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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第二章
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団長は、追い詰める2

「お前たち! ラッセル様を守れ!」


カールの指示に従う護衛たちが、私を襲いかかる。


「あはっ………はははっ」


迫り来る彼らを前にして、つい、笑ってしまった。


ああ、まずい……我慢しないと。


無理矢理笑みを抑え込むと、その場でしゃがみ込んだ。


そして私の手が地面に触れた瞬間、私と彼らを囲むようにしてあった土壁が消えた。

それを合図に壁の更に後ろに控えていた隊員たちが、それぞれ戦いに参戦した。


その状況を確認した後、更に消した壁の代わりに地面を隆起させる。

そうして出来上がった幾つもの柱を、敵に向かって突進させた。

それらに当たった敵は、見事に倒れていく。


「うるぁぁ!」


柱の猛攻を逃れ辿り着いた敵が、剣を振り上げた。


「ははっ……あははっ」 


目の前に迫るその剣に、笑ってしまった。


ああ、本当にまずい。


持っていた鉄の棒を盾の形に変形させ、その剣を防いだ。

その瞬間、盾から幾つもの刺を生成し敵を貫き倒す。


敵が絶命したことを目視すると、血が滴る棘に触れ、幾つかの円盤に変形させる。

刺で縁取られたそれらを、そのまま無造作に投げた。

見事にそれらはラッセルとカールだけを避け、敵を殺していく。


ああ、まずい、まずい、まずい……。


「あぁ……楽しいぃぃ!」


ついに抑えられなくなった感情が爆発し、天に向かって叫んだ。


ああ、まずい、まずい。

あまり感情を露わにしてはならないと、女王を含め皆から忠告されているというのに。

やっぱり我慢できず、叫んでしまったか。


「おっと……失礼致しました。楽しいひと時を下さったというのに、私ときたら肝心の主賓を蔑ろにするなんて……」


取り繕うように、笑みを浮かべた。


「……ば、化け物……」


ラッセルが、茫然と呟いた。

彼の瞳には、諦めの色が映っている。

……つまらない。


「化け物とは……そのような大層な言葉、私如きには似合いませんよ」


ラッセルの言葉に返答しつつ、既に彼に対する興味を失っていた私は、その更に後ろにいるカールの側まで歩いていた。

カールは、土の壁を前になす術もなく立ち竦んでいる。


「……何故、壁がこんなところまで」


「やはり、逃げようとされていましたね?主君である、ラッセル殿を置いて」


ああ、楽しい。

カールの瞳には、未だ諦めがない。

あがこうとする彼の反応に、つい笑ってしまった。


「何故だ……!護衛と戦った折、壁は消えていた!」


「ええ、そうですよ。隊員たちが戦うのに、少々邪魔でしたから。ですが、ね。完全に壁を無くした訳じゃないんですよ?ホラ」


私の視線に誘導されるように、カールもまた視線を左右にズラす。

そこには、先ほどまでより広い範囲で私たちを囲うように土の壁があった。


「ばか……な。貴方は闘いながら、こんな壁を作り上げたというのか!」


「ええ、そうですよぉ。柱を作る時、ちょちょいとね。……カール殿がバーナード殿のみならず、ラッセル殿まで置いて逃げようとしているのか、試してみたくなりまして」 


「……そんな、それだけのために……。こ、こんな、広範囲に魔法を展開するなんて……化け物が」


「ラッセル殿にも言っていただいたんですがね、私には過ぎたる言葉ですよ。何せ私は、陛下の足元にも及びませんから」


一歩一歩、カールに近づく。


「私はカール殿も凄いと思っているんですよ。ええ、私が足元にも及ばない陛下に、喧嘩を売ったのですから」


そして彼の目と鼻の先についたところで立ち止まり、ニコリと笑った。


「今回の件、陛下はいたくご立腹です。さあ、カール殿。覚悟はよろしいでしょうか?今度こそ、逃げずに受け止めて下さいね」


……そうして、カールとラッセルを捕らえた。


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