女王は突入する
私は、幾ばくかの隊員たちと共にスレイド侯爵家の屋敷前にいた。
『移動』魔法のおかげで、王宮からスレーイド侯爵家の屋敷まで十秒もかかっていない。
「……突破せよ」
屋敷前の見張りを、隊員が薙ぎ倒す。
突然現れた私たちに対処できる筈もなく、見張りたちは簡単に沈んでいった。
「其方たちは、ここを堅守。手筈通り、他の門を制圧の後見張れ」
一部の隊員たちとはそこで、私たちはそのまま屋敷の中を走る。
本当はスレイド侯爵がいる場所まで魔法で飛べたら良かったのだが……術者が行ったことのない場所には流石に『移動』させることができないということで諦めた。
『宝剣が崇められる理由が、改めて分かりましたよ。……魔法の強化なんて、便利過ぎて反則です』
突然、囁きかけるように耳元で声がする。
その声の主は勿論、別行動をしているトミーだ。
『まあ、否定はせん。……が、幾ら其方の魔法で音が漏れぬとは言っても、今は作戦中。無駄口を叩いている暇はない筈だが?』
『はは、失礼しました。こちらも、順調に進んでいます。もう少しで、収容所に到着しますよ』
『それは重畳。引き続き、頼んだぞ』
丁度会話を切ったところで、屋敷の前に到着した。
隊員たちが躊躇なく、重い扉を開く。
「キャッ!」
「な、なんですか……!? 貴方たちは?」
入口近くにいたスレイド侯爵家の使用人たちは、突然現れた私たちを勿論歓迎してはくれない。
ある者は武装した私たちに恐れ、ある者は困惑し、ある者は排除しようと動き出していた。
『スレイド侯爵家の使用人たちよ。全員意識を保ったまま、そこから動くな』
私の言葉に、その場にいた全員が従う。
「突然の訪問、失礼する。余は、ルクセリア・フォン・アスカリード。其方たちの主人に用がある。さて……『スレイド侯爵家の使用人たちよ。スレイド侯爵が、今、どこにいるか答えよ』」
「執務室にいます」
私の問いかけに、使用人の一人が応えた。
『そうか。ならば、案内せよ。……走れ』
そうして案内役を確保した私たちは、そのまま案内役に着いて走っていく。
奥へ奥へと駆け出す途中に出会す使用人たちは、全て魔法で黙らせた。
そうして辿り着いた執務室の扉を、隊員が乱暴に開く。
中には、スレイド侯爵本人。それから、彼と共に先日私に謁見した側近がいた。