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4.おしゃべりな指輪

「指輪に慰められるなんて・・もう私は人として終わっている」

 世の中にドン底より下に奈落があるなんて思わなかった。


(ちょっと待って、私は指輪だけど指輪じゃない!!)

「・・・へ?なぞなぞ?」

 何だ?この指輪は私より頭が良いのか!?

(なぞなぞ違う!えっと、私は元々は人間なの。神とか名乗る胡散臭いクソ野郎にこの中に閉じ込められたの!)

 本当に口の悪い指輪だ、出来ればすぐに廃棄して海に捨てたい。

(あ?)

「何でもないッス」

 今日、私は指輪の舎弟になった。

(まず最初に私の名前はフランシソアっていうの)


ほ?・・・フランシソア?


「フランシソアだと?私の思い出したくもない女の名前じゃないか!!クソ指輪め!もう金はいいからぶっ壊して捨ててやる!!」


 ガンッ!!


「痛ってえぇぇ!!」

 机に思いっきり指輪をぶつけるが自身に大ダメージを食らう。

「くそおおおぉ、何なんだ!!」


(ちょっと待て、私の話を聞けって!)

「ちょ、痛たたたた、待って、やめれ!指が千切れる!」


 なんて指輪なんだ、気に食わないとすぐに締め付けやがる!間違いなく呪われているよ!

(話を聞く?)

「・・・はい」


(貴女そのフランシソアっていう女に相当に酷い目にあってきたのね。同じ名前だけに申し訳ないわ)

「まあ、酷い目にあったというか・・・結局は、まあ、その、自業自得なんだけど」

 言葉を濁す、思い出すだけで自分が惨めになる。


(私もさあ、神とか名乗る詐欺野郎と、私の身体を乗っ取ったチヒロとかいう頭カスカス馬鹿女に酷い目にあわされたのよ。奴らのせいで十何年も指輪の中に閉じ込められたのよ!!)


・・・十何年も指輪の中に?


「あの、もしかして、私がずっと棚の奥に放置したから?」

 少し罪悪感を感じてしまう。

(あ、いや、閉じ込められたのは15年ぐらい前だと思う。母さんが死んで、突然父親と名乗る貴族に引き取られるって言われた後に閉じ込められたから、貴女は全然悪くないわ)


・・・ん?貴族?貴族でフランシソア?まさかね、


「ねえ、ちょっと聞いていいかしら?貴族ってもしかしてミゼットとかいう家名だったりする?」

(うーん、確かそんな名前だった気がした。私からしたら何か他人事だったしね、いきなり貴族って言われて何ソレって感じだったわ)

 どういう事?フランシソアはフランシソアじゃないの?


「えっと、じゃあ、信じられないけど、フランシソアは知らない誰かに中身を乗っ取られていたという事?」

(そう!それ!そういう事!チヒロとかいう頭悪そうな頭カスカス女が「やべー!異世界転生じゃん!」とか訳わかんないこと言って私の体を好き勝手しやがったの!)


 異世界転生?なんじゃそれ?訳分からん。


(本当に訳わからん、好き勝手やった挙句に私を海に捨てやがったのよ!!あの女マジで許さねえ!!)

 指輪の口がどんどん悪くなっていく、そこらのチンピラよりドスがきいている。


 なぜ私の周りにはガサツな女しかいない。


(聞いてよアイツ!私のかわりにフランやってやるからどっか行けって言いやがったのよ!!何なの!本当に何様なのよ!!)


(その後はしばらく海を漂っていたと思う。そのうちに誰かに拾われたんだけど、それが胡散臭い自分を神とか偉そうに名乗る怪しい男よ?全部そいつが仕組んだとかふざけたことを言ってさ!)


(役目を終えた用済みの体を使わせてやるから、復讐するチャンスをくれてやるとか偉そうに言うの!)


(ストーリーが終わったら役目は終わりだから何しても良いって、さらに面白い結末を見せてくれとか馬鹿にした言い方しやがったのよ!!)


(ちょっと聞いてる!?大事な話なんだからちゃんと聞けよ!!)


(おい!!寝るな!!)


 ははは、すでに外が明るくなり始めたよ。朝イチで仕事なのに・・・この指輪は延々と呪い節を捲し立てている。

「もう、私を寝かせてくれ。」

(まだ言い足りない!起きてよ!!)




「何だ?珍しいな、自分で起きてくるなんて」

 朝、仕事のために起きて行くとすでにヨヒムが起きていた、私が自発的に起きてきたので驚いているようだ。

 結局、昨晩は指輪の話を聞かされて徹夜してしまった。相変わらず指輪は外れない、後で外す方法を相談しよう。

「今日は休みなのに早いね」

 今日は世間一般は休日、ヨヒムの酒場も同様に休みのはずなのに。

「あ?ああ、朝まで飲んでた、これから寝るんだよ。」

 お前も徹夜したんかい!?

「ホレ、メシ。んじゃ、おやすみ」

 乱暴に包みに入った弁当を渡される。どうやら私の分を作っておいてくれたみたいだ。アクビをしながら奥の部屋に入っていった。


 ヨヒムは優しいのか厳しいのかよく分からない。


「何だ出かけんの?」

 店の外から声が聞こえる、クララが目の下にクマをつくりボサボサの頭のまま入ってきた。

 どうやら交易センターも今日は休みのようで、クララは久しぶりに帰ってきた。

「これから教会学校」

「ああ、そうか、今日は休日だから学校か・・・ああ、ダメだ、私はもう寝る」

 クララの方から聞いたくせに興味なさげに階段を登って自室に入って行く。これから寝れるなんて本当に羨ましい。



 外へ出ると徹夜明けには厳しい太陽の光が私を襲う。

「はぁ・・・行くか」

 とぼとぼと大通りへ向けて歩き出す。

(ねえ、教会学校って、貴女そんなに馬鹿だったの?)

 指輪がとても失礼だ。

「違うし、私が先生だし」

(ええ!?嘘だぁ)

 本当に失礼だ、もうお金に変えなくていい、指から外れ次第すぐに海に投げ捨ててやる。

「これでも私は頭は悪いけど、勉強だけはできるって褒められたんだから!」

(・・・それは褒められて無いと思う)


 え?・・・そうなの?



続きは土曜日に投稿します。


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