人形姫と寵姫
本日5話目の更新です
「はあぁ……憂鬱だわ」
飾り立てられた自身の姿を前にして、私は溜息を吐く。
「ルクセリア様、微力ながら私も付いておりますので!」
鼻息荒く、アリシアが口を開いた。
その握り拳の出番がないことを祈ろう……と、私はつい苦笑いを浮かべる。
「……貴女がいるなら、百人力ね。さあ、行きましょうか」
アリシアにはそう言ったけれども、なんとか茶会から逃げられないかな……と思いつつ、重い足を動かす。
私が向かっているのは、お茶会の会場であるサロン。
今日は貴族の女性たちを招いてのお茶会だ。
夜会等々のパーティーも苦手だけど、お茶会はもっと苦手。
お茶会に出席するぐらいなら図書室に篭って本を読んでいる方が、精神衛生上ずっと良い。
とはいえ逃げる訳にもいかないので、サロンに向かうしかない。
夜会同様、既に皆が揃っていた状態だった。
皆の衣装は夜会のそれほどの煌びやかさはないものの、贅を凝らしたものだ。
「お集まりくださって、ありがとうございます」
私が声をかけた瞬間、皆が立ち上がって頭を下げた。
私はその姿を見てから、空いていたホストの席に座る。
その後、後を追うように皆も再び席に座った。
今日集まった女性たちは、同世代の未婚者だ。
話題は尽きず、それはそれは楽しい集まり……ならば良いのだけれど、皆、家の看板を背負った貴族の女性たち。
彼女たちが何を意図してその話題を持ち出しているのか、その意図が場に相応しくないものではないかを常に考えなければならない。
つまり、とても疲れる会……というわけだ。
「あら……メラニア様のそのネックレス。とても素敵ね」
とりあえず、目に留まった宝石を褒めておく。
「お褒めに預かり、光栄ですわ。このネックレスは、領地から出ましたルビーで作らせましたの」
「紅と言えば、先日のルクセリア様のドレスはとても素晴らしいものでしたわ。婚礼のご衣裳も、とても楽しみにしておりますのよ」
「そうですわね」
「どのようなドレスを着られるのですか?」
「ふふふ……それは当日のお楽しみ、ということで」
とりあえず、掴みは良いだろう。
全員話に参加しているし、穏やかな雰囲気だ。
「こんにちは!」
けれどもこのタイミングで、この場にいる筈のない人物の声が響いた。
聞き覚えのある、明るくて元気な声色。
「……バーバラ様?」
まさかの彼女の登場に、つい顔が引き攣りそうになった。
勿論、彼女に招待状は送っていない。
ここにいるのは、侯爵家や伯爵家の人たちばかりだ。
「何故、貴女がこちらに?」
「えっと……お茶会の話を聞きまして。私も、是非参加したいなと」
……あまりに非常識な発言に、思わず人形姫の仮面をかなぐり捨てて叱責してしまいそうになった。




