法力護國隊 -魔法少女、戰中ニテ-
初投稿の妄想駄文。とりあえず吐き出しておく。
書ける人って凄いんだなあって思いました
読み切りの短編みたいなものとして見てくださいな
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防衛戰闘詳報
戰闘経過ノ概要
一九**年*月*日
戰果
(イ)敵機撃墜機数 確認セルモノ三機
空襲警報發令サレルルヤ
全兵力ヲ以テ機ヲ失セズ**軍第一線ニ対シ射撃ヲ実施
**軍曹以下四名満ヲ持シ一發必中ノ信念ヲ以テ此ヲ迎撃スベシ
同刻
法女 愛花 出撃ス
錫杖ヨリ發ス波状法力命中ニ依リテ敵機三機ハ煙ヲ上ゲ墜落セシ
我方ノ損害ハ無シ
検閲済
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20**年。
乙城愛花1*歳はいわゆる「魔法少女」と呼ばれる存在であった。
愛花がそれに成った切っ掛けは至極単純なものである。
異界より魔物が現れ、愛花の通う学校の生徒を襲い、次いで人語を解する猫のような動物が現れ、“たまたま”そこにいた愛花を魔法少女にした。ただそれだけのことだった。
「あぁ...疲れたよぅ...」
愛花は“争い事”が好きではない。クラスメイトが喧嘩していれば(どうかこちらに飛び火しませんように...)と考えるし、歴史の授業で戦争の話をされると(なんで昔の人はこんなことしてるの~)などと考える。
そういうタイプの“好きではない”だ。
「やったね愛花!初めての戦いでこんなに安定して魔力を扱えるのはかなりの逸材だよ!」
前述の猫のような動物...ビオラが言う。
「とは言え、魔法少女に成れる人材は限られてる。そもそも大半の人間は魔力を感知することすらできないんだから」
「そうなんだ...ところでビオラ?この...魔法少女の衣装?これどうにかならないの...?」
「?どうしたの?似合ってるよ」
「えっ...と、似合ってるとかそういうことじゃなくて...」
愛花は全体的に赤を基調とした衣装を身に纏っていた。そのシルエットは燕尾服のようだが、腋が大きく露出していた。(ここだ。愛花が言いたいのはここなのだがビオラはそんなことを察することは出来ない。)
胸元には宝石の付いたリボン。大きなフリルのスカートに、薔薇のように赤いニーソックス。足元は白のショートブーツ。そして先端に星形の付いたステッキを持っている。...ごく一般的(?)な魔法少女の姿と言っていいだろう。
「まあ魔法少女に成った時の“おまけ”みたいなものだから...警察だって消防士だって宇宙飛行士だってそれ用の衣装を着るでしょ?そういうことです!ね!」
ビオラが納得させるような口調で言う。
要するに“あきらめろ”ということだ。
「はぁ...そうなのね...」
ため息をしつつ愛花が変身を解く。魔法少女特有のボリューム感を放っている大きな二つ結びは通常のツインテールへと戻った。
(これからどうなるんだろ...戦いとか、したくないんだけどな...)
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愛花が魔法少女になってから一週間が経過した。
魔法の扱いにもだいぶ慣れたようで、その攻撃も光弾の形態変化などの付加能力を得るまでになった。
...が、あくる日のこと。いつものように、魔物退治に勤しむ愛花。
しかし、この日の魔物はいつもと様子が違っていた。
愛花の魔法を受け苦しむ魔物。その鋭い爪が虚空を切り裂いたかと思うと、刹那!空間に孔が開いた!闇を映すようなその漆黒は大きく拡がり、愛花を飲み込み始めた!
「きゃっ!」
「愛花!危険だ離れて..えっボクも?!ちょっちょっ、やばいってこれ!」
ふたりの体はどんどん闇に飲まれていく。完全に闇に覆われた瞬間、その孔は閉じた。
魔物は力尽きて消滅し、そこには何事も無かったかのような空間が在るだけであった...
