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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第二章
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女王と診察

その日は、雨が降っていた。



窓から見る空模様は曇天で、まるで私の心の内のようだと思った。


「待っていたぞ、ゴドフリー」


部屋に入って来たのは、魔法師団長のゴドフリー。

最初に宝剣を出して倒れた時以来、定期的に私の体を診てもらっている。


「お待たせ致しました」


『さて、余の体を診察してくれ』


魔法で指示を出してからすぐに、ゴドフリーは私の手首を掴み魔力を流した。


「……どうか?」


「即刻、療養なさるべきです」


私の問いに、彼は間髪入れずに答えた。

静まり返った室内に、彼のその言葉が響く。

まるで睨んでいるかのように見つめる彼の真剣な視線に、私は逆に可笑しくなって笑った。


「無理だ」


「貴女様の御体は、限界に近い。魔力回路が壊れているせいで魔力が暴走し、体内の組織を悉く破壊しているのですよ」


傍に控えていたフリージアが、小さく『ヒッ』と悲鳴を上げて私に視線を向けていた。

それは彼の気迫を恐れてというよりも、私の体の状態を心配してのことだろう。


「そう騒ぐでない。……療養したところで、余の体調はよくなるのか?」


「それは……っ」


私の問いかけに、彼は俯いた。

僅かに見える彼の表情には、隠しきれない程の悔しさが滲んでいる。


「生憎と、余はやらねばならぬことがある。療養したところで命の刻限が変わらぬのであれば、残された時を惜しむべきであろう?」


「しかし陛下……療養し魔力の使用を抑えることができれば、治りはせずとも刻限は延ばすことができるかもしれません。どうか、ご再考を……」


「どれだけ考えたところで、変わらぬ。それで、治療薬は?」


「こちらに。何度も申し上げますが、この治療薬では根本的な治療にはなりません。魔力の暴走を抑え、陛下の急激な体調悪化を抑えるだけの薬です」


「分かっている。……ありがとう、ゴドフリー。『ゴドフリーとフリージアは余の体調のことを忘れよ。それから、ゴドフリー。其方は再び余がこの執務室に呼んだ際は、この薬を同じ量だけ持って来い』」


魔力を載せた言葉に、ゴドフリーとフリージアは虚ろな瞳をしていた。

けれども拍手をするように手を叩けば、すぐに二人はいつもの表情に戻る。


「ゴドフリー。其方の魔法師団の訓練に関する話は、非常に有意義であった。また、話を聞かせてくれ」


表面上のお礼に、けれどもゴドフリーは違和感なくそれを受け入れていた。


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