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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第二章
136/144

女王は、最後の力を振り絞った

……どれぐらい時が経ったのだろうか。

いつの間にか、医者とゴドフリーが私の周りを慌ただしく走り回っていた。


私は震える体で立ち上がり、宝剣を呼び出そうと、魔力を込める。


……宝剣の存在が、感じられない。


やっぱり、もう限界か。

……けれどもまだ、最期の一仕事が残っている。

ここで、諦める訳にはいかない。

体のの奥底に残る最後の力を振り絞って魔力を無理矢理生成する。


「ルクセリア様! もう、お止め下さい!」


強大な魔力が辺りに漂い始めた頃、トミーとダドリーそれからゴドフリーが身を引いた。

近付けば自身の身も危ないと、本能的に悟ってのことだろう。


近付けない代わりに、トミーが私を制止するよう叫んだ。

私は、軽く首を横に振る。

そのまま続けていると、ついに宝剣が五つ私の前に現れた。


そして更に宝剣の力を引き出そうと、魔力を注ぎ込み続ける。


「……ゔっ」


途中、再び口から血が零れ落ちた。


「一体、そうまでして何を……!」


「……皆の魔力を、永久に封印する」


咳き込みながら、トミーの問いに答える。


「そんなこと……」


「できる。……五つの宝剣が揃ったときの能力は……」


「……『夢』ですよね。『愛、叡智、栄光、誠実、永遠は全て儚く夢幻の如し。王には一時の夢を』……その能力は、現実の否定」


咳で息が詰まった私の代わりに、ゴドフリーが言葉を繋ぐ。


「そう、だ。……流石に、過去を変えることは叶わないが、今この時の状況を変えることはできる」


「おやめ下さい、陛下! ……その宝剣の能力は、王の命と引き換えに発動する筈です」


ゴドフリーの叫びに、トミーとダドリーも顔色を変えて私に近づこうとしてきた。


「……だとしても、止めない。魔力を封印するまで」


「どうして……」


五つの宝剣の光が、徐々に一つへと収束されていく。


「魔法への恐れが、そっくりそのまま全て余に向いている。今が、チャンスだ。……悪役である私と共に魔法が消えれば……全ての悪は余一人のものになる」


「……そうじゃなくて! どうして、ルクセリア様がそこまでする必要があるんですか!」


「……私はもう、信じられないから」


意識が遠のき始めて、つい、素の口調で返していた。 


「は……?」


「私はどうしても信じられないの……人を。……さっきだって……人の悪意は魔力持ちに向けられていた。魔法があるから……ううん、魔法を扱う人が未熟だから、悲劇は生まれ続ける。理不尽な世界が広がり続ける。だから、私は……」


どうせもう、私は保たない。

その証拠に、さっき結界を張ったその時から、目眩と吐気以外……殆ど、感覚がなかった。


けれども……どうせ倒れるなら、理不尽の源を道連れにしたかった。

それは、ささやかな復讐。酷く個人的な感情によるもの。


私は、笑った。


「大丈夫。魔力を封印しても、アスカリード連邦王国を守る結界は、持続する。永遠の宝剣を使ったから」


「お止め下さい! ルクセリア様!」


力を振り絞り、魔法を行使しようとしたところで……この場にいない筈の人物の声が聞こえてきた。


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