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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第一章
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女王と正解

フリージアはバーバラが待つ控室に向かって行った。

私もまた、控室の監視部屋に向かう。

控室は来客があった場合の待機場所だけど、その人物を秘密裏に確認できるよう、監視部屋が備わっているのだ。

要するに、別の部屋から会話と姿が確認できる仕掛けがあるということ。


私は早速それで、フリージアとバーバラの会話を覗く。


「会えないとは、どういうこと?」


丁度、フリージアがバーバラに私が会えない旨を伝えたところのようだ。


「申し訳ございません、陛下は公務でお忙しく、 すぐにお会いすることは難しいと」


「一体どういうこと!? ラダフォード侯爵家は突然取り潰しになるし、話を聞こうにもヴィルヘルム様にもお会いできない! 私は、ルクセリア様にお会いして何がどうなっているのか説明して貰いたいの!」


「失礼ですが……何故、ルクセリア様が、貴女に説明しなければならないのですか?」


「私がヴィルヘルム様の恋人だったからよ! ……折角、優良物件を捕まえたって言うのに。

今じゃラダフォード侯爵家と関係があったって、色んな人から白い目を向けられる。いくら私に嫉妬していたからって、ルクセリア様は、やり過ぎじゃないかしら!?」


彼女の叫びに、思わず溜息を吐いて頭を抱える。

推測が見事に正解だったのだけど……実際目で観ると、やっぱり衝撃的だった。


隣でギルバートが同じように頭を抱え、トミーはケラケラと笑っていた。


「監督不届き……先程ルクセリア様が仰っていた言葉の意味を理解しました」


「そうでしょう?……直接会う前に、推論が正しかったということが分かってしまったわね」


思わず、最近板に着いて来たお父様の口調ではなく、使い慣れたルクセリアの口調で言ってしまった。


「それは良かったですね」


「ええ。……にしても彼女、どうしてこうも貴族のルールを無視できるのかしら?」


「貴族社会で育っていないからじゃないですか? 彼女、ドルネッティ男爵に引き取られたのは十五歳……つまり、貴族の仲間入りしたのはつい一年前。たった一年じゃあ、なかなか教育しきれないでしょうし」


「あら、彼女はドルネッティの子どもではないの?」


「否、ドルネッティ男爵と血は繋がっていますよ。ただ、侍女との間に生まれた彼女を認知していなかったようです」


「ああ、なるほど。……でも、あれでよく社交界に出したわね」


「激しく同意します。まあ、良いところの坊ちゃんを捕まえることが出来たんで、結果良しじゃないですか?」


「そうですね。……トミーの言った坊ちゃん以外の青年も、次々と彼女の虜になっていたみたいですし」


「ほう……それは凄い。彼女の手腕を褒めるべきか、この国の将来を憂うべきか」


「「どちらもでしょうね」」


息のあった返事に、つい吹き出す。

控室では、フリージアが諦めたように応接室へと案内を始めていた。

私はその様子を見ながら、二人へ言葉を返す。


「確かに、そうね。まあ……彼の場合、捕まったと言うか捕まえたと言うか」


「何か言いましたか?」


「否、何でもない」


「……それで? 聞きたいことは聞けたと思いますが、どうしますか?」


「まあ、良い。……既に会う必要は無くなったが……彼女がそこまで会いたいと言うのであれば、会おうではないか」


「お優しいことで」


「……否、厳しいのでは?」


二人のそんなやり取りを背中越しに聞きつつ、私は応接室に向かった。


……さあ、茶番劇の始まりだ。

既に、道筋は見えた。

後は、その道筋から逸れないように……台詞をなぞるだけ。


私は、政の本質は劇と同じだと思っている。

如何に人を熱狂させ、信じ込ませ、舞台に引き込むか。

そしてその為に必要なのは、開幕前の入念な準備。


けれども残念ながら、これは決して素敵な舞台にはならなさそうだ。

喜劇は喜劇でも、全く笑えない……白けた空気が漂うであろう舞台。

とは言え、観客は少なくないのだ……せめて彼らが楽しめるよう、頑張るか。


そんなことを思いつつ、私は謁見の間に向かった。




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