「う...う~ん...ここは...?」
「愛花!ああ良かった、気がついたんだね。どこか田舎っぽいところだね...まあ少なくとも国は日*だとは思うんだけど」
愛花は辺りを見回してみる。木々が生い茂る森の中にふたりは飛ばされていたようだ。変身は解けている。
持っていたスマホを確認してみると...
「えっ...圏外?...」
無情にもアンテナは立たず。
釈然としないが諦めて周囲を散策してみることにした。
人影はない。そして、至るところに張り紙があった。
「え...!?」
思わず愛花は絶句してしまった。
そこに書かれていた言葉。
“今”の国には不釣り合いな言葉。
“かつて”の国では使っていただろう言葉。
『贅沢ハ敵ダ!』
『欲シガリマセン勝ツマデハ』
『撃チテシ止マム』
「どうしたんだい、愛花?」
「ビオラ...ここは...戦時中の、日*かも...!」
「......えっ!?!?」
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...結果として...
推測は当たっていた。今ふたりがいるのは本当に戦時中の日*だったのである。
声が聞こえたので向かってみたところ、いわゆる「竹槍訓練」の場を目撃してしまったのだ。
巻き込まれてはまずい。逃げるように去り、また森の中である。
「ねぇ、どうにかならないの...?」
「どうにかなるなら帰ってるよ~!ボクら妖精にも出来ることと出来ないことがあるのさ」
「そうだよね、ごめん...」
不毛な時間が過ぎていく。
「魔法界から行けるのだって“現代の”人間界だけだよ!妖精が“過去の人間界”に行った例なんて聞いたことないし、そんな技術はまだ無いはずなんだよね~!しかも今回は現代から過去へワープしたっぽいし、もうわからないわ~!」
そう。ビオラの言っている通りもうわからないのである。
「これからどうしたらいいのかな...」
「うーん、そうだなぁ......?
愛花、なにか近づいて来てる!」
身構える愛花。そこに現れたのは...
自分と同じくらいの年に見える...少女だった。
「びっくりさせてしまいましたね。法力を感じ取ったものですから。...どうなさったんですか?」
少女が静かに語る。愛花は呆気にとられてしまった。
「あら?貴女も“法女”だと思ったのですけれど... 確かに法力を感じますし」
「法...魔法少女のこと...ですか...?」
「まほうしょうじょ...?ああ、魔法少女、ですか?確かに“魔法”という呼び方もしっくりきますね。魔法瓶の“魔法”ですよね?」
少女の周囲に光が集まる。
「私達はこの力を“法力”と呼んでいます。仏道とは特に関連はないですけれど、こう言った方が細かな説明を省けますから」
ビオラも目を見開いて驚いている。
「そ、そんな!この時代に魔法少女がいたなんてそんな記録残ってないよ!」
少女が光に包まれ、変身した。
橙色を基調とした、着崩した着物のような衣装。肩も大きく出ている。全身を和の装いで固めつつも、腰のリボンが魔法少女らしさを演出している。足元は白のハイソックスに赤い下駄。
手首には包帯。毒々しい、赤黒さ。そこだけが、異質に見える。
「申し遅れました。法女、雛罌粟と申します。貴女のお名前は?」
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「愛花さん、上達しましたね~、なかなかの範囲攻撃ですよ」
「雛罌粟さんのおかげです...」
出会いから一週間ほど経った。雛罌粟からは色々なことを聞いた。
雛罌粟はこの時代の人間なのだが、彼女を魔法少女にした妖精はここより未来から来ていたということ。その妖精はもうこの時代にはいないらしい。
そして法女である雛罌粟は、身寄りの無いのもあって“有事の際には極秘任務として駆り出される”とのことであった。
愛花も未来(現代)から来たことを話すと、やはりというか案の定食いついてきた。現在、愛花とビオラは雛罌粟が一人で住む家に居候させてもらっている。
「愛花さんがここまで強くなってくれて頼もしいですね。これなら私がそこまで苦労しなくても大丈夫そうです」
「あはは...」
その瞬間。空を音で切り裂くような、サイレンが鳴り響いた。
「雛罌粟さん、これって...!」
「空襲警報ですね。行きましょう。愛花さんは、見ててください」
...防衛結果として。法女の力は圧倒的であった。
魔法を一つ叩き込み、敵機は線香花火の如く、簡単に落ちた。あまりにも現実感の無い光景。
しかし、これは戦争なのだと愛花を納得させるにはあまりにも充分すぎる光景だった。
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「......」
深夜。雛罌粟の家にて。何やら声が聞こえる。
(雛罌粟さん...?)
