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7.指輪は内弁慶

『少しは思い出した?とにかく君は断罪されて追放されるまでが役目だった。だから全ての悪事はやってなくても君がやった事になり、周りは誰も疑わなかった。なぜなら君が()()だったからだ。』


「さすがシナリオの強制力、マジでそのまんまだ。」


 あの時、フランシソア=ミゼットが私に言った言葉を思い出す。

「シナリオの強制力・・・」

『おや?少しは気がついていたみたいだね?』

 自称神の詐欺師は私がボソッと呟いた言葉に反応して笑みをこぼす。

『ふふふ、やられっぱなしはどうかと思ってね、少しだけ君達にきっかけを与えよう。すぐに動きがあると思うから、しっかりと考えて決断するようにね。』

 男は言いたい事を言い終えたのか、スゥーと姿が消えてしまった。



(・・・どうすんの?)

「・・・どうするって、何か強制っぽいな。私は今のままでも良いんだけどなぁ。それに神様なら、私から騙し取った金を返してくれよ。そうすりゃ借金が返せるのに・・・」

(ふう、借金なんてしちゃダメだろ。)


 ・・・コイツ、ムカつく。


「お前を買うために借金したんだろが!いい加減外れろ!!」

 無理やり指から外そうとするが微動だにしない。

(やーよ!外したら海に投げ捨てるでしょ?無理無理無理、そう簡単には逃さないよ。)

 ううう、コイツ開き直りやがった!


 ぐううううううう〜


 指輪と喧嘩していると空腹からくる轟音が部屋に鳴り響く。

「忘れていた、腹が減っていたんだった・・・」

 一気に疲労感が襲ってくる、取り敢えず空腹を満たすために今日教会学校で貰った食料を持って下に降りる。

 外はすっかり暗くなっており、せっかくの休日を完璧な形で無駄にしてしまった。

「おはよー。」

 何か食べ物を作ろうと店の厨房に入る、すると店にいたヨヒムとクララがあっけに取られている。

「お、おいキア、大丈夫なのか?」

「はっ?何が?」

 クララが珍しく心配そうに声をかけてくる。

「いや、その、働きすぎでついにぶっ壊れたかと思って。」

 ヨヒムが何故か申し訳なさげに聞いてくる。


「あっ、そう言えばアンタ達さ、私が心配で何回も様子を見にきたんだって?そういう事は起きてる時にやってくれよ、そんなの見たいに決まってるじゃん。」

「あ?別に心配なんてしてねぇし!」

 クララが顔を真っ赤にして反論してくる、この毒吐女にこんな可愛い一面があるとは思わなかった。


「・・・おい?お前、寝ていたんだろ?寝ていたのに知ってんの?」

 何やらヨヒムが青ざめている。別に変な事を言ったつもりはないが・・・

「あっ、そうか!コイツが教えてくれたの。」

 私が指輪を二人に見せる、二人はこの指輪が私の借金の原因となったのを知っている。でも訳が分からないという顔をしている。

「この指輪、偽物じゃなくて呪われてたみたい、あはは。」

「「・・・。」」


 おい、何で黙る!?


「だいたいさぁ、クララが指輪の事を思い出させるからさ、ついはめてみたの、そしたら中に誰か閉じ込められててさ、私の体を乗っ取ることができるんだって。コイツ馬鹿だから乗っ取らずにまた指輪の中に戻ってんのよ?笑えるでしょ?」

「「・・・。」」


 だから何で黙るんだよ!


「キア、明日病院に行こう、私も付き合うからさ。」

 クララが哀れむ表情で肩を叩く。

「ふう、飲むか。」

 ヨヒムがグラスと酒を取りに行く、確実に現実逃避しようとしている。


 コイツら全く信じてない。


「おい、指輪、出てこい!コイツらに目にモノを見せてやれ!」

(はっ?何を言ってんの?体を乗っ取れってこと?)

 おうよ!私を可哀想な目で見た事を後悔させてやる!


「・・・。」

「ん?おい、キア?」


「こ、こんにちは  その 指輪です。キアのか らだを今、使っています。」

「「・・・。」」


 ははは、見ろ、奴らのあほツラが愉快痛快すぎる!


(もう嫌だ!戻ってよ!!)

 指輪は内弁慶のようだ、すぐに引っ込んでいった。

「ほら見たか!私は嘘を言ってない!!」

 はははは、高笑いが止まらない、久しぶりにコイツらに勝った気分だ!


「おい、呪いってマジかよ?」

「昼間と一緒だ、本当に別人じゃねーか。二重人格か何かじゃねえのか?」

 何やら二人でコソコソと話し合っている。次の瞬間、私はヨヒムに羽交い締めにされ身動きを止められる。そしてクララが指輪をガッシリ掴む、そして体がのけぞるほどの勢いで指輪を引っ張る。ヨヒムは力のかぎりに私を押さえつける。


「痛ででででででで!!もげる!もげる!!指が腕ごともげる!!」


 二人がかりで指輪を外そうとするがビクともしない。クララが音を上げた頃にようやく止めてくれた。ちなみに私は激痛から久しぶり本気泣きした、指輪より先に左腕が外れそうだった。


「・・・やっぱお祓いに教会に行けば。」

「あんなモン迷信だろ?マジモンじゃないだろ?」

 再び二人はコソコソと会議をする。

(悪いけどもう一度体を借りる。)

 人見知り指輪が今度は自主的に出てきて説明をするようだ。


「あ、あのごめんなさい。 キアには迷惑を かけないので、どうか しばらくここにいさせて下さい。」

 あれ?何で私が頭を下げているんだ?指輪が頭を下げているんだけど私が頭を下げている・・・あれ?

「・・・まあ、キアに害がないなら、別にだけど。」

 クララはやっぱりツンデレ?

「本人が良いって言っているのか?」

 ヨヒムが訝しむ目で見ている。

「うん。良いって。」

 おい!一言も良いなんて言ってねえよ!勝手に決めるな!!

「ふう、なら仕方ねえか。」

 ヨヒムが何故か納得した、私は全然納得出来ないけどな!!

(ありがと、もういいよ。)

 指輪が勝手に戻ってきた。私抜きに勝手に話を進めやがって、今から反故にしたら完璧に私が悪役じゃん!





明日も同時刻に投稿します。

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