官僚と官僚
「……テッド様。ようこそ、おいで下さいました。ネイト様は、応接室でお待ちしております」
……新女王の戴冠式からすぐに、王宮より会議の為と出仕命令があった。
その会議を前日に控え、私は上司の家を訪れていた。
「……全く! 舐めたことをしてくれおって!」
応接室に到着してすぐに、珍しく荒れた上司の姿を目にする。
私の案内をしていた執事は、そんな自身の主人の姿に狼狽しているようだった。
「ああ、見苦しい様を見せたな。ご苦労、下がれ」
その一言に、これ幸いにと私を置いてさっさと部屋を出て行った。
……正直、私も逃げたい。
明らかに、機嫌が悪いのが見て取れるのだから。
「全く、ふざけた命令だと思わないか!?」
ダン……! と、机を叩きつける音が響く。
机の上に置かれていたグラスから水が溢れ、こぼれ落ちた。
「ネイト様の仰る通りですね。おこぼれで王位に就いた人形が、忙しい省長を呼びつける。……全く、何とも失礼な奴です。会議の議題は、未だ秘匿にされているのですか?」
「ああ……。忌々しいことにな」
「……しかしそれならば、他にも会議を欠席する省長がいても良い筈なのでは?」
「テッドもそう思うであろう!? だが、遺憾なことに軍務省長も外務省長も共に会談を欠席しようという儂の申し出を拒絶してきた! それどころか、必ず会談に参加するよう説得される始末」
「……は? 軍務省長殿と、外務省長殿が? 一体、何故……?」
「儂にも分からん。だが、奴らは無駄なことはせん。恐らくそうするだけの何かがある筈」
「そうですね。お二人とも、鼻が効く。ネイト省長も出られた方が良いでしょう」
「……ああ、分かっておる。だが、あのような小娘に呼びつけられるとは……はらわたが煮えくり返る思いよ!」
「……良いではないですか」
「……何?」
ギロリと、ネイト様がテッドを睨みつける。
「国政の何たるかを知らぬ『小娘』なのでしょう? ならば、ネイト様が教育的指導をしてやれば良い」
私の言葉に、それまで怒りを露わにしていたネイト様が初めて笑みを浮かべた。
「ほう……なるほど、な。確かに。あのような娘、会談で盛大に恥をかかせてやれば良いか」
中身が溢れた杯に酒を注ぎ、それをネイト様に差し出した。
ネイト様は楽しそうにその杯を受取ると、一気にそれを仰いだのだった。




