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悪役令嬢の護衛兵(仮)  作者: 辰帖コケトリス
9/11

お嬢様専属メイド、セシリア


 寝坊をしてはいけないと思いながら寝たせいか、鳥が鳴き始めるよりも早く目が覚めてしまいベッドから起き上がり、頭をポリポリと掻きながら、時計を見ると短い針が5の数字を指していた。


「思ったより早く起きちまったな……」


 カーテンを開け窓の外を見て見ると、まだ朝早いせいか見張りの兵士以外の人の姿は見えない。

 だからと言って二度寝をしてしまうと寝すぎてしまう可能性があるので、見張りも兼ねて、素振りでもするかと思い、一応防具を付け、身支度をした後、剣を担ぎ屋敷の裏で素振りを始めた。

 素振りを始めて2時間くらい経った頃だろうか、屋敷の中から人の気配がし始め、窓にパタパタと走っている使用人達の姿が映る。

 その姿を見て、そろそろ部屋に戻るかと思い汗を拭いていると、後ろからセバスさんの声が聞こえた。


「ダグラス殿こちらにいらっしゃいましたか。おはようございます。ダグラス殿のお部屋に伺いにいったのですが、いらっしゃらなかったので探しましたよ。朝から素振りですか……殊勝なことですな」


「おはようございます、セバス殿。思ったより早く起きてしまった物で……冒険者の時であれば、その日の調子を確認でき次第切り上げていたのですが……、護衛ですからね。魔物などと戦う機会が中々無いので。しかし、それでいざという時に腕が鈍っていましたので守れませんとなると笑い話にもなりませんのでその分も、と。まぁ公爵様やお嬢様を狙うような輩はそうそういなさそうですけどね」


 まぁ賊が入って来てもセバス殿を含めて何人かの使用人も戦う事ができそうな雰囲気を醸し出していたし、そもそも公爵様に害をなそうとする輩は王国で感じた視線の彼、彼女等に処理されているだろうから、大丈夫だろう。


「ほほほ、確かにそれもそうですな。それでダグラス殿、朝食はいかがなさいますか?」


「そうですね……素振りで掻いた汗を流してからにしますよ。さすがにこの汚れたままの姿で食事の場所にはいけませんしね」


「かしこまりました。では汚れを落とされた後、先日の夕食を食べた晩餐室にお越しくださいませ」

 

 そうしてセバスさんと別れた後、汗と汚れを落とし、晩餐室に行くとメイドの人達や、昨日の門番の二人が朝食を摂っている所が見えた。

 セバスさんによると屋敷の使用人達はこの時間帯にここで朝食を摂り、仕事を始めるらしい。

 そして公爵様や奥方様、お嬢様はご自分の部屋で朝食を摂り、夕食の時のみ家族で集まり先日のように食べているそうだ。

 

 朝食を摂り終わると、セバスさんが話かけてくる。


「ダグラス殿。この後の事なのですが、まず兵舎に向かい武器庫から備品の剣を選んでいただきます。その後はお嬢様の専属メイドのセシリアと合っていただき、今後の予定や仕事の事について話し合いをして頂ければよろしいかと。」


「了解致しました」


「剣に関してはこの街一番の鍛冶屋に依頼を出しておりますので、品質に心配事はないと思われますのでご安心を」


 セバスさんにそう言われ、この板剣以外に使うのは何年振りだろうかと振り返りながら、この剣も暫くは素振り用だなと思いポンっと剣を撫で行動を開始した。




§ § § § §


 私の名前はセシリア。バイゼル公爵家で働いている。

 以前は暗部としても動いていたのだが最近はアルマお嬢様の専属メイド兼、暗部として表と裏からアルマお嬢様の生活を守っている。


 今日も変わらずお嬢様の朝のお世話をしていると扉からコンコンと音がして「セシリア、少々お時間よろしいでしょうか」とセバス様のお声がする。


「畏まりました、少々お待ちください」


 と返事をすると、朝食を食べていたアルマお嬢様が朝食を食べていた手を止めてこちらを見て


「セシリアどっかいっちゃうの?」


 と心配そうな顔をしてスカートを握ってくるので、私は微笑みながら


「少しだけお話をしてくるので、ご安心くださいな、それでは少しの間だけ、お嬢様のお世話をお願い致しますね」


 と後輩のメイドに頼むと「畏まりました!」元気よく答えてくれたので、部屋を出る。

 すると目の前に居たのは、上司のセバス様と先日、公爵様と夕食を摂られていたダグラス・ガープ様だった。

 

「お嬢様のお世話中に申し訳ありませんね、セシリア。こちらの方は先日も一応会われたので覚えていると思いますが、本日よりアルマお嬢様を護衛して頂くダグラス・ガープ殿です。これから暫くはあなたとダグラス殿でお嬢様の身の回りをお世話して頂くつもりですので、仕事の事についてはお二人で相談して決めてください。よろしいですね」


