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悪役令嬢の護衛兵(仮)  作者: 辰帖コケトリス
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アルフレッド少年から見たダグラス少年

――彼は幼い頃から変わっていた。

 どんな所が変わっているかと聞かれると難しいが特に変わっている所と言えば

物事の捉え方と価値観だろうか。


§ § § § §


彼と僕は王国の北側の人口が60人ほどの村で生まれ育った。


 僕は小さい頃から引っ込み思案で自分に自信が無くて……周りの子達に何て思われるのかが怖くて自分から遊びに誘ったりすることができなかった。


もちろんできることなら一緒に遊んだり一緒に笑ったりしてみたい。


でも、できなかった。勇気がなかった。


そんな僕を両親はなにも言わず見守ってくれていた。


 今日もなんてことなく時間が過ぎていくんだろうな、おとなしく本でも読んでいようかな?なんて事を考えながら良い天気の空を眺めていると、誰かが訪ねてきて、扉をコンコンと叩いた。


 訪ねてくるっていったってどうせ母に対してだろうと思い、本棚の本を取り出し本を読もうとしたそのときだった。


一階にいる母が僕を呼ぶ


「アルーあなたにお客さんよー降りてきなさーい」


 僕はドキッとした。


 誰が訪ねて来たんだろう僕になんの用事があるんだろうと。


 そんな事を思いながら階段を恐る恐る降りて玄関のほうを見てみると、そこには黒髪で僕と同じくらいの少年が「よっ」っと言いながら手を挙げてニカッとした笑顔で立っていた。


「よし んじゃ早速だけど遊びにいこうぜ!!」と彼は元気よく謎のポーズを決め僕を誘う。


僕は彼が誰かなんてことより、なんで僕なんだろうという考えが頭の中にグルグルと渦巻いて固まってしまった。


すると彼は汗をタラタラと垂らし始め


「ちょいちょいちょーい!!そこで固まられるとさポーズ決めてかっこよく誘ってる俺がバカに見えちゃうからね!俺を助けると思って 今はうんって言ってくれよ!」


と必死に言うので僕はさらに困惑して母に助けを求め母の顔を見た。


すると母は優しげに微笑みながら「いっておいで」と僕の背中を押してくれた。


「いやーしかし遊ぼうって言ったのはいいけど何すっかなぁーお前なんかしたい事あっかー?」

と彼が道すがら問いかけてくる


「いやっ……あの……えと……」


僕は戸惑いながら彼の名前も知らないので吃ってしまう。


 するとそれに気付いた彼は申し訳なさそうに、僕のほうを向き手を合わせて謝った。


「あーーーすまんすまん!!お互い自己紹介すらまだだったよな

俺の名前はダグラス・ガープ。好きな事はおもしろい事!!よろしくな!!んで・・お前の名前は?」


「あっ……ぼっ僕の名前はアルフレッド・オルバス……です。すっ好きな事は本を読む事……です……」

と答えると彼は何か考えだしてぶつぶつと


『あー本読むのが好きなのか……んじゃあ外で遊んだりするのは嫌だったか……?うーん……ミスったかぁ?やっちまったなぁ……もっと話を聞いてから連れ出すべきだったか……』


と彼はボソボソと呟きウーンウーン……と悩み始めた。

 

そんな彼を見て僕は勇気を出して彼に疑問を問いかける


「あのっダグラス……君 どうして、僕を遊びに誘ってくれたんですか。僕は……その……家に籠って本を読んでるだけの臆病者だから……面白い事なんてできないよ……」


 すると彼はこちらを向いて僕の目を見て言った


「アル、お前なんでそんなに自分を卑下するんだ?もしもよ、それが癖になってるんならやめといたほうがいい。その言葉や考えは将来自分が何かをしたいと思った時、自分を縛る呪いになっちまう。今日会ったばっかで偉そうな事言うようであれだけどよ、俺はお前がすげぇやつだと思うぜ。この歳で数多くの本を読んでる、本を読むのが好きってすげぇよ知識は力だからな。アルが何かをやりたいってなったときに役に立つんだ。臆病?いいじゃねぇかこうしたらこうなるかもって想像できてるって事だ。だからよ自分の価値を下げるのはやめようぜ」


と僕を柔らかい口調で諭し、僕の嫌いな所も肯定してくれた。


その言葉に僕はおもわず目に涙を浮かべてしまった。


彼はそんな僕を見て笑い、話を続ける


「カカカッ泣くな泣くな、アル!!それで俺がなんでアルを誘ったかって事だったな理由は超簡単だ!! お前と友達になりたかったからだ!!」

と彼は恥ずかし気もなく言い切った。


 僕はその言葉が、嬉しくて嬉しくて……思わず「とっ友達……」と口から言葉が零れた。

彼はさらに熱を上げて話を続ける


「アル、俺は友達がほしくてよ村の中に何人同年代の奴がいるか探したんだ。んでわかったのが村長のとこのアリスに宿屋のリザリーだけだったわけ。どっちも女の子でよ男はいねぇのかって思ったんだよ、まぁ歳の離れた奴らならいるにはいるが、皆家の仕事を手伝ったりってのがあって遊べないだろ?でもよ親父に話を聞いたら一人同い年の男の子がいるって言うんだ。しかも家の近くにだ、俺はそれを聞いた時運命だと思ったね、そいつと俺は絶対に友達になるんだ、なってやるってな!……いやまぁ……無理にとは言わねぇよ嫌だったら嫌って断ってもらって全然いいんだ……今日も強引すぎたしな……ハハハ……」


