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悪役令嬢の護衛兵(仮)  作者: 辰帖コケトリス
7/11

仕事内容のすり合わせと手紙

 皆さんは護衛についてどんなイメージをお持ちだろうか。

 大抵の方は“護衛対象を守る事”というイメージを持っているだろう。

 しかし護衛と言えども、騎士の言う護衛と冒険者の言う護衛では天と地ほどの差がある。


 例えば騎士達は護衛をする対象が基本的に貴族や王族といった重要人物になる為、対象の命を守る事は当然で、そこにプラスで対象がそもそもそんな目に合わないようにすることや、対象を外敵から守り、周りを守り、家格すらをも守る、といった事が騎士達の護衛である。


 それに比べて冒険者の護衛対象は基本的に冒険者組合に依頼するあまり金の無い行商人であり、依頼主が襲われないよう索敵や安全な道を選んだりはするが、それは自分達の命も守る為にやるものであり基本的には生きていれば依頼は達成になるのだ。


 例え依頼対象が剣や弓で傷つこうと、メンタルがやられようとも、生きて商品と依頼主を守り目標地点まで連れていけば大体は成功になるのである。まぁ失敗をしている時は死んでいるか依頼者を見捨てて逃げているので冒険者として二度と仕事ができないのだが。

 

 その事を考えると今回の護衛に求められている事は前者のような護衛なのだろう。

 そうなると困った事になる、確かに護衛依頼を受けた事はあるが後者のような依頼しか受けた事がないので貴族を護衛する際の勝手がわからない。さらに公爵には他に何か目的があるよう思えた。

 

「では仕事内容の話をしよう、そうだな。君にやってほしい仕事は主に二つだ。まず一つ目は娘の護衛だ。領地内での護衛はもちろんだが、娘も1、2年もすればお茶会やパーティといった物に参加する事になる、その行き道やパーティ会場での護衛を君にやってもらいたい。家格の事や我が家の評判といった物はあまり気にしなくていい、そこは私の仕事だ。二つ目は時々、娘の遊び相手をしてやってほしいのだ。娘は恥ずかしがり屋でね、そろそろ家族やメイド以外にも慣れてもらわないと困る。後は大体君の好きにやってもらって構わない。まぁ悪い遊びを覚えさせてもらっては困るがね……その他の細々とした物はセバスと相談してくれ」

 

 こちらが聞く前に公爵様が先に言ってくれたので聞く手間が省けて助かった。護衛内容もわかりやすい。しかし自分の中での護衛のやり方も考えて行かなければならない。その他に気になる事は後でセバス殿と相談をすればいいだろう。


「承知しました」


「次は君にとって大事な、休みと給金の話に移ろう。まず休みについてだが、我が家の兵士達には週に1回休みを与えローテーションをしている。そこでダグラス殿の休みの日なのだが、そこから1日増やして週に二日の休みで、給金は月に金貨25枚でどうだろうか」


 月に金貨25枚、一般家庭が5ヶ月は何もせず暮らせるお金だ。

 俺が休み無く依頼を受け続けて稼いだ最高額が金貨22枚だったはずなので、それが命の危険を感じる魔物と戦わずにしかも週2回の休みがある仕事で25枚、しかもここに食住まで付くのだ……好待遇すぎて何かあるのかと勘ぐってしまう。

 そうやって俺が考えている顔をしていると公爵がこちらに提案をしてきた。


「……ふむ?少なかったかね?休みに関してはこれ以上増やすとなると難しいが給金については――」


「いえ、十分です、流石にこれ以上をもらってしまうとそれに見合った仕事ができる気がしません」


「フハハハハ!まさか給金を上げようとして拒否されるとは思わなんだ。では、仕事の詳細と報酬の件はこれでよいな」

 

 仕事内容と報酬等のすり合わせも無事終わり、これでやっと一息つけると思っていると公爵がポケットから懐中時計を出し時間を確認する。


「ふむ……まだこんな時間か、ダグラス殿、この後は何か用事はあるかね?」


「えぇ、今回の護衛が決まった事と暫く帰れない事を、王都の冒険者組合に伝えるための手紙を出しに行こうかな、と」


「了解した。しかし夕食までには帰って来てくれたまえ、私の妻が君を一目見たいと言っていたのでな。その時に娘とも顔合わせをしてもらおうと思っている。息子達が王都の学園にいってて合わせれないのは残念だがな、ハッハッハ」