「かしこまりましたセバス様」


「それでは私は旦那様の補佐のほうに戻りますので後は任せましたよ。ダグラス殿もこれからよろしくお願い致します。失礼致します。」


 セバス様が去り、ダグラス様と私の二人になるとダグラス様が口を開く。


「あー……セシリア殿、初めまして。本日よりアルマお嬢様の護衛をさせて頂きます冒険者のダグラス・ガープと申します、よろしくお願いします。」


 ダグラス・ガープ様……騎士団副長アルフレッド・オルバス様のご友人で齢11でバジリスクと戦闘をして瀕死になる。

 その後、王都で冒険者になり5年でAランクに、謙虚で面倒見が良く、町人や組合職員からも覚えがよくついた愛称はお人好し、同僚の暗部の物が調べて来たものだが、察知能力が高く一度討伐依頼にも監視をするために付いていった時に森の中で追いかけ回された、という話を聞いた時にはおもわず笑ってしまった物だ。

 悪人ではないと思うのだが、いかんせん冒険者というなんでも屋で尚且つ公爵様に忠誠を誓っている者でもない。

 もしもの場合はこの方から私がお嬢様を守らなければならない。

 その事も含めて私がお嬢様の専属メイドとして選ばれたのだろうと私個人としては思っている。


「えぇ、初めましてダグラスガープ様。私はアルマお嬢様の専属メイドのセシリアと申します。以後お見知りおきを、それとこれから私達は同僚という形になると思いますので堅苦しい呼び方は無しでセシリア。と呼び捨てで呼んで頂いてかまいませんので、こちらこそよろしくお願いいたします」


 そうダクラス様に伝えるとダグラス様は少し困ったような顔をした後


「いえいえ、いくらなんでもセシリア殿は私の先輩にあたる方ですので、呼び捨てはちょっと……いや、しかし……確かにこれから一緒に働くとなって堅苦しい呼び方のままではあれですね……ですので、セシリアさんとお呼びさせて頂きます。私も様付けなんてせずお好きにお呼びください」


 ふむ、謙虚と言うのは強ち間違いではないらしい。しかしこの方は強いはずなのになぜこんなにも低姿勢なのか……冒険者という者は強い者ほど横柄な人が多いイメージだったのだがこの人に関しては違うのかもしれない……いやまぁこれで信用した訳ではないのだが。

 そんな事を考えているとダグラス殿が痺れを切らしたのか話を続ける。


「あー……うん、セシリアさん?仕事内容の話をしたいのですが……」


「あっはい、すいません少しボーっとしておりました。申し訳ございません。では私もダグラスさんと呼ばせて頂く事に致しますね」


 まずいまずい……心配されてしまった。考え込むのは後にしよう。


「いえいえ、お嬢様の身の回りの世話とかになると気を使われて疲れそうですし無理はしないでください。それで仕事内容なのですが基本的に俺はどうすればいいですかね?朝はこの時間ぐらいに来て部屋の前で見張りを始めればいいですかね?」


「はい、そうですね……時間に関してはこの時間ぐらいでよろしいかと。今の所お嬢様のスケジュールは、朝7時に起床されてそこから朝食を摂り9時あたりから基本的な勉強を始めて正午に昼食、そして午後はダンスや礼儀作法の勉強となっております。そして夕食をとった後は就寝となっております。ですので基本的には朝は外で待機して頂き、講師の方々が来てからはお嬢様の勉強を後ろから見守る形で護衛という形になるかと」


「なるほど……講師に変装して入ってくる、という場合もあるわけか……ボディチェックをするべきか……」


 何かブツブツ呟き始めたダグラス様にそのまま話を続ける。


「夕飯後は巡回の兵士も出ておりますのでお好きにして頂いて構いません。それではそういう事でよろしくお願い致します」


「了解致しました」


§ § § § §



 ふぅ……なんとか仕事の内容は把握できた訳だが、色々と問題が出てくる。

 まず講師の件だ、これから来るであろう講師の方々にいきなりボディチェックを致します、なんて失礼な事をしなければならないの訳だ。

 男の講師であればいいのだが女性の講師の場合はどうしたもんかと思う。まぁセシリアさんに協力してもらうしかないか……そう思い頭を切り替える。


「ではこれから講師の方がくるまで扉の前で待機しておりますので、何かがあれば直ぐに呼んで頂ければ扉を蹴破ってでも突入致しますのでよろしくお願いします」


 とセシリアさんに言った所で両開きのドアが片方少しだけ開き、中からお嬢様の顔が覗く。


「セシリア~まだお話してるの~?ッッ」


 お嬢様と目が合った後、扉がパタンと閉められた。どうやらまだ怖がられているらしい……それを見たセシリアさんはこちらに一礼した後、お嬢様の後を追い部屋の中に入ってしまった。

