突然ですが実家が没落しました(ハーニャの過去 前)
引き続きよろしくお願いします。
私、ハーニャ・ロックフォードの波乱万丈物語の始まり、始まり。
私の家族っていうのは、ロックフォード家って言っては商売だけで成り上がった商人一家なのよ。お金をどんどん稼ぎ、ついにその財力と貢献が国に認められて貴族の世界に入ることを許され、下級貴族ですが貴族を名乗ることを許されるようになったんだ。それがいまから30年前の話。
で、それが私の祖父ジェームス・ロックフォードが成し遂げた偉業なのよ。すごいでしょ、小さな商人が貴族にまで成り上がったんだから。絵にかいたような成り上がり人生だった上ってわけなのよ。
それから祖父が亡くなり、お父様が家を継いで引き続き頑張っていたんだけど、今から2年前に我が家に大打撃を与える事態が起こちゃったんだよ。そう大不況。商人たちに大打撃を与えていくつもの店が倒産し、それは私の家も同じだったの。
これにより我が家は貴族という地位につきながら没落してしまって、数々のロックフォード家の会社がつぶれてちゃったの。そして国からの信用も失って私たちは貴族社会からも追放されてしまったというわけ。
おかげで決まっていた縁談もなかったことになり、仲の良かった友人も私の前から綺麗さっぱりいなくなってしまったのよ。ホント、悲しいやら、恥ずかしいやらよね。
これが私の初めての絶望よ。そして次は家族と別れるはめになったの。
私の家は父、母、私、弟の4人家族なのよ。没落後なんだけど、私の弟は国から才能を見込まれて引き取られたんだ。才能っていうのは頭脳とか剣とか魔法とかが優れていたんだよね。つまりは全部優秀だったの。だから優秀な人材だから国が引き取ったってわけさ。ホント、素晴らしい弟よね。
ん?私?女はいらないって言われて放り出されたよ。何言っても聞き入れてくれなかったのよ。あんときはマジでムカついた。
そして父上と母上なんだが、昔お世話になった貴族が新しい商売紹介されたから、私を置いてそこに行ってしまったのよ。私を置いて。あれはびっくりした。私が朝起きたら私の荷物以外全部なくなっていて、置手紙があってこう書いていたの。
『昔お世話になった上級貴族の当主から仕事の紹介をされた。訳あってハーニャを連れていくことはできない。でも、借金を完済したらすぐ戻る。だからいい子で待ってておくれ。
愛しているよ ハーニャ。』
訳あってって完全に怪しい仕事じゃねーかよ。私の15年間の令嬢生活から言えることは上級貴族にいい人などいない。絶対犯罪の片棒を担わされているじゃねーか。でも、どこに向かったかは手紙には書かれていないから私は向かうことができない。というわけでここから私は令嬢ではなく平民として1人で過ごすことになった。
そこから約1年、私は人生で初めて働くということをしたんだ。今まで貴族としての勉強や淑女としての作法しか学んでこなかったから初めは悪戦苦闘したな。皿なんて洗ったことないから、皿洗いすらできない。もう怒られてばっかだよ。私が今まで習ってきたことって言いなかったんだなって少しショックを受けた。誇れたのは読み書き計算が少し優れていたぐらい。
いろんな仕事したわよ。いや、もう大変だった。やったことないことばっかりだからこの1年本当にしんどかったわ。生活のすべてをするってこんなに大変なのね。改めてメイドや執事ってすごい人たちなんだなと思ったわ。また会えたら死ぬほど感謝したい。
あ、そうそう。酒の味を覚えたのよ。私って意外に酒豪だったらしく。仕事仲間に誘われて飲んでみたら意外にお酒っておいしいということを知ってしまったのよ。私は紅茶と甘いお菓子しか無理と思っていたのに今となっちゃ、酒と塩のきいたつまみが好きになってしまった。
あと、煙草ね。あれは吸うべきものじゃないと思っていたけど、仕事終わりに吸う煙草をおいしいと感じてしまった私はもうけがれてしまったのかなと思ったけど、これはこれでいいかなと思うようになった。
だから生活もめちゃくちゃ変わった。昔はお友達の令嬢たちと紅茶を飲みながら「ウフフ、ホホホ」と笑いあっていたのに、今じゃいろんな人たちと酒を飲みながら「ガハハハッ」と高笑いしあっている。なんだろう、今までの生活も楽しいことはあったはずなんだけど、こっちの生活はなんだか縛られていないというか自由を感じられる。もしかしたらこっちのほうが性に合っているんじゃないかと思っている。
ここまでの話で私が本当に貴族令嬢なのかと思った方々もいるだろう。まず、言葉遣いが荒いと思う方もいるだろうが、こっちの生活の人たちは基本言葉遣いが荒い。それが移ってしまって、今じゃ私もこんな感じ。おかしいな、昔の私はもっとお淑やかだったはずなんだけどな。
この時点では私はただの平民だったのよ。貧しいながらもそれなりの暮らしをしていたし、楽しかったんだけど悲劇は今から1ヶ月前にさかのぼる。あれは私の3回目の絶望よ。
ここからは、当時どんなことが起きていたのかを知ってほしいから、私視点の話に戻すね。