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不死鳥令嬢は何度も翔ぶ  作者: 辰芝祝
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初日に死にかけ、そして伝説へ


どうも、私はハーニャです。私は今ラーミアスという町に来ています。


この町はウォーレット採掘場の隣にある町であり、このラーミアスという町はウォーレット採掘場で働く労働者や冒険者が多く住んでいる町なのよ。私は昨日、怖いお兄さんたちに誘拐された後、むかつく野郎に奴隷契約書をサインさせられて、この町にある一番安いアパートを紹介されて今に至る。


キッチン、トイレ共同。風呂なし。ベットと机くらいしかない部屋、隣の声が聞こえてしまうくらい薄い壁。しかも事故物件。まったくとんでもないところを紹介してくれたものね。



そんなアパートが私の家となり、今日から私は奴隷として、バルモス紹介のため働く奴隷にならないといけないの。そして今日がその初出勤日です。ウォーレット採掘場にはつるはしを持って労働者と、採掘場に住み着くモンスターを駆除する冒険者がたくさんいる。


ここでは冒険者たちと労働者がパーティーグループを作って素材を集めたり、モンスターを退治したりとする。そのためいくつものグループがあるのだ。


このウォーレット採掘場。10年前にバルモス商会が見つけ、鉄鉱石や石炭もたくさん採れるがそこからたくさんの素材やお宝が発見されたことからここをバルモス商会が買い取り、現在もその開拓が進んでいる。中には数百万から数千万の白物も発見されたというまさに一攫千金にはもってこいの場所だ。


しかし、ここはそんなにあまくはない。過去何人もの労働者や冒険者がなくなっているというのだ。モンスターに襲われたり、事故にあったりで毎年多くの死者が出るというのだ。


本当ならば私はこんなところで働きたくなんてないのだが私は会社の奴隷。こんな危険な職場で働かないといけないのだ。緑の作業服を着て、分厚い靴を履いて、つるはしと剣と大きなリュックをもって宿を出て出発した。本当なら行きたくなんてないのだが、私には少し自信があったのだ。


というわけで、私は採掘場の受付に行って、そこにいる受付嬢と話した。



「あなた、一人で行かれるのですか?」


「だってぼっちだもん。」


「危険ですよ。本来なら冒険者とパーティーを組んで一緒に行くものなんですが……。」


「任せなさいって。私だってそこそこ腕は立つんだからね。剣も使えるし、回復魔法だって使える。だから私を通しなさい。」


「わ……わかりました。ではお気を付けて。」



採掘場の入り口は全部で5つある。これは別に難易度があるというわけではなくどこからでも入っていいということらしい。私は一番左にある大きな穴のある場所の前に立った。私だって貴族時代に磨いた剣の腕と極めるところまで行った回復魔法を使ってこの炭鉱を制覇してやるんだからね。よし!行くぞ!


なんだろう……周りにいる冒険者や労働者が全員私に手を合わせている。私の無事を祈ってくれているのかな?





1時間後、



「無理、無理、無理、無理、無理、無理、無理!!帰る、帰る!」



私は採掘場の中をわめきながら走り回っていた。私の後ろには人ぐらいある大きな蛇や蝙蝠が私を追いかけている。しくった!私が貴族時代に習っていた護身術はすべて対人間のものだった。つまり大きな蛇や蝙蝠のモンスター相手には効くわけがないのだ。完全に盲点!


しかも私は攻撃魔法と呼ばれるものは全然使えない。使えるのは回復魔法しかも少しのけがなら治せるけど大きな怪我は直せる保証はない。つまりこのままでは私は死んでしまうということだ。



「やだ~~~!死にたくない!」



まさかこんなにもこの中が厳しい世界ということを知らなかった。私は走り回り、追ってくるモンスターから何とか逃げ切ることだけに専念した。自慢ではないが私の体力は令嬢時代の時と比べて、格段に上がっている。そしてそのまま採掘場の入り口向かって走り、何とか出ることに成功した。


採掘場にいるモンスターの大半は外の太陽の光が苦手のため出ることはできない。私が後ろを振り返るとモンスターたちはあきらめて奥に戻って行った。



「はぁ、はぁ、はぁ……。疲れた。」



採掘場の入り口で私はあおむけになって倒れて深呼吸をした。まさか初日にこんな死にそうな目に合うなんて思いもしなかった。冒険者や労働者たちが私の周りに集まって、ざわつき始めた。何事かと思い、私はそばに通りかかった大剣を持った若い冒険者の男に話しかけた。