 公爵様と話をするだけでも気を付けて話をしなければならないのに公爵の奥様まででてくるとなると頭が痛くなる。しかもテーブルマナーなんて物は前世でも使った事がないので、またここで試練がくるのか、と心の中で俺は頭を抱えた。


「では私は少し仕事に戻るとする。ダグラス殿また後で会おう。セバス、後は任せたぞ」


「畏まりました旦那様」


そうしてセバスがバイゼル公爵は見送りバイゼル公爵は応接室を後にした。


「ではダグラス殿こちらを」


そういってセバス殿から竜の紋章が入った指輪を渡される


「そちらは公爵家の従者や関係者がつける事を許される身分証のような物でございます。こちらを見せればこの都市の衛兵や主要機関の方々、または他の貴族様方に、あなた様が公爵家の関係者だと理解して頂けると思いますので、何かあった場合はこちらを使用してくださいませ。それと手紙を出すのであればこの屋敷からでて真っ直ぐ進み一番最初の角を右にいければ冒険者組合があると思いますので、そちらへ行かれるとよろしいかと。」


「ありがとうございます。あと、少し聞きたい事や教えて頂きたい事もありますので、また夕食後のどこかで時間があればお願いしてもよろしいでしょうか……」


「えぇ、全然構いませんとも。これからはバイゼル公爵様の下で働く者同士としてよろしくお願い致します」


「こちらこそお願い致します。それでは失礼致します」


そして門番に預けていた板剣を受け取り用事を済ませる為冒険者組合に向かった。




§ § § § §





拝啓 風がそよそよと気持ちがいいこの頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

私はなんとか公爵との対談の山を越えなんとか生きています。

さて、本題に入るのですが、この度私ダグラス・ガープは

バイゼル公爵の令嬢の護衛を受け持つ事になりました。

期間はとりあえずの3年間、3年経った後は要相談となりました。

ですので暫くの間、王都の冒険者組合に顔を出す事ができなくなりました。

アラン組合長にナターシャさん、その他職員の皆様方へお願いがあります。

私が面倒を見れない間、レオンなどの若い冒険者達を気にしてやってほしいのです。

恐らくレオン達は若者同士お互いに助け合いやっていってくれると思いますが

彼等はまだ若く、色々壁にぶつかると思います。その時に少し手を差し伸べてあげてほしいのです。

よろしくお願い致します。 

          ダグラス・ガープより


『よし、まぁこんな感じでいいだろ』

 俺は今、王都の冒険者組合宛ての手紙と、

この現況を作り出した幼馴染で親友のアルフレッド君に対して、恨みを込めた手紙を届けてもらおうと都市セウロナの冒険者組合に手紙の配達依頼を出しに来ていた。


「あーすまない、手紙を出したいんだが」

 

「はい!セウロナ冒険者組合へようこそ!お手紙の配達ですね!どちらに送られるのでしょうか?」


「王国に2通1つは冒険者組合に、もう一つは王国騎士団アルフレッド・オルバスにお願いします」


「はい!王国の冒険者組合と……王国騎士団!?の方にですかッ?かっ畏まりました……」


 おそらくこの受付嬢は俺が王国騎士団に手紙を出そうとしているので、どこかのお偉いさんか何かと勘違いしているのだろう。

 

「あの、えーと他にご要件は……?」


受付嬢が他に要件がないかおずおずとしながら聞いてくるので、いたたまれなくなり自分がお偉いさんではないと伝える。


「ああ、王国騎士団に友人がいるというだけで俺はただの冒険者なんだ。そんなに縮こまらないでくれ」


「あっはい!よかったです……冒険者の方なのでしたら依頼は受けていかれますか?」


「いや、この後は約束があるんでな、今日は遠慮しておくよ……少し聞きたいのだが、ここセウロナ冒険者組合にも不人気依頼が溜まっていたりするのだろうか?」


「はい、お恥ずかしながら……採取系の依頼は新人冒険者の方々がやってくれているのでそこまでなのですが、雑用などになるとどうしても溜まってしまいますね……王国の冒険者組合は皆さんが活発で最近は解消されてると聞いた事があるのでちょっと、うらやましいなって思っちゃいますけどね」


「なるほど、助かったよ感謝する」


「はいっ!またいつでもお越しください!」


 やはりどこの冒険者組合でもこのような事は起きているらしい。

 『暫くはここの街で暮らす事になるのだろうし、休日の一日はここで依頼を受けて、恩を売っておくのも悪くはないか……』

 そう思いながら受付の時計を見てみると、中々いい時間になっていたので冒険者組合を出て本日2回目の山場、バイゼル公爵達との夕食の為、屋敷に帰った。

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