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6.アフターストーリーが動き出す。

・・・んんん、腹が減った。


 空腹で目が覚め、ゆっくりとベッドから起きる。

「あれ?・・・何で自分の部屋で寝てんの?」

 キョロキョロする、いつもの自分の部屋だ。

「あれ?確か教会にいたはずだったけど。あれ?私の荷物も貰い物もちゃんとある」

 無意識のうちに帰ってきたのだろうか?

(やっと起きた、ちょっと体を借りたわよ)

 何やら声が聞こえる、左手の薬指を見ると例の指輪が私に話しかけてきた。


 体を借りた?


「なななな、何を勝手なことすんの!!変なことしてないでしょうね!?」

 体の隅々まで確認する、鏡を見て顔に落書きされてないかも確認しておく。

「くそ、何もしてないだろうな!?」


(キアが全然起きないから私が体を使って帰宅してやっただけだよ、ありがたく思って欲しいな)


 そう言えばコイツは体を乗っ取るとか何とか言っていたな・・・まさか!!

「本気で私の体を乗っ取るのか?」

 こうなったら薬指くらい失ってもいいから、切断してでも、


(そんな事はしないって・・いや、出来ないよ)


 ん?何だ?突然しおらしくなると困る。昨日までの声のトーンと比べてたら一気に沈みすぎだ。


(私が乗っ取って動いている時にさ、すぐにみんな怪しんでたわ・・・キアじゃないって間違いなくバレてた。貴女は寝てたから知らないと思うけど、同居してる二人が心配して何度も様子を見に来たよ)


 同居している二人ってヨヒムとクララの事か?あの二人が私の心配をするなんて信じられないが?本当なら是非見たかった。


「・・・どうした?テンションがダダ下がりなんですけど?」

(いや、まあ、昨晩は久しぶりに人と話せたからテンションが上がっただけでさ、私は人との繋がりなく指輪の中で十何年と閉じ込められてきたから。私と貴女とでは人としての重みが全然違うというか・・私が貴女として生きても、私の居場所は何処にもないのを思い知らされたから)


 これって、私が指輪をしまい込んだのがいけないんじゃないですか?

 いや、だからと言って体を差し出すつもりはないけど。



『おいおい困ったな、このまま泣き寝入りかい?』


 突然の声と共にドアの入り口付近にどこかで見たことのある男性が立っていた。

 この顔を忘れられない、この男は私にこの呪いの指輪を売りつけた・・・


「詐欺師!」

(詐欺神!)


・・・ん?あれ?「ん」はいらないだろ?詐欺師だろ?


『フランシソア、ようやくキシリアナが指輪をはめてくれたんだよ?やっとアフターストーリーが動き出してチャンスが巡ってきたのに行動に移さないつもりかい?』


なんで私の昔の名前を知っているんだ?


「つーか、アンタさ、勝手に人様の部屋に入ってくるなよ、大声あげるよ?」

 家主(実際は違うけど)の私を無視して指輪に話かけてくる男にイラつきを覚える、つーか私から騙し取った金を返せ!


『・・・君は本当にレールの上を歩かない人間だね。シナリオが終わって役目から解放されたのに、まだ近くをウロチョロとしているし、せっかく役割を振ってあげても思い通りに指輪をはめてくれないし、更にはそれをずっと放置するし、本当に理解に苦しむよ』


 うんざりした目で大きなため息をつかれた!?滅茶苦茶失礼なんですけど!?

「いや、訳わかんないし、まずは部屋から出て行けよ!」

 ムカついたので近くにあった本を投げつける。すると驚くことに本は男をすり抜けて壁へとぶつかる。

「え?・・・は?すり抜けた?」

『当たり前だよ、私は神だよ?』


 神様?こんなのが?


「えーと・・・私は女神様を信仰しているのだけど?」

『そんなの知らないよ、私が神だし』


「指輪よ、私はまだ夢を見ているようだ。とりあえず深い眠りにつくから話が終わったら起こして」

(やだよ!こんな奴とサシなんて嫌だよ!一緒にいてよ!つーか、こんな胡散臭い奴がいるのに寝るな、襲われたらどうすんだ!!)


 確かに、言われてみたらそうだ。なら味方を呼ぼう。

「おおーい、ヨヒム!クララ!いるなら来て!!不審者がいる!!」

 こういう時こそヨヒムの筋肉とクララの毒舌が役立つはずだ!大声で下にいると思われる二人を呼ぶ。


・・・あれ?何も反応がない。留守なのか?


『くくく、一応私は神だからね、この部屋だけ世界から閉鎖するなど容易いことなんだけど?』


 おいおい、マジモンかよ!

 もう深く考えるのは止めよう、多分コイツは自分に酔って聞く耳持たない自己陶酔タイプだ。

「はあぁぁぁぁ〜〜、もういいや。それで何?何の用?私に関係ないなら早いところ済まして帰って欲しいんだけど?」


『・・・あのさ、いくら神でもそんな露骨に嫌々な溜め息を吐かれると傷つくんだけど?』


 メンタルの弱い神様だな。


「あー、もう、分かったから、要件を済ませてよ。こっちは腹ペコなんだよ」

 そう言うとメンタル弱々神は改まって私の方に向く、

『君はフランシソア=ミゼットについて何も疑問を持たなかったのかい?異様に人から好かれて、努力もせずに君の唯一の自信だった努力を凌駕したことを』


 ・・・確かに。

 隠れてコソコソと勉強していたのかと思っていたけど。


『それが全て作られたシナリオだったらどう思う?君がどんなに頑張って努力しても勝つことはない、限りなく不条理な出来レースだったら?』


 嫌な過去が思い起こされる、どんなに頑張っても勝てない不条理さに癇癪を起こして周りに当たり散らかしたのを覚えている。


『全ての罪が君一人に背負わされたのにも実は気がついていたはずじゃないかい?』


 何だろうモヤモヤしたものが晴れてきた気がする。


 あの時の私がやったような曖昧な記憶だった。ちゃんと自分がやった事は覚えている、彼女のノートを破ったり、教科書を捨てたとかは覚えている。だけど階段から突き落としたり、毒を飲ませようとしたとかは全然覚えていない。全部私がしたことにされたし、やった気もした。

 その頃の私は孤立していたから私の言葉を誰も信じてくれなかったし、誰も私を助けてもくれなかった。


『思い出してみなよ、階段から突き落とされたのに、彼女はケガ一つして無かっただろ?』


 ・・・あれ?そうだったか?


明日も同時刻に投稿します。

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