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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第一章
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人形姫と護衛騎士

本日4話目の更新です

「……職場体験の収穫はありましたか?」


共に部屋を出た護衛騎士扮するトミーが、笑みを浮かべながら私に問いかける。


「意地が悪いな。既に確信を持っているというのに、わざわざ問うか」


「そりゃ、失礼しました。でもホラ、貴女様の心の内は俺では読めないっていうことは、この前痛いほど分かりましたから」


「ククク……其方、未だこの前のことを根に持っているのか」


「笑うとは、俺に失礼だと思いません?」


「自分に正直なまでよ。……さて、これで国の官僚は最低限掌握した」


「……そうでしょうか? 貴女様の毒に当てられていたような気もしますけど」


呆れたようなトミーの物言いに、つい私は笑った。


「ふふふ……恐怖もまた、人を従える手法の一つよ」


「はー……恐ろしいことで。まあ、そこまで貴女様が自信を持っているということは、きっとそうなんでしょうけど」


自信なんて、ない。

ただ、知っているだけ。

彼らの心の声を、心域で聞いていたから。


私ももう少し反発があるかと思っていたのだけど……意外にも、それはなかった。

むしろ、割と好意的。


一体何を(もっ)て、そうなったのかは分からないけれども……説得に時間がかからず、何より。

反発が凄ければ、もう少し時間をかけようと思ったのだけど……受け入れて貰えたのであれば、その必要も無しと、予定時間より早く切り上げたという訳だ。


「さて、次は軍だ。其方に命じた、もう一つの命令はどうなった?」


「貴女様に命じられたことは、たくさんありますからねー。ルビーの件? それとも領地側の協力者の進捗具合? 毒の調査の件? それとも……軍の件?」


「この流れであれば、軍であろうよ」


「あれ、やっぱりそうですかー。いやー別に言ってませんからね? これだけたくさんの仕事をしているんだから、給料上げて欲しいなだなんて」


「言っておるでないか。そうさな……その件全てを期限通りに終わらせることができたのであれば、考えないでもない。……それで? 命令は?」


「勿論、万事恙無くですよ。というか、このぐらいだったら誰でもできません? ルクセリア様は既に軍と魔法師団のことは結構掌握していますし」


「人知れず会うことは、なかなか難しい。……余は、表立って動くことはできぬからな。つまり、全ては其方の有能さを頼ってのことよ」


彼女が視線を向けると、トミーはあからさまにニンマリと笑みを浮かべていた。


「へー……『有能』な俺の力を頼りたいんですか。なら、仕方ないですね。玉座に就く前に、逢いに行く予定を組んでおきましたよ」


「ご苦労。……ああ、それと、明日は其方の得意な女装を頼むぞ」


「うへえ……別に得意じゃないですよ。前回は必要に迫られ仕方なく、ってやつですよ。まあ、明日は比較的手が空いてますし、了解しました」


ちょうど、私の自室前に到着した。


「……ルクセリア様」


部屋に入ろうとする彼女を、トミーは呼び止める。


「体調は?」


「『万事、恙無く』というかやつだ。案ずるな。……別に、『其方が倒れた余を見た』という訳ではない故、医者を呼ぶ必要もなかろう?」


そう言って笑うと、私は完全に部屋に入っていったのだった。

部屋に入ってすぐに、その場に倒れ込む。


……ギリギリだった。

心域を……魔法を使ったせいで、目眩が酷い。

早めに切り上げることができて、本当に良かった。


体調は悪くなったけれども、得たものは大きい。

けれども……まだ、だ。

まだ、終わらない。終わらない。

私はまだ、茨の道に踏み入れてすらないのだから。


倒れ込んだまま時間が過ぎ、少しだけマシなったところで立ち上がった。




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