と彼はすこし悲し気に最後の言葉を言うが僕はそれに食い気味で返事を被せる


「ッ……そんなことないよッ……!僕は……僕は……うれしいんだ。いままで友達が欲しいって思ってても勇気が出なくて家から出る事もできなくて。そんな僕に友達になろうって言ってくれる人がいて……僕は嬉しいんだ……だから……友達になってください」


そう聞いた彼はさっきの表情から一転しニカッとした顔になり僕の肩をポンポンと叩いた。


「いやぁでもよかったぜ……断られたらどうしようか迷ってたからな!これで俺達は友達だな!!カカカッ」


「……ッうん ありがとうダグラス君……」


「カカカッ あと俺の事は呼び捨てでいいぜ。友達だろ?へへッ んじゃあ遊ぶぞ!!釣りか、かけっこかなんでもいいぞ!それと今度アルのおすすめの本教えてくれよな」



――これが僕と彼が出会い友達になった時の出来事だった。6歳の時だった。



 それから僕とダグラスはほぼ毎日のように遊んだ。


川で蟹を取ったり、小魚を釣ったり、虫をとったり。


最初は僕とダグラスの二人だけで遊んでいたのだが、そこに村長の娘ティアや宿屋の娘リザリーが混ざり、追いかけっこやかくれんぼもできるようになり、村長の家の隣の空き地に集まって遊ぶ事が多くなった。


 彼と遊んでいる内に感じたのだが彼と話をしたりしていると時々自分達よりかなり年上の人と話をしているんじゃないかと感じる時がある。


ティアとリザリーが喧嘩をした時に間に入って取り成していたり、僕が何か迷っているとそれの解決策のヒントをボソッと教えてくれたり、かと思えばバカな事をやって僕達と一緒に大人に怒られたり、僕を落とし穴に誘導して落としてバカにしてきたりと、言葉にはできないが不思議な感じがした。


しかも彼は時々突拍子もなく何かをしようと言い出す時がある。


例えば「職業体験するぞ」なんて言ってどこかの家の仕事を手伝うだとか、自分達より小さい子供の面倒を見て大人を楽させようとか。


「人に教えると意外と自分の身にもなるぞ!」と言い出して皆で僕の本を使ったりして勉強をしようだとか、体力作りするために村を5周するぞ!など。

なんで急に?と聞くと


「んー……将来のためだな知ってる事が多くなればやりたい事やれる事も増えてくる。あとは……皆に恩を売れるしな」と僕達じゃあよくわからない事をニヤニヤしながら言うのだ。


 そうしたことをしながら4年が経ったある晴れた日、僕達はいつも通りの空き地で集まって切り株や木材に腰かけて話をしていた。


「最近うちの子がダグラス君のところに遊びに行くようになってから、うちの手伝いをしてくれるようになったってお客さんからのお褒めのお言葉がありましたよ~」


とのほほんとした雰囲気でリザリーが手をパンッと叩いてうれしそうに話す。

その話を聞いたティアも続けて最近あった事を報告する。


「ああ、私も最近、子供たちの面倒を見てくれてありがとうねと

お菓子をもらったよ」


「うん、しかも勉強を僕達から教えてもらうだけじゃなくて

自分達で教える事もできるようになってる子もいるからね、皆がんばってるよ」


と僕が最近の皆の様子を口にするとダグラスが僕達に問いかけた。


「お前達は将来やりたい事は決まったのか?

……俺はこのファンタジーな世界を楽しむ為に

王都で冒険者になって自由に生きてくつもりだけどよ」


 ファンタジーな世界?と皆が聞き覚えのない言葉に首をかしげるが

彼がよくわからない単語を出すのは今に始まった事ではないので

ティアもリザリーもその言葉に触れる事なく質問に答える


「私はこのままこの村の宿屋を継ぐつもりですよ~

計算も料理もできるようになって楽しみになってきました~」

とリザリーは自分のやりたい事を決めているようだ。


「そうだな……私も冒険者だろうか。

冒険者といっても魔物を倒して稼ぐといったものじゃなくて、

色んな国や景色を見て回りたいとアルのもっていた本を見て強く思ったよ。

次期村長の事に関しては兄もいることだしね、どうにかなるだろうさ。

そしてティアも自分のやりたい事をしっかりと見つけ

自分と村に発生する問題まで考慮している。


 そんな皆に対して僕はまだ決まっておらず、皆の事が眩しく見え

「皆決まっててすごいよ……僕は……まだかな」と答えるので精一杯だった。


それと同時に『皆と遊べるのもあと少しなんだ……この時間を大切にしよう』とも思った。


僕のなりたい夢が見つかったのはそれから1年後のとある事件の後だった。


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