言われている、光と重力、そして闇の魔石を。

ただ、箱の中にはそれらの魔石が何個もあり、それらが無造作に詰め込まれている。


アベルには、仲買人が大きく何かを飲み込んだ様子が、聞こえたような気がした。

そして仲買人は、大きく息を吸い込むと、目を爛々と輝かせて向き直った。



「三分の一でいいんだな? 預からせてくれ。春までには、なんとかしてみせる。

で、対価は何だ? まさかこれも銀貨や銅貨とは言わないよな?」



「ああ、欲しいものはここに書いてある。これらを調達できるだけ揃えてくれれば十分だ。

残りは金貨で構わないよ。町外れに倉庫を借りている。そこに運び込んで置いてほしい。随時輸送するので倉庫は常に空けておくから」



手渡されたリストを見ると、日用品から建設資材、金属加工品や素材としての金属類など、多岐に渡っていた。



「あんたらは……、町でもひとつ作る気かい?」



「まぁね、開拓地を賄う町を整備していきたいと考えているからね」



仲買人は絶句したが、一生に一度の商機を逃す気持など、一切なかった。

彼はアベルの差し出した箱から、律儀に三分の一の魔石を各種受け取ると、配下の者を叱咤し、各方面に走らせた。


使いの者たちは、彼の仲間の仲買人だけでなく、ローランド王国各地、その王都まで散っていった。



仲買人サーム、彼はある時大量の希少素材を売り捌くことで財を成し、後日になって仲間や配下を引き連れて、ドーリー子爵領の魔境開拓地へと移住することになる。

その地で、探し求めていた商売相手に出会うことはなかったが、開拓地に入植後の成功と、希少な魔石をドーリー子爵と王家に献上した功を以て、ローランド王国より騎士爵を経て、男爵号を賜ることになる。


サームは最初、騎士爵を賜った際、苗字として新たな家名を名乗ることになった。

ドーリー子爵の家名から一文字、商売の友とした2人の男たち、アベルとカイルの名の末尾から、一文字づつ貰って。


彼はその後、ローランド王国がグリフォニア帝国に接収された後も続く、ドゥルール男爵家の始祖として、長きに渡り繫栄する貴族家を興した人物となった。

最後までご覧いただきありがとうございます。

次回は、12月4日9時に【人外の楽園】投稿する予定です。

どうか何卒、よろしくお願いします。

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