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不死鳥令嬢は何度も翔ぶ  作者: 辰芝祝
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説教からの心機一転


朝起きて、頭が痛いのはたいていが二日酔い。昨日は馬鹿みたいに飲んでしまったから、特に痛い。

頭が痛いので水を飲もうと洗面台に行くが、この部屋はキッチンはなかった。そうだった。家変わったんだ。嫌だな。外出るの。移動したくない。私は寝巻のまま外に出て、共用のキッチンに行った。そこで水道を独占しようかと思ったが先客がいた。



「ああ、頭いて~~。」


「あ、ティム。あんたも二日酔い?」


「ハーニャか?そうだよ、昨日の酒だ。お前と一緒の酒場にいたんだよ。」


「私と一緒か。」



青い髪に茶色い瞳。昨日帰って来た時と同じ服装であろう格好をしているこの男はティム・マクマホン。このアパートの1号室に住んでいる若い冒険者である。本来このアパートはお金に困っている人か何らかの事情がある人が住んでいる人が多い。この男は酒、煙草、女、借金と破天荒な要素満載の冒険者である。つまり、お金に困ってこの宿で暮らしている。


ちなみに私は6号室に住んでいる。


ここのアパートの住人とは何人かとは挨拶し、そのうちの仲良くなった住人の一人がこのティムだ。



「気分わりぃな。今日は仕事休もうかな。」


「今日はクエストないの?」


「あるよ。けどサボる。パーティーメンバーが宿に来ても俺は部屋から出ない。」


「パーティーメンバーから追い出されるんじゃないの?大丈夫?」


「まぁ、そん時はそん時だな。……しかし、気分わりー。」



そう言って共有キッチンの床に倒れてしまった。なんだろ、こいつなかなかの人間ね。屑っぽいけど憎めないところがあるね。でも、なんだろ行動パターンが私に少し似ている気がするのよね。それだけがなんか腑に落ちないけど。だって私も今、気分悪いんだもの。私も水道から水を出してコップに水を入れて飲んだ。すると、



「お兄さん、お姉さん。こんなところで何してるんですか?」



振り向くとそこには白いワンピースを着たかわいい女の子が立っていた。確かこの子は3号室に住んでいるスズちゃんね。確か11歳って聞いた。子供なのにおとなしくて、かわいらしい子なのよね。スズちゃんは手にコップと歯ブラシを持っている。どうやら歯を磨きに来たようだ。



「邪魔だったね。ごめんね。お姉さんが水飲んだらすぐにどくから。」


「いいですよ。スズは待っていますから。スズが気になるのはどうしてティムお兄さんは床で倒れているんですか?床は寝るところじゃないのに。」


「ティムは……ほっといていいよ。床なんかでなる馬鹿はほっておきましょ。」


「おい、ハーニャ……、なんてこと言う。後、スズちゃんおはよう。今日もかわいいね。」


「あんまり妹に変なもの見せないでくれませんか。後口説かないでください。」



スズちゃんの次に現れたのはまたしても子供だった。スズちゃんに負けないくらいかわいい男の子サミー君。13歳。スズちゃんのお兄さん。この子もまたしっかりした子で大人顔負けのまじめさがある。妹大好きなお兄ちゃんであり、将来はイケメンになること間違いない顔をしている。サミーは床で倒れているティムをさげすむような眼で見ながら、妹の前に立った。



「いい大人がどうして床で寝ているんですか?妹に恥ずかしい姿を見せないでください。変なのが妹にうつっちゃいますから。」


「おい、俺をばい菌みたいに言うな。だらしない姿見せて何が悪いんだよ。お前らが思っている以上に大人ってだらしないからな。」


「ですけど、妹に対してはお手本となる行動をしてください。そして、ハーニャさん。あなたもですよ。」


「え、私?」



私なんかしたっけ?スズちゃんとはまだそんなに関わりがないんだけどな。だって来て今日はまだ3日目なんだけどな。



「ハーニャさん。聞きましたよ。貴方、昨日採掘場に1人で入って死にかけたって聞きましたよ。なんでそんな危険なことするんですか?」



まさか子供にも知られているとは!あの行為ってやっぱり危険だったんだ。反省します。というか子供でも知っていることを私は知らなかったなんて私って相当な馬鹿ね。



「それから昨日飲みすぎて、ベロベロに酔っぱらって大騒ぎしながら夜中帰ってきたでしょ。あれで僕たち目が覚めてしまったんですよ。」


「それはごめんなさい。私が悪かったです。」



記憶にないけど私は昨日騒いで帰ってきたらしい。ここに来てから私は迷惑しかかけていないような気がする。本当にこれは申し訳ない。私はキッチンの床に土下座して兄妹に謝罪した。



「大の大人2人が床に寝そべったり、土下座したりしないでください。みっともないですって。」


「ウフフフ。」


「スズ。こんなだらしない大人は見ちゃいけないよ。後、笑っちゃダメ。」



朝から子供にこんなに説教されるとは。私、子供に胸張れるようなことしないといけないな。今日から頑張るぞ!!