不審に思った愛花は声のする方へと向かった。
「雛罌粟さんっ...!?」
雛罌粟は変身した姿で、普段包帯で隠されている処...に、小刀を当てていた。そこに在ったのは、痛々しい傷痕。
左には、横に五本、縦に四本で構成された格子状の図。
右には、いわゆる五芒星と呼ばれる星形。
「何をっ...してるんですか、雛罌粟さん...っ!!」
「愛花さん...何って...謝ってるんですよ」
「謝る...?」
「そうです。貴女は何も思わなかったんですか?私が、法女として、敵機を撃ち落とすところを見て。あれは只の機械じゃないんです。人が乗ってるんですよ、あれに。私達は御國のために何かすることはできても、彼らのためにできることはないんです!だったらせめて、懺悔くらいさせてくださいよ!!」
雛罌粟の目から、涙が堰を切ったように流れだす。
それを見た愛花は、ただ雛罌粟を抱きしめる。
「愛花さん...?」
「もっと...自分のことも大切にしてください!雛罌粟さん...苦しんでます...!」
「そんなことは...!それにこの命は御國に捧げた身...!」
尚も愛花は声を上げる。
「もっと!自分のために生きてください!!雛罌粟さんは...苦しむために生きてるんじゃ...ない...」
「...なんで愛花さんが泣いてるんですか...」
「......私、この時代に来ちゃって本当に不安だったんです。でも、雛罌粟さんが一緒に居てくれて、心強かった。雛罌粟さん、いつも明るくて...時間で言ったら、全然...長い間いるわけじゃないけど...雛罌粟さんは私の支えになってたんです...」
「......」
「ごめんなさい...勝手に...
雛罌粟さんの生き方を否定するわけじゃ...」
雛罌粟は愛花のことを強く抱きしめ返す。
「...!」
「愛花さん...いいんでしょうか...?私、自分の人生なんて、考えたこと、ありませんでした...法女は...只の兵器だと...」
「いいんですっ...!雛罌粟さん...!」
「...私と一緒に、人として生きてくれるんですか...?」
うなずく愛花。
「一緒に生きてください、雛罌粟さん...!雛罌粟さんが全て抱え込まなくていいように...苦しみも、半分にしてあげたいです」
「ありがとう...ございます...!愛花さん...!」
(愛花がいないから見に来てみたら...いい話じゃないか~~~~~!!良かったなぁ、良かったなぁ~~~)
号泣するビオラ。ここでふたりの前に行くような野暮なことはせず、忍び足で戻るのであった...
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(それからの日々は、
少し歪かもしれないけれど、それでも輝いていた...と思う)
『さあ撃ちてし止まん!敵機掃討せよ!』
(情勢は、変わってない)
「愛花さん!これからは、貴女のために生きると決めました!」
(雛罌粟さんは前よりも更に明るくなった)
「何もしないのもあれだし、こっちで魔法少女志願とかしたらいいんじゃないかな...やってみようか...秘密裏に。そしたらキミたちも助かるんじゃない?」
(ビオラはあまり気にしてないみたい)
(ふと考える。向こうのこと。話しくらいはするクラスメイトはいた。でも、友達はいなかった。親だってそうだ。仕送りくらいはしてくれていたけれど、あまり私に関わろうとしてくれなかった。
私も、雛罌粟さんと同じだった。一人だった。
夢も、無かった。
世界は嫌なものが、たくさんあった。
でも、今は違う。)
「雛罌粟さん、行きましょう!」
「ええ、愛花さん!」
(今の私には、大切な人がいて、大切なものがある)
(どうしてここに来たのか?それはわからない。考えてもきりがない。この先、どうなるかもわからない)
「それでも」
私は進み続ける!
『法力護國隊 -魔法少女、戰中ニテ-』
-完-