いきなりですが借金地獄に堕とされました(ハーニャの過去 中)
今日も土木の仕事が終わって気分良く帰ることにした。
散々働いたからな、いやぁ~、疲れたよ。私は帰り道酒場によって大好きな酒『テオブルック』(アルコール度数40%)を買って、私は家に帰った。
私は現在一人暮らしをしている。元住んでいた屋敷は追い出され、一文無し。安い宿で暮らしている。初めは不平不満の嵐だったが、今ではこの暮らしでも悪くないかなっと思っている。いろんなものがない、いろんなものが足りない。ずっとそう思っていた。
けど違った。私の家にはいらないものが多すぎた。あれは満たされていたのではなく、多すぎたんだと後になって気づいた。そんな感じで平民生活にそれなりの充実感を覚えている。
ちなみに私の今の格好は緑の作業着に鉢巻きに作業靴姿。もう令嬢の面影など一切ない。この2年間でこんなに変わってしまうよ。人間は環境の変化にすぐ対応できる動物だからね。私も例外じゃないよ。
そして私は扉の前についた。狭い自分の部屋だがここが私に安らぎの場所なのだ。早くお酒を飲んで酔っ払って、ご飯を食べようと思って部屋の扉を触ると鍵が開いていたのだ。おかしい。私は出る前にかぎを閉めたはずだぞ。まさか泥棒??私の家には盗むものなんてないぞ。
まだ部屋の中に泥棒がいるかもしれない。だったらここは舐められちゃいけないから、ここは怒鳴り込んで威圧して怖さを教えてやればいいんだ。そう思って私はできるだけ怖い顔をして大声を出す準備をして勢いよく扉を開けた。
「おい!!コラッ!!コソ泥が!!誰んちに盗みに入ってるんだよ!!いい度胸だな!!この……。」
大声を出してできる限り怖くして勢いよく入ったが、私の勢いは止まってしまった。なぜならそこには屈強な体の刺青を入れた怖いお兄さんが3人が大声で入ってきた私をにらんでいるからだ。しかも誰も私にビビっておらず、むしろかわいそうなものを見る感じで私を見てくる。やめて、反応しなのは逆に恥ずかしいから。……じゃ、なくて。
「ねぇ、あんたたち何者なの?早く出ていって!ここは私の家よ。早くしないと自警団を呼ぶわよ。」
「呼ぶがいいさ。」
私の後ろからすっときれいなスーツを着たイケメンが来た。金髪に青い瞳。うへ~、結構なイケメンね。これは何人かの女性が落ちるわね。身なりからしてそこそこ稼いでいる商人みたいな格好をしている。もしかしたら商人なのかもしれない。にやにやしながらポケットに手を入れて私を馬鹿にするように見てくる。
「何よ、あんた?」
「おっと、これは失礼しました。私はバルモス商会の人間です。ハーニャ・ロックフォードさんですよね。」
バルモス商会。確か鉄鋼、農業、開拓を生業とする商会だった気がする。私は関わったことないけど父上は昔関わってた気がするけど……そんな商会が何の用?
「非常に残念なお知らせだよ、ハーニャ。君は借金持ちになったんだよ。それも巨額の借金をな。君はいろいろと悲しいな。」
「え、それはどういう……」
「つまりだな、両親の借金が君に移ったってことだ。」
お父様とお母様の借金が。どういうこと?ますます意味が分からない。何があったの?
「なんだ、聞いていないのか。君の両親はな、詐欺に手を染めてお金を稼いだんだ。」
「えっ?お、お父様、お母様が。」
「詐欺で金を稼いでいたんだけど、残念ながら捕まってしまったんだ。そしてその損害賠償と今までの借金がすべてお前が支払うことになったんだ。君が不幸なのは分かっているがこればかりは仕方ない。さぁ、行くぞ。」
「ちょっと待って、信じられないわよ。私の両親がそんなことするわけないじゃない。」
「現実だ。受け入れろ。これが新聞だよ。」
商人から新聞を渡された。そこに書いてあったのは、
『元名門一家のロックフォード夫妻が詐欺の疑いで逮捕。その被害は多数に及ぶ。』
え?なにこれ?本当に私の両親の話なの?新聞を読んでいくと、詐欺の内容が書かれている。両親は違う町で新たに商売を始めていたそうだが、そこでありもしない商品を売ったり、違法なものを売ったり、貴族の間で賄賂があったりと数々の悪行が書かれている。そして最後、犯人からの反論としてこう書かれている。『私は騙された。これは私がやったのではない。私ではない。』と容疑を否定している。
…………。だから私言ったじゃん。上級貴族にいい人はいないって。絶対犯罪の片棒を担わされているって。散々言ったよね。本人に言っていないけど。まさかこんな重大な犯罪に手を染めているとは思わなかった。
あまりにも現実離れした内容に私は何も反応できず、ただただ新聞を見たままフリーズしてしまった。
「本当に知らなかったようだな。残念だけど、これが現実だ。君の両親は捕まった瞬間、支払い能力がなくなってしまったが、親族の君にはある。というわけで君は今から借金と損害賠償を払わないといけないのだが、並大抵のことでは借金は返せない。だから私たちと共に来てもらおうか。」
「借金はどのくらいあるの。私が払えれる金額ならここで払ってやるよ。いくら?」
「6億ゼルス。」
……。今なんて言った。え?6億?何それおいしいの?
「意気揚々と財布を出したけど、その薄っぺらい財布に6億ゼルスが入ってるのか?ん?もしかしてそれは魔法の財布なのかい?だったら早く出してくれよ、6億ゼルス。あるのかい?」
「……ありましぇん。」
「よしなら我々のところに来るがいい。もしかしたらお金を返す方法があるかもしれないよ。無論、拒否権などないけどね。じゃ、お前たち連れてこい。」
私は刺青だらけの屈強な男に両手をつかまれてそのまま引きずられるように部屋から出された。買ったばかりのテオブルックはそのままほったらかしにされ、連れていかれた。
私はというと親が捕まったことより6億の借金のほうのショックが大きすぎて、力が抜けて呆然としていた。この後どうなっちゃうんだろ。怖い。