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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第一章
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女王の昔語り

本日2話目の投稿です

彼女が退出すると、急に部屋が広くなった気がする。

尤も、この部屋は『王の間』だ……気のせいでも何でもなく、本当に広い。


戴冠式の後、私はこの部屋に越してきた。

歴代王が使ってきた部屋。

当然、私の前はお父様が使っていた。

けれども、お父様が使われていた家具は一つもない。

強いて言うのであれば、壁に備え付けられている暖炉ぐらいか。

他は全て、私の即位前の改修工事で全て変わっていた。


家具一式変えるのは勿体無いから、王の間にわざわざ越さなくても良いのでは?と初めは思っていた。

でも、王位を継いで知った……確かに、この部屋は、王専用の部屋だと。


何とこの部屋、三つの隠し通路と繋がっている。

それも、鍵は全て宝剣。

魔法で鍵がかかっていて、決して力ずくでも開くことのできない堅牢な造りだ。


隠し通路の内一つは、有事の脱出用通路。

そしてもう二つは、それぞれ隠し部屋への通路だ。

……初めて知ったとき『隠し部屋なんて何に使ったんだろうか』と、邪推したけど。

とは言え、実際に使う身になった今となっては歴代王のことは何も言えまい。


因みに、私が使っていない方の隠し部屋は宝物庫だった。

保管されているのは、表に出せない文献や有事の際の隠し財産。

……改革を進めて行くうちに、お金の面でどうしようもない壁にぶつかったら、遠慮なく使わせていただこうと思っている。


「『この部屋に、誰も入れるな』」


一応、表の護衛騎士に心域で命令を下した。

誰かが入って来てしまえば、隠し扉が露呈してしまうから。


それから私は薄暗い通路を通って、宝物庫ではない方の隠し部屋の前に到着した。

再び宝剣を取り出して、扉を開く。


中は、至って普通の部屋だ。

家具が一式揃っていて、普通にこの部屋で暮らすこともできるだろう。


私は部屋の中央のベッドに向かって進んだ。

脇に置かれた椅子に座りつつ、そのベッドで『眠り続けて』いる彼の手に触れた。

……ほんのり伝わる温かさに、涙が溢れそうになる。


「……良い夢を見ていると、良いのだけど」


うずくまる様に、ベッドの空いたスペースに顔を埋めた。

目を瞑れば、彼と初めて出会った日のことが思い出される。




あれは……そう、塔に幽閉される理由となった事件の、ほんの少し前のことだった。

当時は既に使用人たちとギクシャクしていて、それが嫌で城を抜け出して周りを散歩していた。



そして、出会ったのだ。

彼……ヴィルヘルムと。


『こんなところで、何しているんだ?』


すぐに、何処かの貴族の子息だろうということを察した。

何せ、王宮に上等な服を身に纏って来ているのだ。

そんなの、貴族の子息以外に考え難いだろう。


『……暇だったので、散歩をしていました』


だからこそ、慎重に言葉を選んでいた。


『ふーん……奇遇だな。私も、時間を持て余していたんだ。……名は?』


『……セリアです。貴方は?』


『私の名は、ヴィルヘルム。セリア、お前は何で王宮に?』


『父の仕事の関係で。ヴィルヘルム様こそ、何故王宮に?』


……嘘は、ついていない。

お父様は、確かに王宮で仕事をしているし。


『私も父上が王にご挨拶をするのに、付いて来たんだ。……でも、暇だったから抜け出して来た』


そう言って、笑っていた。


『この辺りは、よく来るのか?』


『いいえ、初めてです』


私の回答に、彼は首を傾げる。


『……ど、どうかしましたか?』


『堅苦しいな。……私のことが、怖いか?』


『い、いいえ……そんなこと、ありません』


『ならば、普段通りに話してくれ』


『は、はい……あ、いえ、分かったわ』


『良し! それじゃあ、共に探検をしよう!』


私の手を取って、彼は駆け出した。

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