****************************************




「で、朝から説教されて、気合を入れて今日来たというわけか。」


「だってあれだけ子供に言われたんだから、しっかりしないといけないって気づかされたのよ。私、今日から頑張るから。ジョゼも頑張ろう!」


「はぁ~~。じゃ、やるとしますか。でもな、2人でも危険なんだよ。1人は論外だけど、2人は最低限ですらないんだよ。最低限4人はいるな。」



現在私は緑の作業着に着替えて、大きなリュックとつるはしと剣を持って採掘場の集会場にいる。多くの冒険者や労働者が私たちを見ている。昨日伝説を残した私とここで大騒ぎしてパーティーメンバーから脱退した2人が一緒にいるのだから、そりゃ見たくなる気持ちもわかるよ。



「借金の金額から考えると、素材をいっぱい集めるでは絶対にお金はたまらない。かといってモンスター倒して稼ぐにも戦力不足なのよ。最終的に死んでしまう可能性がある。だから私たちがやるのは、モンスターを避けて開拓に専念して、一獲千金のお宝を見つけるしかない。」


「それは分かるんだけど。何をするんだ?」


「この金額の借金を返すには”ヘル・ダイアモンド”。これしかない。」



”ヘル・ダイアモンド”。それは地獄でできたといわれるものすごく価値のあるダイアモンド。危険なところにしかなく、見つけた人間が数少ない。実はここのウォーレット採掘場にあるかもしれないという話はあのむかつく野郎のダリフから初日に聞いていた。どうやら本体は見つかっていないけど欠片は見つかっており、その欠片だけでも何千万もの大金になるというのだ。欠片で何千万ということは本体はもう私の借金を超える金額になるということだ。それは探すしかないでしょ。


しかし、その欠片というものも何十人もの一流冒険者と労働者が一緒に行って危険地帯を潜り抜けて大掛かりで作業してやっと見つけたものだという。そんなの私たち2人で大丈夫かという意見もあるだろう。

本当はもっとメンバーを集めたかったけど、残念ながら集まらなかったの。みんなそれぞれのパーティーに所属しているから私のところに来てくれないの。しかもコネも実力もないから協同戦線を組むこともできない。つまりいろんなとこからいらない扱いされているのだ。


ちなみに労働者は冒険者のサポートとして、ついていって作業でいるがお金の取り分は圧倒的に少ない。私はそれを初日に聞いてそれは無理だなと思い、今自分のグループを作ろうとしているがどこも来てくれない。というかジョゼが仲間に加わってくれているだけでも奇跡なのだ。


というわけで、ジョゼにそれを提案した。しかし、



「馬鹿か!お前!俺が前いたパーティーでもそこはいかなかったぞ。」


「前いたところは遊びだったんでしょ。だったら私たちは命を懸けて危険なところに行かないと大金を手に入れることはできないの。分かる?だったらもう行くしかないでしょ!」


「お前昨日はいって死にかけたんだろ。だったら分かれそこは危険なんだ。2人でも危険なのに”ヘル・ダイアモンド”がありそうなところはもっと危険だぞ。死ぬぞ。確実に。」


「私だってこのまま金が返せないと返す能力なしとみなされて殺されてしまうかもしれないんだよ。あの会社ならやりかねないよ。だからいつ死んでもいい覚悟であの採掘場に臨まないと、このまま何もできずに終わってしまうわよ。」



私はジョゼの目を見て、しっかりと説得しにかかった。昨日みたいな泣き崩しではなく、私の魂を込めた思いをジョゼにぶつけてみた。するとジョゼは私がふざけておらず、まじめに言っているということが分かったのか、ため息をついて答えた。



「分かったよ。あんたについていくよ。どうなっても知らねーからな。」



私は笑顔で答えて、そして採掘場に向かった。



どんな感想でもいいのでお待ちしております。

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