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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第一章
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人形姫と婚約者

本日3話目の更新です

アスカリード連邦王国……それが私、ルクセリア・フォン・アスカリードが将来女王として立つことが決まっている国の正式名称だ。


国は侯爵家と呼ばれる強大な領地を治める五つの家と、いくつかの小さな領地で成り立つ。


現在の国名にも『連邦王国』と残っている通り、建国当初より各領主には大きな裁量が与えられていた。

具体的には、立法権・行政権の二権が各領主の手に渡っている。

それでも一つの国家として纏まっているのは、各領地の三権の上位に王国としての三権が存在するからだ。


そのような政治構造でありながら、歴史上、王国は一度たりとも分裂や反乱が起きたことはない。


王族を中心に、強固な同盟ともいうべき協力関係が続いていた。

その一助となっていたのは、代々王家に伝わる宝剣の存在だ。


あまりにも強大過ぎる宝剣の力は、時と共に国民の信仰の対象となっていった。

そしてその宝剣は、王の長子が男であろうが女であろうが、必ずその長子に自動的に受け継がれる。

そのため王家は、性別関係なく生まれた順で次代王を決めてきた。


私が貴族に飾り物の『人形姫』と侮られる大きな要因は、この宝剣を発現することができないことだ。


普通、先代王が崩御した場合はらそれと同時に次代の王に受け継がれる。

けれども、私は宝剣を出すことができない。と言うことに、なっている。


そしてそれが原因で、私に王族の血が流れているか疑問の声があがった。

それと同時に、私を排斥する動きも。


それでも私が王族としてその座に居続けるのは、私の身体的特徴……アメジストの如き薄紫色の瞳が王族特有のそれであること、そして面立ちが先代王にどことなく似ていたからだ。


けれども、一番の理由は……五大侯爵家にとって私が王位に着く方が都合が良かったということだろう。

私を排してしまえば、王族は絶える。

そうすれば、どの家が王国の覇権を握るというのか。


五大侯爵家の力は、ほぼ同じ。

どこかの家が王座を獲ろうと動こうものなら、他の四家が動かない筈がない。

そう牽制し合っている間に、五家それぞれが私を王座につけることを消極的ながら認める流れになったのだ。


所詮、最早王族は象徴でしかない。

五大侯爵家にとって、障害にも重石にもなり得ない。

ならば『人形姫』を王位に据え、無用な争いを避け力を蓄えるべきではないだろうか?と。


そしてその隙をついて、ラダフォード侯爵家が先手を打ったのだ。

それは、私と子息であるヴィルヘルムの婚姻。


そう、ヴィルヘルムだったのだ。

……婚約者として顔を合わせた時は、本当に衝撃的だった。

まさか……まさか、あの時出会った男の子と、そんな形で再開するなんて、思ってもみなかったのだから。


……彼とだけは、婚約をしたくなかった。

だって、五大侯爵家の彼と私は……何処までも相入れないから。

いずれ終わりが来ることは、婚約する時点で目に見えていた。

……それ、なのに。

婚約なんて……夢を見てしまうではないか。



けれども、婚約の妨害は上手くいかなかった。


五家の中で残り四家はそれぞれ男子は一人ずつ……つまり自分の家を継ぐべき男子しかいない上、私と年齢が合わない。


その点、ラダフォード侯爵家には男子が二人……それも私の婚約者の座に収まったヴィルヘルムは私と見合う年齢。


四家が反対に動く前に他の貴族を丸め込み、更に私に婚約宣誓書にサインをさせた当主のヴィクセンの手腕は見事と評する他にない。


そうしてヴィルヘルムと私の婚約は、ヴィルヘルムが十二歳、私が十歳の時に結ばれたのだった。

それから、早六年と九ヶ月。


……婚姻まで残すところ三ヶ月となっていた。


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