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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第一章
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人形姫と軍団長

本日6話目の追加です

「……ギルバートの案内は?」


「外に控えていた者に任せるよう、伝えてあります。幸いにも貴女様の時間がこれから少々空いているので、国軍団長とお会い頂こうかと」


「流石、手回しが早いな。そういうことであれば、早速向かおうぞ」


私はトミーの手を取り、立ち上がった。


「……さっきの貴女様の雰囲気に、鳥肌が立ちましたよ。ホラ」


道すがら、トミーは軽口を叩く。

昼間でありながら、奥宮は他の宮と比べて人通りが少ない。


「見せずとも良い。……そんなに怖かったか?」


「そうですね。……恐れというより、畏敬という感情が近いでしょうかね。魔法、使いました?」


「まさか。余が魔法を使っておれば、其方らはまだ立てぬであったろうよ。それに、余はなるべく魔法を使いたくない。信頼を置ける者たちに対しては特に……な」


「……そうですよねー。魔法を使われたら、あの程度の圧で済む筈がない」


「生憎、余は自分の魔法にかかったことがないから分からぬな」


「そりゃ、そうでしょうよ」


トミーの言葉に、彼と私は揃って笑い出した。


「おおっと、笑うの止めてください。誰かが近づいてくる」


トミーの言葉に、私はピタリと笑いを止める。

彼の言葉通り、前方から二人の男が現れた。

彼らは私の存在に気がつくと、慌てて頭を下げて道を譲る。


そんな二人の横を通り過ぎ、私たちは奥宮と中宮の間にある庭に入った。

そのまま、迷路のような茂みを突っ切る。


そうしてたどり着いたのは、静かな四阿。

私は中に設置された長椅子に腰かけた。


「……本当に、王宮は広いな」


庭を眺めながら、そっと呟く。


「そうですね。おかげで、警備が大変です」


「王宮に対して、そのようなケチを付けたのは恐らく其方が初めてぞ」


「王族の方が言われたのは初めてかもしれませんが、俺のような者も含めて警備をする人間は誰もが思いますよ。どんなに綿密な計画を立てようとも、どうしても広ければ広いだけ目が届かないところができ易い」


「……否定はできぬな」


そんな会話をしている間に、一人の男が現れた。

精悍な顔つきに、服の上からでも分かるほどの筋肉質体型の男。


「其方もそう思うか? アーロン国軍団長よ」


「……そうですね。正直なところ、彼に同意です」


「ふふふ……そうか」


アーロンは、私の元に辿り着くと私の手を取りキスをする。


「ご機嫌麗しゅう、ルクセリア様」


「……久しいな、アーロン」


「休まず剣を握っているようですね。……良い手です」


手を握ったのは、それを確認する為だったのかと、つい笑みがこぼれた。


「其方に褒めて貰えて、何よりだ。……次は、余の相手を務めて貰おうぞ」


「是非に」


アーロンは私の手を離し、一歩引いたところで再び膝を折った。


「……さて、本題に入るぞ。『祭』の準備は?」


「王宮警護隊、領への派遣隊、いずれも編制は完了。訓練も相応に積み、いつでも出撃可能です。後は姫様の号令を待つばかりです」


「隊員たちへの情報統制は?」


「全てを知るのは、私と私の副官のみ。士官たちにも全ては知らせていません」


「……そうか。情報が漏れると敵が身構え、任務達成の難易度が高まる。故に、くれぐれも情報統制は徹底せよ」


「承知しております」


「……領への派遣隊の指揮は?」


「私が、直に。王宮警備隊を、副官に任せます」


「それで良い。戴冠式と言う名の劇の主役は余であるが……領の捕り物劇の主役は、其方ら。どちらが重要かなど、分かりきったこと。……最悪、余は自分の身は自分で守ってみせるしな」


「姫様の技量であればそうでしょうが……我々の出番を簡単に譲るつもりはありませんよ」


「それは重畳。……王宮警備隊の配置は、トミーに連携しているか?」


「はい、既に。聖堂内外と正門から聖堂までの警護の配置について、既にトミー殿には知らせています」


「……ふむ。ならば、トミー。其方は捕り物劇の舞台をアーロンに伝えてあるか?」


「勿論です。ターゲットの出入りする場所を、全てアーロン殿には伝えてありますよ」


「今回の劇は、情報統制の観点からこちら側の登場人物を百人に絞っています。とは言え、同時に動いて初動が遅れれば、逃げられる可能性が高まる。それ故に、まずは最もターゲットがいる可能性の高い彼らの屋敷に、十名ずつでそれぞれ向かう予定です。その上で、仮に捕まえられなかった場合には領内を隈なく捜索致します」


「百名、か。ならば隠密行動が絶対であるな」


「ええ、仰る通りです。祭が始まる前に、我らは密かに領都に向かいます。その後も、ターゲットを捕らえるその時まで、なるべく目立たぬよう動きます」


「……苦労をかける。兵站の準備は? 他に何らかの懸念はないか?」


「ギルバート殿の支援のおかげで、万事滞りなく整っています」


「……そうか。正式な命令は、祭当日に伝える。だが……アーロンよ。今回の任務は捕縛を主としているが、奴らが抵抗した場合は余の名の下に容赦なく排除しろ」


「承知致しました」


「其方の武運を、王都より祈っている」


「ありがたき幸せ。……姫様の武運こそ、私は祈り申し上げます」


「うむ」


「それでは、訓練がございますので。……そろそろ、御前失礼致します」


アーロンは立ち上がると、頭を一度下げて去って行った。

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