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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第二章
121/144

女王は対峙する

応諾したアーロンとゴドフリーを連れて、私は牢獄を訪れる。

今回捕らえたのは、スレイド侯爵家・ベックフォード侯爵家・ウェストン侯爵家……と、非常に多い。


おかげで、牢獄は満員御礼の状態だ。

今回は、カールの元を訪れた。

好みは、後の楽しみにしておきたくて。


階段を降りるごとに、どんどんと暗さが増す。

鉄格子に囲まれた牢獄の中、カールは静かにその中央に座っていた。


私はそっと鉄格子に近く。


「其方が、カールか」


声をかければ、物凄い勢いでカールが近づいてきた。

鉄格子の先にいる私に、救いを求めるように。


私を、救いの神とでも思っているのだろうか?


……そんな疑問に、思わず笑ってしまった。


「……陛下。此度のこと、誠に申し訳ございません! しかし……私はベックフォード侯爵の無茶な命令を実現するために、スレイド侯爵を頼る他なかったのです」


だから、だったのか。彼はここぞとばかりに捲し立てた。

聞いてもいないことを、ペラペラと。

へえ……カールとスレイド侯爵は、繋がっていたのか。

カールからは証拠が出てこなかったけれども、スレイド侯爵家の押収品の中からその証拠を得ている。


ああ……腹立たしい。


彼が口から出す言葉とは全く異なる心の声が聞こえるから、余計に。


「……のう、ゴドフリー。言葉とは、こんなに軽いものなのだな」


「そうですね。私も驚きです」


遠くに控えていたゴドフリーが、近づいてくる。

瞬間、まるで恐ろしいものにあったかのように、カールが後退りをした。


「……ゴドフリー。これ程までにカールに恐怖を抱かせるとは……其方、一体何をした?」


「別に、何にもしてないですよ?ただ、捕まえただけです」


本当に心当たりがないとでも言うかのように、ゴドフリーは首を傾げている。

明らかに『ゴドフリー』の名前で反応を示したのだ……それだけ、強烈に印象付ける何かがあった筈なのだけど。


私はそっと息を吐いた。


「……このような小者に、ベックフォード侯爵は操られていたのか」


ギリリと、唇を噛み締める。


ああ……腹立たしい。腹立たしい。


仇の一人であるベックフォード侯爵が、こんな男に操られる程度の男だったのだと見せつけられるようで。


「……陛下。少々抑えた方が良いですよ」


ゴドフリーの言葉に、我に返る。


「ああ……すまぬ」


「いえいえ。陛下のご威光を示す素晴らしい魔力ですが……少々、刺激が強過ぎたみたいですね」


彼の視線の先を辿れば、鉄格子の中にいたカールが震えていた。

顔色は真っ青を通り越して土気色になっている。


「……其方の言葉を、どうして余が信じられようか。二度も主人を捨て、自らだけ助かろうとした其方のそれを」


私は視線をゴドフリーに移した。


「ゴドフリー。其方、ちゃんと伝えたのか?余が、この件に関わる者たち全てに対して怒りを感じていることを」


「ええ、勿論」


「それで、これか。……余も舐められたものだな」


再びカールを見下ろしながら、口を開く。


「罪なき領民たちを害したことは、突然許せぬ。……己の罪を噛み締め、残り僅かの時間をここで過ごせ」


そして私は、その牢獄から去った。


「……お戻りになられるのですか?」


道中、それまで口を閉ざしていたアーロンが問いかけてきた。


「うむ。……好みは後にとっておくタイプでな」


私の言葉に、アーロンは首を傾げる。


「侯爵らは、二日後に査問会が開かれる。どうせそこで相見えるから、今は良い。……どうせ奴らも、カール同様、下らぬ陳述しか口にせぬであろう?そんな戯言を二度も聞いてやるほど、余の時間は安くない」


「ああ、そういうことですか」


「……何より、その方が楽しいであろう?皆の前で無様に転がされながら、それでも必死に助けを乞う様を想像したら……ふふふ」


笑いが、止まらない。

……何て、甘美な想像。

アーロンもゴドフリーも、それ以上特に口を挟まない。


おかげで、思った以上に私の笑い声が響いていた。

そうこうしている内に、執務室に到着する。


「二人とも、ご苦労」


上機嫌のまま二人と分かれると、私は机に向かって仕事を始めた。


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