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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第一章
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人形姫と隠密

「……そこに、いるのであろう?」


ポツリ、書斎で私は呟く。

その瞬間、誰もいなかったそこに男が一人現れた。


「流石、ルクセリア様。相変わらず、気配を読むことに長けていらっしゃることで」


呆れたように呟きつつ苦笑いを浮かべる彼に向けて、小さく笑う。


「ふふ……気がつくのが遅い、と言われるかと思ったが」


「そんなことありませんよ。むしろ毎回気づかれて、自分の技量が心配になるんですけど。……とはいえ、確かにいつもよりは気づくのが遅かったですね?」


「……パーティーで、少し疲れた」


「ああ……お疲れ様です。改めましょうか?」


「否。其方の報告は、早く聞きたい」


「ありがとうございます。……アリシアは?」


「さっきまで着ていた舞踏会用のドレスを、片付けている。『甘い菓子を食べたい』と伝えてあるから、そのまま調理室に向かって暫く戻って来ることはないであろう」


「そうですか。それは準備が良いことで」


「別に、準備なんぞしておらん。そろそろ其方が私のもとに来るとは思っていたが……それ以上に、単に余がアリシアのお菓子を食べたかっただけ」


「ルクセリア様は本当にアリシアのお菓子が好きですよね。王女も虜にする腕前……是非とも俺も一度、食べてみたいもんです」


「ふふふ……それなら、本人にお願いすると良い。本当に、美味しいぞ?」


思い出しただけで、お腹が空いてきた。


まあ……それもそうだろう。


いくら夜会にたくさんのご馳走があっても、引っ切り無しにやって来る招待客たちからの挨拶対応で、私はそれを一切口にすることができなかったのだ。


目の前にご馳走が並んでいるのに、食べられないとなると余計にお腹が空く。


遅い時刻に食べるのはあまりよろしくないが、頑張った自分へのご褒美。


何も言わずとも、私の疲労を見抜いて『いつもより甘めのものを作る』と言ったアリシアは流石だと思う。


「機会があったら、お願いすることにしますよ。それで、こちらをどうぞ」


彼は私に紙の束を差し出した。

私はそれを、ザッと読む。


「ああ、ダメ。全然ダメ」


そう言いながら、つい笑ってしまった。


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