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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第一章
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官僚と官僚 2

「くそくそ……くそ!」


ネイト様は苛立ちを隠さずに、机を叩いた。

ダン……っと、耳障りな音が響いて、思わず顔を顰める。


「あの小娘め……王位に就いたのはほんの数日前だと言うのに、良い気になりおって……! テッドもそう思わないか!?」


「ネイト様の仰る通りです。全く、紛い物の王が勘違いも甚だしい」


私は深く頷きながら、ネイト様の言葉に同意をしていた。


以前二人で飲み明かしたのは、僅か三日前。

そのたった数日で、随分と状況が変わってしまった。


認めたくはないが、してやられた。

ルクセリアを侮り、簡単に彼女を貶めることができると思っていたというのに……結果は、惨敗。

おまけに、彼女から指示を出される始末。


ネイト様にとって、酷く屈辱的な会議であったことには間違いない。

勿論、私にとっても。


……だから、こそ。

より、ネイト様は執念を燃やしていた。

ルクセリアを貶め、彼女を排斥せんと。


「ふん……飾りものの人形姫なら人形姫らしく、黙っていれば良いのだ」


そう呟いたネイト様の瞳には、禍々しい光が宿っていた。


「……何とか、あの小娘に恥をかかせた上で黙らせる方法はないか……」


そしてその口調は、酷く重々しい。


「……ネイト様。五大侯爵家のお力を借りるのは、いかがでしょうか? 彼らも、あの小娘が台頭することを快く思わない筈ですから」


「五大侯爵……か。彼らの力を借りることは容易ではないが……否、待てよ」


一瞬、ネイト様が考える素ぶりを見せる。


「良い案が浮かんだ。礼を言うぞ、テッド。………今日はもう帰れ。早速、取り掛かりたい」


にんまりと、嬉しそうな表情を浮かべていた。

我が敬愛なる上司は、悪巧みを考えているときが一番良い顔をする。

きっと言葉通り、彼の頭の中で良い案が浮かんだのだと信じられる程には、見慣れた表情だ。


「承知いたしました」


だからこそ、私はさっさとネイト様の言う通り部屋から去っていた。




そして、それから数日後。

再び私は、ネイト様に呼ばれて訪れていた。


「無事、引き込めた。……これで、あの人形を引きずり落とせるぞ」


「引き込めたとは、一体どなたを?」


「……ラダフォード侯爵家」


ん? と顔を顰めそうになったが、気力で防ぐ。

いや、それにしても……何故、ラダフォード侯爵家なのだろう?

と言うより、どのようにして接触したのだろうか?


何せあの家は、当主一家が揃って行方不明の筈だ。


「しかし、ネイト様……ラダフォード侯爵は、不敬を働いたと専らの噂で……」


「だからこそ、だ。ラダフォード侯爵家系の官僚たちは、当主の突然の処罰に対して王家への不信感を抱いている。引き込むことは簡単であったよ」


ああ、そうか。

本丸……ラダフォード侯爵家ではなく、付き従う官僚を狙ったのか。

それならば確かに、当主一家がいない方がやり易い。


「流石、ネイト様。……しかし、官僚たちを引き込んだ理由は?」


「あの人形は、組織の改革なんぞと抜かしている。……しかし、肝心の官僚たちがいなくなれば?」


「……国政が、立ち行かなくなる」


「そうだ。そしてそれを利用し人形を嗾すことで、私が実権を握る」


「なるほど……ラダフォード侯爵家系の官僚たちは、どうするのですか?」


「私が実権を握った後、然るべき地位を与えてやる。そしてそれを上手く利用し、官僚たちも掌握するのだ」



本当に、地位を与えるのですか?

出かかった言葉を、飲み込む。

……まあ、良い。

約束通り彼らに地位を与えようとも、与えずとも……私には何らダメージはないのだから。



「素晴らしいですな! 人形の慌てふためく様が、とても楽しみですよ!」


「ああ、私もだ」


二人は顔を見合わせて、笑った。


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