「ねぇ、なんで私の周りでこんなにざわつき始めているの?」


「そりゃ、この採掘場に女性1人で入った奴はお前が初めてだからな。男ですら1人で入らないからな。お前、バルモス商会の奴隷にされた奴だろ。だから俺たちはお前が今日この採掘場に1人で来たから、自殺しに来たんじゃないかと思っていたら、1時間たってお前が無事に生きて帰ってきたから全員びっくりしたってわけさ。お前、すごいな。」



後々に分かったのだが、どうやらこの採掘場、1人で入るのはご法度らしい。よっぽどの腕利きじゃないと死んでしまうらしい。私はどうやら女性では初めてのソロ探索者だったらしく、あの採掘場で1時間生き残ったのはどうやら偉業だったらしい。私は初日にして伝説を作ってしまったらしい。でも、死にかけたけど何にも取れなかったから報酬はゼロ。マジで最悪。




**************************************




「お前の根性は称賛するけど、俺たちは無理だ。」


「すまんが他をあたってくれないか。」


「今は募集していないんだ。また今度な。」



あの洞窟の一件で私は仲間を集めないとマジで死ぬと分かり、採掘場の集会所で急いでいろんな冒険者パーティーに話しかけたが全員に断られた。残念ながら私はそれと言って優れたところがあるわけではなく、力のない女性ということでだれからも相手にされないのだ。あの生存伝説はいろんな人に知れ渡り、私の名前は知ってくれるようになったけど、みんな私を仲間には加えてはくれないのだ。


どうしよう。借金返す以前に私ここで働けないよね。このままでは私死んでしまうよね。まずここで必要な人材は私を守ってくれる冒険者。私はひたすら素材などを集める労働者兼回復担当に徹することにする。でも私のために体張ってくれる冒険者はいないかな……。



「俺の取り分、おかしいだろ。」


「何がおかしんだよ。お前の働きに応じて渡してやっているだろ。何が不満なんだよ。」


「俺は今日、めっちゃ敵を倒したぞ。お前は一匹も倒していないのにどうしてお前の取り分が多いんだよ。」


「ジョゼ、落ち着け。君は疲れて入れ、冷静な思考ができていない。」


「そうよ。落ち着きなさい。」



言い争いをする声が聞こえ、その場所を見てみるとそこでは高価な装備を全身につけている冒険者と弓を持った冒険者、魔法使いみたいなお姉さん。そしてさっきから叫んでいる労働者みたいな姿の剣士の若者が立っていた。



「労働者の俺がモンスター退治から採掘から全部やってんだよ。お前ら後ろで遊んでいたじゃないか。」


「ジョゼ、パーティーメンバーになんてこと言うんだ。」


「おまえ、いい加減にしろよ。」


「ちょっと、喧嘩はやめて。」



3人の男が一触即発の状態になっている。それも魔法使いのお姉さんが止めようと必死になっている。3人はどうやら報酬のことでもめている。何か不満があったのだろうか。それにしてもお金の争いほど醜いものはないね。そういう私は今、お金がなくて苦しんでいるのだけど。



「もういい、ジョゼ。お前はクビだ。このパーティーから出ていけ!」


「ああ、出ていくさ。じゃぁな!」



そういうと喧嘩をやめてジョゼという男はそのまま集会所から出て行った。残った3人は喧嘩が収まったことにほっとしつつ、周りに騒がせして申し訳ないといった感じで周りに謝っている。


謝っているパーティーグループから今、人が出て行った。つまり私がそこのパーティーグループに入れるかもしれないと思っていたが、わたしはそこのパーティーグループよりもさっき出て行ったジョゼという男のほうが気になった。なので私は3人組のところには向かわず、外に出て行ったジョゼを追いかけることにした。


追いかけていくと、明らかに不機嫌オーラが満載の男が町中を歩いていた。今話しかけたら切り殺してやるぞという怖い雰囲気を漂わせている。周りの人も気を使って距離を置いているじゃない。でも私はこんな時でも空気を読まずに話しかけることのできる女なのよね。



「そこ歩いている、赤髪のジョゼお兄さん。」


「はっ?なんだ。」



明らかにイラつきながらにらむように私を見ている。でも怖くなんかないよ。私は今日の昼にもっと怖い目にあっているからね。モンスターの大群と比べたら全然怖くもない。で、このさっきからにらんでくる男に私が何をするのかというと。



「私と一杯やらない?おごってあげるよ。」



そう、逆ナンである。



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