そして女王は戦った3
「余は、全ての攻撃を阻む魔法を発動させた。最早、其方の国を含め全ての国はアスカリード連邦王国に侵略できない。まあ……嘘だと思うのであれば、試してみれば良いが」
段々と、呼吸が荒くなる。
……そろそろ、厳しいか。
「最早、この戦は決着がついた。……セルデン共和国の兵どもよ。引け。さもなくば、余の力を以て滅びを見ることとなる」
「……っ化物め!」
下にいるセルデン共和国の兵士から、そんな叫びが聞こえてきた。
「ふふふ……ははは……っ! 化物だと? 己が欲の為に、子どもたちを捕らえる者は人間か? その者らを助けた余が化物と其方は言うのか!」
私の叫びに、兵士が黙る。
「とは言え、認めよう。余の力が、強大であることは。……現に、セルデン共和国軍は、余一人で屠った。たとえ其方たちが今いる魔力持ちを取り込んだところで、余は勝てる。……セルデン共和国の王よ。これ以上の争いは、無意味。即刻軍を引け!」
けれども下にいたセルデン共和国の兵士の内何人かが、私のもとに叫びながら走ってきた。
彼らに向かって、栄光の宝剣を一振りする。
すると、彼らは碧色の斬撃を受けて倒れていった。
一瞬のその出来事に、残されたセルデン共和国の兵士たちの顔色は真っ青に染まっていた。
「さあ……今すぐこの場から、去れ!」
畳み掛けるように叫べば、兵士たちはそのまま逃げるように去って行った。
「……ルクセリア様。良かったのですか?」
戸惑ったように、トミーが問いかけてくる。
「……良かった、とは?」
「あんな言い方……ルクセリア様が更に恐れられるだけじゃないですか。今まで魔力持ちに向かっていた恐れも含めて、全部が全部、ルクセリア様のもとに向かってしまう」
「ああ……そうであろうな。だが、それで良い」
そう言いながら、咳き込む。
……ああ、あと少し。
あと少しで良いから、保って。
そう願うのに目眩は酷くなるばかりで、体は震えている。
「だ、大丈夫ですか!? ルクセリア様!」
ついに力尽きて、その場に倒れ込んでしまった。
……もう、少しなのに。
トミーが走り寄って来て、私を抱え込んだ。
「今すぐに、宮中に……ああ、もう! 叡智の宝剣の加護が、解けている。ダドリー、駐屯地に医者が居るだろうから、連れて来い! それから、ゴドフリーさんもだ」
「う、うん。分かった!」
トミーの指示に従って、ダドリーが走り去って行った。
再び、咳き込む。
……紅の血が辺りに舞うのを見ながら、私は一度意識を飛ばした。