 どうやらお嬢様が打ち解けてくれて信頼を得られるのは、まだまだ先なようだった。



――それから時間が少し経ち廊下のほうからコツコツと誰かが歩いてくる音が聞こえたので、注視するといかにも講師です、と言わんばかりのメガネをかけ団子ヘアーの50歳ぐらいの女性が歩いてくる。


「失礼ご婦人、私は本日よりアルマお嬢様の護衛となりました、ダグラス・ガープと申します。ここにはなんの御用でございましょうか」


 と聞くと女性は不機嫌な態度になり嫌味もプラスで吐いてくる。


「あら、これはご丁寧にどうも、私、アルマお嬢様の教育係のドロテーア・ドレーゼケと申しますわ、これでよろしいかしら。では、早くどいて頂いてもよろしいかしら、私はあなたと違って忙しいのですよ」


 正直ここまでくると感心できる。この世界に来てからはここまでザ・貴族のような人物とは遭遇する事が無かったからだ。だがしかしここで面倒だからと通してしまい事件が起こると俺の首が物理的に飛ぶのでしっかりとしなければいけない事をするために話を続ける。


「失礼、ドロテーア夫人、本日よりボディチェックと言う物を行わせて頂きたいのです」

 

「そのぼでぃちぇっくとやらは何をするのかしら?」


「はい、ボディチェックと言うのはお嬢様に害を与える物を持っていないかを隅々まで調べる事でございます、もちろん私がという訳ではございません。チェックするのはメイドの方にやって頂きますのでご安心して頂きたい」


「ッ本当に失礼な方ですわね。この私がドロテーア・ドレーゼケが何か起こすとでもお思いですか!?本っ当に不愉快ですわ。私、先程も申し上げた通り時間がございませんの、私の教えを受けたい方はいくらでもいらっしゃいますの。もうしばらくここに来てますけどこんな事、一度も無かったのよ!?早く通してくださる!?」


 遂にはわめき怒り出してしまったので面倒くせぇなぁ……と思いながらも説明を続ける。


「しかし、ドロテーア夫人。これは何もお嬢様だけを守るという事ではないのです。これを受けて頂けると同時に何があろうとドロテーア夫人の無実もすぐに証明される事なのです。ですのでここはどうにか受けて頂けませんでしょうか」


 と言った所で中からドロテーア夫人の声を聞いたのかセシリアさんが外の様子を見に来た。


「どうかなさいましたでしょうか?先程から外で大きな声が聞こえましたので出て来たのですが。」


「あらミス・セシリア、良いタイミングで出てこられました。この無礼者はなんですの!?先程から失礼な事ばかり言ってくるんのですよ!?こちらは時間が無いと何回も言っておりますのに!!」


 その言葉にセシリアさんは困った顔をしながら俺になぜこうなったのかを聞いて来るので、先程のあった事をセシリアさんに全て伝えるとセシリアさんは顔を少し顰めた後ドロテーア夫人に話かける。


「失礼致しました。ドロテーア夫人。彼は先日、バイゼル公爵様に雇われアルマお嬢様の周りの事を任された者でございまして……お聞き入れられないとなると、旦那様に言って頂くしかないのですが……」


 まさかこの夫人も娘以外の所で公爵の名前が出て来るとは思わなかったのか顔を引きつらせわめく。


「……ッあっそう。ではぼでぃちぇっくでもなんでもしてくださいませ!これでよろしいでしょうか!?」


 どうやら諦めてくれたらしい。チェックはセシリアさんに任せ、自分はこれと毎回合うのか、と頭が痛くなる。


 チェックが終わりドロテーア夫人とセシリアさんと部屋の中に入りお嬢様の授業を後ろから見守っているとお嬢様はやはり、俺が後ろの方に立っているのが気になるのかチラチラと時々こちらを見てくる。

 するとそれを見たドロテーア夫人がアルマお嬢様を叱咤する


「ミス・アルマ!今は授業中ですよ!ちゃんと前に集中なさい!あなたを一流にするのが私の使命なのです。半端な事をしていては立派な貴族になる事はできませんよッ!」


 するとお嬢様はビクッとした後、前を向き勉強を再開する。


『スパルタだな……貴族の授業ってのはこんなハードなもんなのか。貴族じゃなくてよかったぜ……しかしお嬢様は人見知りなのにこんな教師で大丈夫なのかね。』


 そんな事を思いながら後ろで見守りその日は終わり、問題が起きたのはそれから1ヶ月後だった。


総合評価ポイント100ポイント達成しておりました。皆様、誠にありがとうございます。

拙い文章ですが、これからも応援の方よろしくお願い致します。

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